- 著者
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五十嵐 中
福田 敬
後藤 励
- 出版者
- 国立保健医療科学院
- 雑誌
- 保健医療科学 (ISSN:13476459)
- 巻号頁・発行日
- vol.64, pp.426-432, 2015-10
FCTC第 6 条は,税収の確保ではなく公衆衛生の観点からの喫煙率低下を目指し,たばこ税の値上げを提言している.もっとも,2010年のような大幅値上げの可能性を評価するには,税収と喫煙率双方への影響評価が必要である.コンジョイント分析や価格弾力性を用いた研究では,大幅値上げを実施しても一箱あたりの税収増効果が総需要の減少効果を上回り,総税収は増加することが示唆されている.実際過去の値上げ前後の税収変動を見ると,値上げ後の方が税収は増加している.喫煙率低下を達成するには,たばこ税値上げ以外の禁煙政策を同時に実施することも効果的で,とくに公共空間での喫煙への罰金が有効であることが,コンジョイント分析によって示されている.禁煙治療や禁煙支援のように,総費用が減少してかつ健康アウトカムが改善する "dominant(優位)" 介入は,予防介入に限定しても極めてまれである.今回示したような定量的データは,合理的な政策決定にとっても有用である.