著者
長谷川 真里
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.304-315, 2003

本研究の目的は,なぜ年少者は言論の自出をあまり支持しないのかということを検討することであった。研究1において,小学4年生,6年生,中学2年生,高校2年生,大学生(合計176人)は,言論の自由に対する法による制限の正当性を判断した。加齢と共に,推論の様式は,言論内容のみに注目するものから,言論内容と自由を比較考量する様式へ,あるいは聞き手の自由に注目する様式へと変化し,そのような推論の様式の差が自由を支持する程度と関係した。研究2(小学4年生,6年生,中学2年生,高校生,合計127人)では,加齢に伴い,言論の白山を社会的価値としてとらえ,聴衆への影響を低く見積もり,スピーチの中の行為をそれほど悪くないど考える傾向が示された。そして,このような評価が,自出を支持する程度に関係することが示唆された。そして,スピーチ内容の領域によって,それらは異なって関係していた。
著者
長谷川 真里
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.91-101, 2001
被引用文献数
1

児童と青年の「言論の自由」の概念を探るために, 研究1では, 小4生, 小6生, 中2生, 大学生を対象に, 抽象的理解とスピーチ大会場面における制限判断, および両者の関連について調べた。抽象的には小4生でも大部分の者が,「言論の自由」を大切であると考え, 特徴を理解していた。制限判断では, 従来検討されていなかった判断材料として, 自由と抵触する問題の領域と, 受け手 (聴衆の属性) を用意し, 先行研究において整理されていなかった2種類の判断 (「行為の制限」と「法による制限」) について検討した。その結果, 領域を考慮して制限判断がされ, スピーチ内容が道徳以外の領域に属するとき, 小学生から中学生にかけて自由を支持する程度に差が生じた。聴衆の属性は考慮されなかった。また, 小4生, 小6生, 中2生は, 2種類の制限判断を区別して判断しなかった。そして, 学年,「言論の自由」の意義づけの質, および自由を制限する法があっても話してよいかどうかについての判断の差が, 制限判断に関係した。研究2では, 小学生から中学生にかけて, 制限判断において学年差が生じることを確認した。これらの結果を基に,「言論の自由」の概念の発達を支える要因について議論した。
著者
長谷川 真里 堀内 由樹子 鈴木 佳苗 佐渡 真紀子 坂元 章
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.307-310, 2009-05-01 (Released:2009-07-04)
参考文献数
11
被引用文献数
3 6

A multidimensional scale for measuring empathy in elementary school children was developed and its reliability and validity investigated. Results indicated adequate internal consistency and temporal stability of the scale, suggesting it had good reliability. Correlations with Prosocial Behavior and Social Desirability Scales indicated sufficient validity of the scale. In addition, results of confirmatory factor analysis supported the Davis finding (1983) that empathy had four components. Development of empathy in elementary school children, as well as problems such as children's acquiescence set were also discussed.
著者
長谷川 真里
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.13-23, 2014 (Released:2014-07-16)
参考文献数
21
被引用文献数
7 1

本研究の目的は, いわゆる「仲間はずれ」とよばれる, 異質な他者を集団から排除することについての判断の発達を検討することであった。研究1では, 小学生, 中学生, 大学生を対象に, 私的集団(遊び仲間集団)と公的集団(班)のそれぞれにおいて, 社会的領域理論の3領域(道徳, 慣習, 個人)に対応した行動の特徴を持つ他者に対する排除判断(集団から排除することを認めるか), その理由, 変容判断(その他者の特徴は変わるべきか)を求めた。その結果, 年齢とともに, 排除自体の不公平性に注目し排除される他者の特徴を区別しない判断から, 集団機能に注目し他者の特徴を細かく区別する判断へ変化した。小学生は2つの集団を区別して判断する一方で, 他者は変わるべきであると考える傾向が見られた。研究2では, 小学生と中学生を対象に, 友人への志向性の差と排除判断の関係を検討した。閉鎖的, 固定的な集団への志向性および友人への同調欲求が高いと, 集団排除を認めることが示唆された。最後に, 本研究の限界と今後の課題が議論された。
著者
長谷川 真里
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.304-315, 2003-12-05 (Released:2017-07-24)

本研究の目的は,なぜ年少者は言論の自出をあまり支持しないのかということを検討することであった。研究1において,小学4年生,6年生,中学2年生,高校2年生,大学生(合計176人)は,言論の自由に対する法による制限の正当性を判断した。加齢と共に,推論の様式は,言論内容のみに注目するものから,言論内容と自由を比較考量する様式へ,あるいは聞き手の自由に注目する様式へと変化し,そのような推論の様式の差が自由を支持する程度と関係した。研究2(小学4年生,6年生,中学2年生,高校生,合計127人)では,加齢に伴い,言論の白山を社会的価値としてとらえ,聴衆への影響を低く見積もり,スピーチの中の行為をそれほど悪くないど考える傾向が示された。そして,このような評価が,自出を支持する程度に関係することが示唆された。そして,スピーチ内容の領域によって,それらは異なって関係していた。
著者
長谷川 真里
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.345-355, 2014 (Released:2016-12-20)
参考文献数
16

本研究は,信念の多様性についての子どもの理解を探るために,相対主義の理解,異論への寛容性,心の理論の3つの関連を調べた。研究1では,幼児,小1生,小2生,小3生,合計253名が実験に参加した。実験では,まず,「道徳」,「事実」,「曖昧な事実」,「好み」の4領域の意見について本人の考えを確認した。その後,本人の考えと同じ子ども(A),逆の考えの子ども(B)の2種を提示し,「どちらの考えが正しいか,両方の考えが正しいか(相対主義の理解)」,「A,Bそれぞれが実験参加児に遊ぼうと言ったらどう思うか(寛容性)」を尋ねた。幼児については誤信念課題もあわせて実施した。その結果,幼児においても課題によっては相対主義の理解がみられた。また,どの年齢群も,領域を考慮して判断していたが,寛容性判断において年齢とともに道徳領域が分化していった。「好み」に対する相対主義の理解がみられなかったのは,課題として提示されたアイスクリームのおいしさが,子どもにとって絶対的なものなのかもしれない。そこで,研究2では,子どもにとってあまり魅力的ではない食べ物(野菜)を材料にした補足実験を行った。その結果,「野菜」課題において相対主義理解の割合が増加した。また,心の理論と相対主義の理解に関係がみられた。最後に,本研究の結果をもとに,文化差について議論した。
著者
外山 紀子 長谷川 真里
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.131-143, 2011-03

本研究では、質問紙調査を実施することにより、様々な人権や公共の福祉が葛藤する場面における大学生(n=246)の判断と推論を検討した。調査対象者の中には法学専攻の学生は含まれていない。様々な人権の葛藤を含む4つのストーリーを提示した。道徳的判断を求める質問紙(n=141)では「どうすべきか」という判断を求め、法的判断を求める質問紙(n=105)では「もしあなたが裁判員だったとしたら、どのように考えますか?裁判員としてどうすべきかを判断してください。」と質問した。大学生の判断は、性別、現在の専攻、高校時代の社会科選択科目、法律用語に関する知識量、人権について深く考えさせられた経験の有無によって大きく異ならなかった。また、道徳的判断と法的判断との間にも明らかな相違がなかった。さらに、「適正手続きの無視」、「人柄への過度の注目」、「一方の利益のみを考慮」、「可能性の決めつけ」といったヒューリスティックスがかなりの大学生に認められた。
著者
長谷川 真里
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.1-15, 2022-03-30 (Released:2022-11-11)
参考文献数
54

本稿では,2020年7月から2021年6月までの1年間に発表された,日本における乳幼児期と児童期を対象とした研究の概観を行なった。対象は,2020年7月から2021年6月までに『教育心理学研究』,『発達心理学研究』,『心理学研究』,Japanese Psychological Researchに掲載された研究論文と,2021年に開催された日本教育心理学会第63回総会の「発達部門」のポスター発表である。第63回総会の全体的な特徴を分析した後,子どもの発達の社会的文脈に着目し,(a)対人関係の文脈に関する研究,(b)家族の文脈に関する研究,(c)学級・学校の文脈に関する研究,(d)複合的な文脈に関する研究の4つのトピックから,学会誌論文の概観を行なった。その結果を踏まえ,研究方法,参加者のタイプ,理論の重要性などの観点から今後の方向性を議論した。
著者
長谷川 真里
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.13-23, 2014
被引用文献数
1

本研究の目的は, いわゆる「仲間はずれ」とよばれる, 異質な他者を集団から排除することについての判断の発達を検討することであった。研究1では, 小学生, 中学生, 大学生を対象に, 私的集団(遊び仲間集団)と公的集団(班)のそれぞれにおいて, 社会的領域理論の3領域(道徳, 慣習, 個人)に対応した行動の特徴を持つ他者に対する排除判断(集団から排除することを認めるか), その理由, 変容判断(その他者の特徴は変わるべきか)を求めた。その結果, 年齢とともに, 排除自体の不公平性に注目し排除される他者の特徴を区別しない判断から, 集団機能に注目し他者の特徴を細かく区別する判断へ変化した。小学生は2つの集団を区別して判断する一方で, 他者は変わるべきであると考える傾向が見られた。研究2では, 小学生と中学生を対象に, 友人への志向性の差と排除判断の関係を検討した。閉鎖的, 固定的な集団への志向性および友人への同調欲求が高いと, 集団排除を認めることが示唆された。最後に, 本研究の限界と今後の課題が議論された。
著者
長谷川 真里
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、幼児、児童、青年における道徳感情帰属を検討した。(1)幼児にHappy Victimizer反応がみられたが、被害者情報の強調などの場面操作により減少した。(2)入り混じった感情理解はHV反応の調整要因となる可能性が示唆された。(3)仲間関係のジレンマ場面では青年期になってもHV反応が見られた。(4)類似の欧米の研究と異なり、日本の青年はHappy Moralist反応が少なく、比較文化研究の必要性が示唆された。(5)道徳感情帰属と行動の関連性について弱い証拠が得られた。幼児でも、道徳的意思決定に道徳感情を利用することが示唆された。またそれは感情の種類によって発達の様相が異なった。
著者
長谷川 真里
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.345-355, 2014

本研究は,信念の多様性についての子どもの理解を探るために,相対主義の理解,異論への寛容性,心の理論の3つの関連を調べた。研究1では,幼児,小1生,小2生,小3生,合計253名が実験に参加した。実験では,まず,「道徳」,「事実」,「曖昧な事実」,「好み」の4領域の意見について本人の考えを確認した。その後,本人の考えと同じ子ども(A),逆の考えの子ども(B)の2種を提示し,「どちらの考えが正しいか,両方の考えが正しいか(相対主義の理解)」,「A,Bそれぞれが実験参加児に遊ぼうと言ったらどう思うか(寛容性)」を尋ねた。幼児については誤信念課題もあわせて実施した。その結果,幼児においても課題によっては相対主義の理解がみられた。また,どの年齢群も,領域を考慮して判断していたが,寛容性判断において年齢とともに道徳領域が分化していった。「好み」に対する相対主義の理解がみられなかったのは,課題として提示されたアイスクリームのおいしさが,子どもにとって絶対的なものなのかもしれない。そこで,研究2では,子どもにとってあまり魅力的ではない食べ物(野菜)を材料にした補足実験を行った。その結果,「野菜」課題において相対主義理解の割合が増加した。また,心の理論と相対主義の理解に関係がみられた。最後に,本研究の結果をもとに,文化差について議論した。
著者
長谷川 真里 堀内 由樹子 佐渡 真紀子 鈴木 佳苗 坂元 章
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.105-108, 2006

本稿は,日本のテレビ番組の内容分析によって現在のメディア状況を明らかにし,メディア・リテラシー教育に必要な情報を得ることを目的としている.米国のNational Television Violence Study(1996-1998)をもとにコード化マニュアルとコード票を作成し,2003年と2004年の2時点,各1週間の中からフィクション番組を抽出し,向社会的行為にかかわるキャラクターの特徴について内容分析を行った.その結果,向社会的行為実行者はあまり魅力的なキャラクターとして描写されておらず,観察学習の促進要因は乏しかった.また,おおむね女性よりも男性の描写数が多く,現実との乖離も示唆された.最後に,悪人キャラクター,善悪複合キャラクターに対する報酬はほとんどなかった.