著者
大村 敬一
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.105-127, 2012-06-30

本稿の目的は、カナダ極北圏の先住民、イヌイトの人びとの間にみられる一連の諸技術を一つの事例に、「自然=人間(社会・文化)」の一元論的視点から人類の技術の営みを世界生成の機械として捉える自然=文化人類学の技術複合システム論を提示し、その可能性を探ることである。そのために、本稿ではまず、イヌイトの生業システムについて検討し、その生業システムによって、「自然」も「人間」もない一元的な世界から、イヌイトやさまざまな野生生物など、さまざまなカテゴリーが絶え間なく産出され、一つの秩序化された生活世界が持続的に生成されてゆくメカニズムを明らかにする。そのうえで、この生業システムがイヌイトのさまざまな技術の営みを組織化する統辞法になっていること、すなわち、この生業システムによって、野生生物を含めた生態環境とのかかわり合いをめぐる技術と知識から、社会関係をめぐる社交の技術にいたるまで、イヌイト社会にみられる一連の諸技術が、一貫した技術複合システムとして安定的かつ柔軟に組織化されている様子を追跡する。そして最後に、このイヌイトの技術複合システムの考察を通して、「自然=人間(社会・文化)」の一元的な存在論から出発し、人類の技術の営みを世界生成のための機械として捉える自然=文化人類学の視座を提示し、その自然=文化人類学の視座が人類の技術の研究に対して拓く可能性について考える。

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