著者
大野 圭介
出版者
富山大学人文学部
雑誌
富山大学人文学部紀要 (ISSN:03865975)
巻号頁・発行日
no.65, pp.348-329, 2016

中国古代の詩文に叙景表現が乏しいことは夙に指摘されている。しかし山水の描写が皆無というわけではない。『詩経』における山水観については既に王国瓔『中国山水詩研究』が、『詩経』に描かれる山水とその表現法を多方面から分析し、「『詩経』の時代は山水詩の成熟した時期からまだまだ遠いとはいえ、『詩経』に反映している山水観、及び詩人の山水の景物に対する描き方から、後世の山水詩との間にその淵源としての関係をある程度見出すことはできるかも知れない。」と言う。小尾郊一『中国文学における自然と自然観』でも『詩経』に描かれた山水自然の描写を分析し、おおむね比興的な用い方をされていて、山水そのものをめでる意識はないと結論づける。最近でも孫旭輝「自然審美經驗視閾下的山水内質分析」は『詩経』の山や河川の描写を詳細に分析し、それらを原始的自然神崇拝に表れたもの、比興の運用の中に表れて情感表現の背景となっているもの、自然審美意識の発生を内包するものの三種に分類している。これらはいずれも山水に対する美意識の観点からの分析である。山水以外の情景描写にも範囲を広げてみると、大雅の開国叙事詩の中には神話故事の情景を事細かに描くものがいくつか見られる。山水の描写とはまた別の観点からの分析も可能であろう。本論では大雅開国叙事詩の情景描写の分析を通して、その変化の過程、及び作詩の目的の違いについて考察する。

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