- 著者
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吉川 肇子
- 出版者
- The Japanese Group Dynamics Association
- 雑誌
- 実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.1, pp.45-54, 1989
- 被引用文献数
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ポジティヴな評価の印象 (好印象) よりも, ネガティヴな評価の印象 (悪印象) の方が, 持続しやすく, 覆しにくいことを明らかにした。あわせて, 帰属の違いを変数として導入し, 印象変化との関連を検討した。被験者は95名の男女大学生であり, 刺激人物の行動を記述した文章を与えて, はじめの印象を形成させた。10分間のディストラクション課題をはさんで, はじめの印象と反対の情報を与え, 印象の変化を分析した。さらに1週間後, 印象評定のみを行い, 印象の持続を調べた。帰属の違いは, はじめに与える刺激文中で操作した。<BR>仮説は次の通りである: 1) 悪印象は好印象よりも覆しにくい。2) 悪印象は好印象よりも持続しやすい。3) 悪印象であれ, 好印象であれ, 状況帰属されるよりも傾性帰属される方が, 印象は残りやすい。<BR>実験の結果, 仮説1), 2) ともに支持された。帰属の操作は有効でなかったために, 仮説3) は検証できなかった。さらに, 活動性の次元の印象の変化の分析から, 印象の残りやすさには, 何を最頻的と考えるかということが決め手となるという, 各次元共通のメカニズムが働いていることが示唆された。