- 著者
-
河野 康一
- 出版者
- 日本保険医学会
- 雑誌
- 日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
- 巻号頁・発行日
- vol.110, no.2, pp.163-173, 2012-06-17
2011年3月11日に発生した福島原発事故のがん保険への影響を検討した。急性被曝による健康被害は発生しておらず,将来的に急性外部被曝によるがん発生率上昇の可能性はないと思われた。今回の事故での放射線物質の総放出量はチェルノブイリ原発事故の1割程度と推測され,外部被曝線量や甲状腺超音波検査の結果等と合わせると,慢性被曝や内部被曝によるがん発生率上昇の可能性も,小児甲状腺がんを含めて,きわめて低いと思われた。しかしながら,国民が被曝による甲状腺がん発生率上昇の可能性を認識したことは,がん保険にとっての別の意味でのリスクになると思われる。甲状腺をはじめとしたがん検診の受診率が上昇すれば,相当数の潜伏がんが保険請求される可能性がある。がん保険としては,今回の原発事故をがん発生率が上昇する直接的リスクとして捉えるのではなく,潜伏がん発見率が上昇する間接的リスクとして捉える必要があると思われる。