著者
郡 千寿子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Education, Hirosaki University (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.123, pp.1-8, 2020-03

石川県立図書館の川口文庫に所蔵されている近世期版本の往来物資料について、書誌的な調査結果を含め、紹介する。石川県立図書館には、〈森田文庫〉〈饒石(にぎし)文庫〉〈李花亭文庫〉〈川口文庫〉といった特殊文庫があり、所蔵往来物資料の調査結果については、すでに公表1)している。本稿では、〈川口文庫〉所蔵の23本に焦点をあてて、画像を含め報告する。目的別に分類すると、教訓科往来0本、社会科往来2本、語彙科往来1本、消息科往来16本、地理科往来1本、歴史科往来3本、産業科往来、理数科往来、女子用往来は0本という結果であり、消息科往来の割合が大きかった。出版地域別では、京都が8本、江戸が7本、大坂が1本、不明が7本という結果であり、京都大坂を合わせた関西圏での出版が、江戸より若干上回るという傾向がみられた。 特殊文庫においては、本稿で紹介する〈川口文庫〉を含めて、総計34本の近世期版本往来物資料が確認できた。北陸地域という枠組みでみれば、新潟県立図書館所蔵の往来物資料は、江戸文化圏からの流入が多いという傾向がみられたが、石川県立図書館では、関西圏と江戸での差異がそれほど顕著でないことが明らかとなった。 往来物の分布を通して、地域の教育的背景の格差や文化伝播状況などを解明することを目的としているが、本稿は、他地域の状況と比較する上での基盤となる調査の一報であるといえよう。

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郡 千寿子 - 『京の水』の資料性について : 江戸時代後期の漢字表記と振り仮名 https://t.co/PicvF0akSc
https://t.co/aLW82rqgLm 郡千寿子(2020)「石川県立図書館"川口文庫"所蔵の往来物資料」 漠然とした適当なイメージより江戸多いなあとも思うし、近世京都の存在感はやはり相当なものがあったかとも思う。

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