著者
近藤 博之
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF EDUCATIONAL SOCIOLOGY
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.101-121, 2012
被引用文献数
1

学力に階層差のあることは広く知られているが,マクロな社会の変化とともにそれがどう変容していくかについては,必ずしも明確な展望が描けていない。本稿では,OECD の PISA 調査データ(2009)に多次元階層分析を適用し,国際比較の観点からこの問題に取り組んでいる。まず,生徒の家庭背景について,多重対応分析からブルデュー流の社会空間を構築し,経済発展により階層の多次元化が進むかどうかを検討した。つぎに,社会空間における個人座標を階層変数として利用し,それが PISA テスト得点をどの程度説明するかを吟味した。その結果,〈資本総量〉に対応する第1軸得点が生徒の成績差をよく説明すること,それに〈資本構成〉の違いを反映した第2軸得点を追加すると説明力がさらに高まることが明らかとなった。つぎに,各国におけるそれらの説明力の差異をマクロ水準の回帰分析によって検討した。その結果,第1軸得点の場合は,経済水準の上昇が階層差を縮小する効果をもつものの,平均学校余命が逆に階層差を拡大させる効果をもつことから全体の傾向が曖昧になること,第2軸得点の場合は,教育制度の特徴によらず経済水準の上昇とともに文化的資源の影響力が単調に強くなっていくことが確認された。結局,マクロな社会の変化とともに学力差に対する要因構造の転換が進み,教育達成の階層差は単純には縮小していかないとの結論が導かれた。

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