著者
碧海 寿広
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
no.17, pp.17-30, 2011

近代真宗とは何か。その問い直しの作業を行う上で、キリスト教からの流用、というのは有意義な視点である。本論では近角常観(1870-1941)という真宗大谷派僧侶による布教戦略をこの観点から詳細に検討し、近代真宗の研究に新たな知見を提示する。近角は、西洋における宗教事情の視察からの帰国後、キリスト教を範とした宗教改革を推進した。日曜講話、寄宿舎経営、学生信徒の組織などの諸実践を、キリスト教界の後を追うかたちで展開し、明治後期の都市東京において若い世代からの熱烈な支持を獲得した。だが、この近角によるキリスト教由来の清新な布教実践において示された真宗信仰には、前時代からの連続性もまた読み取れる。在来の真宗信仰とどう対話し、これを近代社会に再適応させるには何をすべきか。それが近角の直面した最大の課題であり、こうした見識からは、個人の内面的な信仰とその探求に傾斜し過ぎる従来の近代真宗研究の再考が迫られる。

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碧海寿広「近代真宗とキリスト教-近角常観の布教戦略」『宗教と社会』17、2011年。https://t.co/BUyd4zXSuc。

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