- 著者
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外山 紀子
長谷川 真里
- 出版者
- 法と心理学会
- 雑誌
- 法と心理 (ISSN:13468669)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, no.1, pp.131-143, 2011-03
本研究では、質問紙調査を実施することにより、様々な人権や公共の福祉が葛藤する場面における大学生(n=246)の判断と推論を検討した。調査対象者の中には法学専攻の学生は含まれていない。様々な人権の葛藤を含む4つのストーリーを提示した。道徳的判断を求める質問紙(n=141)では「どうすべきか」という判断を求め、法的判断を求める質問紙(n=105)では「もしあなたが裁判員だったとしたら、どのように考えますか?裁判員としてどうすべきかを判断してください。」と質問した。大学生の判断は、性別、現在の専攻、高校時代の社会科選択科目、法律用語に関する知識量、人権について深く考えさせられた経験の有無によって大きく異ならなかった。また、道徳的判断と法的判断との間にも明らかな相違がなかった。さらに、「適正手続きの無視」、「人柄への過度の注目」、「一方の利益のみを考慮」、「可能性の決めつけ」といったヒューリスティックスがかなりの大学生に認められた。