- 著者
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朴 紅
青柳 斉
李 英花
郭 翔宇
張 錦女
- 出版者
- 北海道大学農学部農業経済学教室
- 雑誌
- 農経論叢 (ISSN:03855961)
- 巻号頁・発行日
- vol.65, pp.101-115, 2010
- 被引用文献数
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中国東北地方は、近年アジアにおける有数のジャポニカ米の産地として急速な成長を示し、注目されてきた。しかし、米生産量の拡大は物流体制の未整備もあり、2003年を頂点に深刻な過剰をもたらした。その結果、東北地方内部においても激しい産地間競争が行われ、米のブランド化をめぐって品種改良や栽培技術の向上、マーケティングなどに力が入れられるようになっている。本論では、古くから良質米産地として著名である黒竜江省五常市を対象として、現段階における高級ブランド米産地の形成要因を明らかにする。まず、五常市の稲作生産と産地形成の特徴を述べた上で、第1には産地の新たな市場対応とブランド形成について分析を行う。産地の担い手が糧食局から分化・独立した精米加工企業から近年設立された農民専業合作社へと急速にシフトしていることが示される。第2には産地基盤としての農業構造の特徴を明らかにする。まず、朝鮮族の割合が高く、韓国などへの海外出稼ぎなどにより農地の賃貸借が増加し、大規模経営が形成されている点、つぎに、品種改良による優良品種の普及と臨時雇用型の有機栽培経営が行われている点が明らかにされる。