著者
吉岡 泰夫 辛 昭静
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.35-47, 2010-08-31

患者-医療者間コミュニケーションの適切化は,患者・家族と医療者が医療情報を共有し,合意を形成して最善の医療を選択する患者参加型の意思決定を行うことや,ラポールに基づく信頼関係,闘病の同志と言える協力関係を築くための前提条件である.この研究は,医師の診療のジョブレビュー,および,患者と医師の双方を対象にした各種調査の分析結果に基づいて,患者-医療者間コミュニケーションの適切化に貢献する医療ポライトネス・ストラテジーを抽出し,医療現場および医学教育に提供することを目的とする.先ず, Brown & Levinsonがあげている15のpositive politeness strategyおよび10のnegative politeness strategyを医療コミュニケーション適切化の工夫にどう応用できるか, 7人の指導医のこれまでの診療経験に基づいて検討した.指導医の外来診療のジョブレビューおよび参与観察で収録した患者-医師間の相互作用を語用論の方法で分析した.社会言語学調査の分析結果も加えて,医療コミュニケーションの適切化に効果的な親近方略(positive politeness strategy)16と不可侵方略(negative politeness strategy) 7を抽出した.

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