著者
増田 圭太 谷増 優 今村 亮太 浦田 侑加 蒲田 和芳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.H4P2351, 2010

【目的】<BR>腰痛症は、人類の80%が生涯に1度は経験するとされ、我々が最も身近にする症状のひとつである。腰痛症全体に占める割合が多い非特異的慢性腰痛に対して、効果的かつ再現性の高い治療方法の確立が望まれている。慢性腰痛症の原因の一つとして骨盤の非対称的なアライメントが指摘されてきた(Subotnick1985、DonTigny1990)が、現在まで十分なコンセンサスは得られていない。<BR>骨盤リアライメントを目的としたエクササイズプログラムとして、ストレッチポール(LPN社)を用いた骨盤コンディショニングプログラム(PelCon)(平沼2008)がある。これまでストレッチポールの効果として、脊椎のリアライメント効果(杉野2006)、胸郭拡張機能改善(秋山2007)、肩関節の柔軟性(森内2007)、胸郭スティッフネス低下(伊藤2007)などの報告がある。一方、骨盤帯への効果に関して下肢発揮筋力の左右差減少(増田2008)の報告があるが、骨盤リアライメント効果について、定量的評価はなされていない。<BR>本研究の目的は、PelConが骨盤アライメントに及ぼす効果を検証することであった。研究仮説は、「PelConは骨盤非対称アライメントを対称化させる」とした。<BR>【方法】<BR>取込基準は、健常な成人男女20-65歳であり、除外基準は、急性腰痛、手術歴、内科的リスク、脳障害、精神障害、コミュニケーション障害がある者とした。同意書に署名した105名(男性103名、女性2名)を対象者とした。<BR>本研究は無比較介入研究であり、介入は骨盤アライメント対称化を目的とするPelConとした。観察因子である骨盤の圧分布の計測には、Win-Pod足底圧分布測定装置(フィンガルリンク社)を用いた。計測は、介入直前と介入直後に実施した。約10分間の介入終了後、アウトカム測定までは安静状態を保ち、全員が介入後30分以内に計測を終了した。<BR>測定肢位は、(1)股関節45度屈曲・膝関節90度屈曲の背臥位において測定者が両膝を左右方向へ操作して行う骨盤ローリング運動、(2)膝屈曲位の長座(体育座り)にて測定者誘導のもとで行う骨盤前後傾運動、の2種類とした。各運動を5回連続して行う間、骨盤圧分布を継続測定した。(2)において仙骨遠位部が特定可能であった74名を対象に、両坐骨および仙骨のピーク圧から描かれる三角形に基づき、両坐骨中心に対する仙骨位置の偏位割合を介入前後で比較した。測定結果は、圧力解析プログラム(フィンガルリンク社)により解析し、左右の骨盤圧分布から、左右の寛骨のピーク圧を介入前後で比較した。<BR>統計学的検定には対応のあるt検定を用い、有意水準はP<0.05とした。<BR>【説明と同意】<BR>研究の内容について事前説明を行ない、ヘルシンキ宣言の精神に基づき作成された同意書に署名した者を対象者とした。<BR>【結果】<BR>対象者全員が非対称的な圧分布を示していた。寛骨の最大圧の左右差は、(1)骨盤ローリング運動については介入前84.9 ± 63.0 g/cm<SUP>2</SUP>、介入後57.8 ± 50.0 g/cm<SUP>2</SUP>であり、介入前後で有意な減少が認められた(P<0.001)、(2)骨盤前後傾運動については、介入前57.4 ± 58.8 g/cm<SUP>2</SUP>、介入後52.6 ± 44.4 g/cm<SUP>2</SUP>で、有意差は認められなかった(P=0.41)。また、(2)において両坐骨中心に対する仙骨位置の偏位割合は介入前10.3 ± 13.1 %、介入後9.5 ± 15.1 %であり、有意差は認められなかった(P=0.61)。<BR>【考察】<BR>本研究の結果、骨盤コンディショニングプログラム(PelCon)は骨盤後面のピーク圧の左右差を減少させた。このことは、骨盤アライメントの対称化を示唆する結果といえる。円柱形状のストレッチポール上にて背臥位で行うPelConは、骨盤後傾側の上後腸骨棘(PSIS)に荷重することにより後傾位にある寛骨を前傾させる効果があると推測される。本研究において、初めてこの骨盤リアライメント効果が客観的に示された。<BR>本研究の問題点として、男女割合が不均等であり一般化に制限がある点が挙げられる。またコントロール群がないため、他の運動プログラムとの比較がなされなかった。また、腰痛患者は含まれていなかったため、腰痛の治療効果は不明である。しかしながら、十分なサンプルサイズによる定量的なデータが得られたことから、信頼できる結果であると解釈される。以上より、研究仮説は支持されたと結論付けられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>ストレッチポールを用いた骨盤リアライメントエクササイズ(PelCon)は、健常者の非対称位にある骨盤を対称化させる効果が確認された。今後、骨盤マルアライメントに由来する腰痛の予防等に応用されることが期待される。
著者
伊藤 一也 増田 圭太 蒲田 和芳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P3419, 2009

【目的】ATM2(BackProject社)は機械的腰痛において、疼痛軽減の即時効果が得られる運動療法機器としてアメリカで普及している.ATM2の有効性については、腰痛患者の疼痛軽減効果(Lewis 2006)、腰痛患者の腰部筋活動の低下(backproject.com)、脊椎屈曲可動域の改善(増田 2008)などが報告されてきた.しかし、その効果発現機序については未知の点が多い.本研究では、ATM2のベルトによる固定下での等尺性筋力発揮が、骨盤アライメント対称化および下位胸郭横径拡張可動性に及ぼす効果を解明することを目的とした.研究仮説は、(1)ATM2は即時的に骨盤のアライメントを改善させる、(2)ATM2は即時的に下位胸郭横径拡張可動域を増加させる、であった.<BR><BR>【方法】対象者の取込基準は健常者、18-34 歳の男女で、下肢自動伸展挙上(ASLR)にて主観的に左右差を有する者であり、除外基準は医学的問題として下肢に外傷の既往歴を有する者、運動制限、内科的リスク、精神障害、コミュニケーション障害のある者、とした.ヘルシンキ宣言の精神に基づき作成された同意書に署名した9名の被検者が研究に参加した.<BR>介入としてATM2を用いた体幹後屈運動(10秒間の最大等尺性筋力発揮を10回反復)を実施した.観察因子は下位胸郭横径拡張可動性(ノギスにより測定)と骨盤アライメントの対称性(他動骨盤ローリングによる骨盤傾斜角の左右差)であり、その測定は介入直前と介入直後に実施した.統計学的検定には対応のあるt 検定を用い、有意水準をp<0.05とした.<BR><BR>【結果】介入前後の下位胸郭横径拡張可動域の変化量は、安静立位にて0.9±2.1cm(p=0.259)と有意差を認めなかったが、最大吸気時で2.1±1.4cm(p=0.004)、最大後屈位で2.7±3.4cm(p=0.02)と有意な増加が見られた.骨盤アライメントに関しては、介入前に2度以上の傾斜角の左右差を認めた7名に関して、介入前3.9±1.8°、介入後1.6±0.8°と有意な対称化を認めた(p=0.015)<BR><BR>【考察】ATM2による体幹後屈運動は、即自的に下位胸郭横径拡張可動域改善および骨盤アライメント対称化を導くことが示唆された.これはATM2のベルトによる骨盤・胸郭の圧迫および等尺性筋力発揮が、骨盤の対称化と下位胸郭の横径拡張を促す力学環境を作り出したためと推測される.本研究の問題点として、統計学的パワーの不足、コントロール群がないことが挙げられる.しかしながら、胸郭可動性および骨盤リアライメントの変化量が本研究によって得られ、今後の同様の研究におけるパワー分析に用いることができる.今後は腰痛の臨床効果および胸郭・骨盤のリアライメント効果について、十分な統計学的パワーを得た盲検化無作為化対照研究を行なう必要がある.
著者
伊藤 一也 増田 圭太 蒲田 和芳
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.829-832, 2013 (Released:2014-01-21)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

〔目的〕ストレッチポールを用いたベーシックセブンの効果を明らかにすることを目的とした.〔対象〕若年健常男性20名を対象とし,介入群とコントロール群に無作為に割りつけた.〔方法〕介入群はストレッチポールを用いたベーシックセブンを実施し,コントロール群はストレッチポールを使用せず,同様の運動を床上にて実施した.介入前後で体幹後屈可動域,体幹背面の床接地面圧分布を測定し,各群で変化量を比較した.〔結果〕介入前後での体幹後屈可動域および上部体幹床接地面圧はともに,介入群で有意に増大した.〔結語〕ベーシックセブンは,体幹後屈可動域および上部体幹床接地面圧の増加に効果的である.
著者
増田 圭太 石塚 健治 降旗 建治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.313, pp.7-12, 2006-10-20

本研究では,レコーディングの際に重要な受音点におけるギター音特性を明らかにするために,フォークギターの表面板振動(駒部位)と任意受音点間の音伝達特性を測定し,基礎的な検討を行った。糸巻きの撥を用いてギターの駒をタッピングすることによって加速度振動レベルと半径1mの円周上の音圧レベルを測定した。音伝達特性に関する信号処理方法は相関行列からインパルス応答を推定した。その結果から、80Hzから4kHz程度まで明瞭な音伝達特性が得られ,500Hz付近のギター音放射効率は500Hz付近が最も良いことなどがわかったので報告する。