著者
鈴木 英明 鈴木 英明
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.591-623, 2020

海域史研究の現状を踏まえると,その課題とはいかに陸域対海域という二項対立的な理解を乗り越え,新たな分節化を回避した具体的な海域世界像を提示できるのかという点にある。これを踏まえて,本稿では,19 世紀を対象にインド洋西海域世界を季節性に着目して設定することを試みた。とりわけ人を含む事物の移動に着目すると,港町における交易の季節を見出すことができる。この交易の季節の発生メカニズムを検討すると,長距離航海の事情だけによって定まっていたのではなく,農耕,採集,牧畜といった陸上,海上での生業と陸上移動,長距離交易といった様々な活動の季節性が噛み合うことで生じた現象であることが明白となる。これこそが,本稿でいうインド洋西海域世界なのである。一般的にはインド洋海域世界が崩壊したとされる19 世紀においてもこうした現象は確認でき,また,ザンジバル島における北米商人の活動から検討したように,彼らの行動もまた,こうした季節性の連動のなかの一要素として存在していたのである。

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CiNii 論文 -  海域世界の鼓動に耳を澄ます : 19世紀インド洋西海域世界の季節性 https://t.co/6NAqlkAHlq #CiNii

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