- 著者
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松崎 行代
- 出版者
- 京都女子大学
- 雑誌
- 現代社会研究科論集 (ISSN:18820921)
- 巻号頁・発行日
- no.5, pp.63-76, 2011-03
この研究ノートは、市民の文化活動による地域コミュニティの形成と機能の活性化について検討していくにあたり、「いいだ人形劇フェスタ(以下、フェスタと略記)」を事例として取り上げ、この市民文化活動が32年間続く飯田市の文化的土壌を把握し、市民による文化活動成立の文化的要因を検証することを目的としている。飯田市を中心とした伊那谷南部には、かつて他所から伝播されたさまざまな芸能が住民によって享受、伝承された。この地には現在も、数百年の歴史を持つ民俗芸能が数多く、人形芝居(人形浄瑠璃)4座、うち2座は飯田市内に、また、この地にしかない屋台獅子が30余、うち約20が飯田市内に継承されている。また、歌舞伎(地芝居)は大鹿村の大鹿歌舞伎、下条村の下条歌舞伎が現在継承されている。飯田市内には現在継承されてはいないが、学校の校舎を舞台と兼用できるようにした座光寺地区の旧座光寺小学校の"舞台校舎"をはじめ、舞台の遺構は伊那谷全体に150余確認されており、かつての隆盛の様子がうかがえる。こうした住民の芸能活動への盛んな取組みにみられる文化的土壌は、フェスタのような市民文化活動成立の大きな要因になつていると考えられる。 本稿では、人形芝居、歌舞伎(地芝居)、獅子舞の3つの伝統芸能を取上げ、それらの誕生と衰退、また、そこにかかわった人々の様子から、飯田市の市民文化活動であるフェスタ成立の文化的要因を検証した。