著者
伊藤 一也 増田 圭太 蒲田 和芳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P3419, 2009

【目的】ATM2(BackProject社)は機械的腰痛において、疼痛軽減の即時効果が得られる運動療法機器としてアメリカで普及している.ATM2の有効性については、腰痛患者の疼痛軽減効果(Lewis 2006)、腰痛患者の腰部筋活動の低下(backproject.com)、脊椎屈曲可動域の改善(増田 2008)などが報告されてきた.しかし、その効果発現機序については未知の点が多い.本研究では、ATM2のベルトによる固定下での等尺性筋力発揮が、骨盤アライメント対称化および下位胸郭横径拡張可動性に及ぼす効果を解明することを目的とした.研究仮説は、(1)ATM2は即時的に骨盤のアライメントを改善させる、(2)ATM2は即時的に下位胸郭横径拡張可動域を増加させる、であった.<BR><BR>【方法】対象者の取込基準は健常者、18-34 歳の男女で、下肢自動伸展挙上(ASLR)にて主観的に左右差を有する者であり、除外基準は医学的問題として下肢に外傷の既往歴を有する者、運動制限、内科的リスク、精神障害、コミュニケーション障害のある者、とした.ヘルシンキ宣言の精神に基づき作成された同意書に署名した9名の被検者が研究に参加した.<BR>介入としてATM2を用いた体幹後屈運動(10秒間の最大等尺性筋力発揮を10回反復)を実施した.観察因子は下位胸郭横径拡張可動性(ノギスにより測定)と骨盤アライメントの対称性(他動骨盤ローリングによる骨盤傾斜角の左右差)であり、その測定は介入直前と介入直後に実施した.統計学的検定には対応のあるt 検定を用い、有意水準をp<0.05とした.<BR><BR>【結果】介入前後の下位胸郭横径拡張可動域の変化量は、安静立位にて0.9±2.1cm(p=0.259)と有意差を認めなかったが、最大吸気時で2.1±1.4cm(p=0.004)、最大後屈位で2.7±3.4cm(p=0.02)と有意な増加が見られた.骨盤アライメントに関しては、介入前に2度以上の傾斜角の左右差を認めた7名に関して、介入前3.9±1.8°、介入後1.6±0.8°と有意な対称化を認めた(p=0.015)<BR><BR>【考察】ATM2による体幹後屈運動は、即自的に下位胸郭横径拡張可動域改善および骨盤アライメント対称化を導くことが示唆された.これはATM2のベルトによる骨盤・胸郭の圧迫および等尺性筋力発揮が、骨盤の対称化と下位胸郭の横径拡張を促す力学環境を作り出したためと推測される.本研究の問題点として、統計学的パワーの不足、コントロール群がないことが挙げられる.しかしながら、胸郭可動性および骨盤リアライメントの変化量が本研究によって得られ、今後の同様の研究におけるパワー分析に用いることができる.今後は腰痛の臨床効果および胸郭・骨盤のリアライメント効果について、十分な統計学的パワーを得た盲検化無作為化対照研究を行なう必要がある.

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