- 著者
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勝山 清次
- 出版者
- 史学研究会 (京都大学文学部内)
- 雑誌
- 史林 (ISSN:03869369)
- 巻号頁・発行日
- vol.70, no.2, pp.p169-211, 1987-03
本稿では、これまで「国司苛政上訴闘争」に対する朝廷の政策的対応の観点から把握されてきた公田官物率法の成立について、その前提の究明を試み、十一世紀前半には、それまで臨時雑役に包摂されていた諸賦課が順次田率賦課に移行し、官物体系改変の条件が整うとともに、諸国においては自然・地理的条件に規定されて、産業構造の地域的特化が進み、独自の官物率法が制定される前提が形成されていたことを明らかにした。また公田官物率法成立にともなう官物体系改変の歴史的意義についても、これまでの諸見解を踏えて、(1)受領による官物の賦課率の恣意的な変動を制約したこと、(2)官物が一個の独立した税目となり、中世的な年貢制を準備したこと、(3)中央への主要な貢納物が一律的に官物によって賄われる体制が成立したことなどに集約できるとした。