著者
吉川 虎雄 太田 陽子 米倉 伸之 岡田 篤正 磯 望
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.238-262, 1980
被引用文献数
44

ケルマデック諸島南端部に近いニュージーランド北島プレンティ湾南東岸地域の海成段丘は,上位からマタカオア・オタマロア・テパパ・テアラロアの4段丘に分類される.これらの各段丘は,いずれも海進を示す地形と堆積物とを伴い, 4回の高海面期の存在を示す.段丘をおおうテフラの細分とそれらのフィッション=トラック年代,段丘堆積物の14C年代から,段丘の形成期は,上位のものからそれぞれ約22~23万年前,約12~13万年前,約8~10万年前,約4,000~5,000年前と推定される.<br> 各段丘面の高度分布から,この地域では, (1) 南東から北西への傾動と, (2) 北縁部における北への著しい擁曲とが認められる. (1) は,明瞭な二つのヒンジによって, (1a) 南東部の急な傾動, (1b) 中央部のゆるやかな傾動,および (1c) 北西部の沈降とに分かれる. (1b), (1c) および (2) は,この地域の山地の成長を示すが, (1a)は山地地形とは調和しない.段丘面は古いものほど同じ様式でより著しく変位しているので,第四紀後期には各地域ごとに同じ様式の地殻変動が継続したことを示す. (1a)の隆起や傾動の規模および速さは,ニュージーランドでは最大級の値であり,環太平洋地域の他の島弧一海溝系におけるそれらに匹敵する.このことと,この地域の海溝に対する位置関係から, (1a)はケルマデック海溝内縁に発生する大地震に伴う地殻変動によるものと考えられる.

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