- 著者
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岡本 託
- 出版者
- 史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
- 雑誌
- 史林 (ISSN:03869369)
- 巻号頁・発行日
- vol.98, no.3, pp.467-500, 2015-05
本稿では、近代フランス公務員制度の枠組みが確立されようとしていた一九世紀後半、上級行政官養成において先駆的役割を果たした、コンセイユ・デタ傍聴官の養成について分析をおこなった。そこでは、第二帝政期から第三共和政期という性質の異なる二つの政体を跨いで、登用、出自、経歴形態において、受容と変容という要素を含みながら傍聴官職の性質が変化していったことを明らかにした。そして、一九世紀後半の傍聴官制度が、中央集権的行政制度を人的側面から支えることを可能とし、また、他の行政機関における行政官登用制度に対しても影響を与え、若手官僚職の門戸開放を推し進める要因となった。このように、一九世紀後半の傍聴官制度は、国家政策と官僚制度の双方においてインパクトを与えるものであった。