- 著者
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今村 律子
赤松 純子
山田 由佳子
潮田 ひとみ
與倉 弘子
深沢 太香子
- 出版者
- 日本家庭科教育学会
- 雑誌
- 日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.57, 2014
<b>1</b><b>.目的<br></b> 家庭科衣生活内容において、「衣服の手入れ」は、どの校種においても大きな位置を占めている。小学校学習指導要領解説家庭編の「洗濯ができる」は、手洗いを中心とした洗濯の基本について学習する、を意味するが、手洗いという表現は、「洗濯機で洗える物を手で洗う」と洗濯の絵表示にある「洗濯機で洗えない物を手で洗う」の2種類の解釈が可能である。そのため、児童・生徒だけでなく大学生にもこの2種類の手洗いを混同している者が多いようである。本研究では、取り扱い絵表示の方法が、JISからISOの規格に変更されるこの時期に、被服学を専門とする立場から、洗濯学習に関する授業ポイント(内容)を整理し、小学校で重点的に取り上げる必要のある内容を含んだ洗濯学習の教材化について提案したい。<br><b>2</b><b>.方法<br></b><b> </b>現行の小学校家庭科教科書(2社)における衣生活内容「洗濯」を省察し、学習内容(ポイント)を被服管理学の視点から整理した。次に、関西6府県の附属小学校及び県庁所在地の市立小学校を対象に、洗濯の学習内容及び実習の実態についてアンケート調査したが、ここでは和歌山県の結果の一部を記す。<br><b>3</b><b>.結果及び考察<br></b>(1)洗濯学習に関する授業ポイント(内容)と調査項目<br> 小学校において学習すべき内容を6分類:A.準備、B.「洗う・絞る・干す」に関すること、C.洗剤、D.汚れ、E.後片付け、F.手入れの必要性、に整理することができた。 A.準備は、衣服の点検、表示の確認及び洗濯物・洗剤液の準備に細分できる。B.では、洗濯の工程、原理(水・洗剤・力)、洗い方・絞り方・干し方、C.は洗剤の種類・使い方・量、D.は、汚れの種類・性質、E.は、用具の片付け方とアイロン、F.は、着心地であり、43項目の内容に整理できた。<br>(2)和歌山市(54校中26校、回収率48%)における調査結果<br> 1)学習内容の実態<br> 整理した43項目中、学習させている項目は、平均24項目であった。9割以上の小学校で取り上げている項目は、絵表示で洗い方を確認すること、洗濯の工程は、「洗う→絞る→すすぐ・絞る・干す」であること、干す時に洗濯物の形を整えてしわを伸ばすこと、洗剤の量は必要以上使うと環境に良くないこと、の4項目であった。逆に学習実態が2割未満であったのは、洗濯機を使った時は洗濯機の中や周囲を拭くこと、泥などの固形汚れは乾燥させてブラシなどで落とすこと、汚れによって洗剤液と固形石けんを使い分けること、汚れのひどい部分には固形石けんを使うと良いこと、石けんは冷水に溶けにくいことの5項目であった。石けんに関わる内容があまり扱われていないことがわかった。<br> 2)洗濯実習の実態<br> 学校現場で洗濯実習を実施している小学校は84%と多く、2時間で実習している学校が多かった。靴下やハンカチを洗っている場合が最も多かったが、学校行事で使用されている鉢巻きやたすきを利用している学校もあった。使用洗剤の形状と種類を混合した設問で複数回答を求めた結果、粉末洗剤にのみ○を付けた回答が多く見られた。教師が合成洗剤と石けんの区別をあまり意識していないことがわかった。洗い方は、もみ洗いとつまみ洗いの両方を教えている学校が60%と半数を超えていた。<br>(3)手洗い教材への提案<br> 実生活では、洗濯機による洗濯がほとんどである。小学校における手洗い洗濯では、洗濯の工程及び原理を取り上げることにより、将来の効率的な洗濯機利用につなげたい。アンケート調査では、粉末タイプの合成洗剤を実習に用いている学校が多かったが、もみ洗いに加えて手洗いの利点である部分洗い(つまみ洗い)を効果的に指導するために、固形石けんによる手洗いを提案したい。小学校家庭科教科書には、洗剤液の水量が10~20倍であることが記載されているが、浴比が物理的な力に関連することは洗濯機による洗浄で取り扱うことなので、固形石けんを用いることによって取り上げる必要がなくなると考える。このことは、少量の水による手洗い学習となり、防災時の洗濯などにも応用することができると考える。