著者
今村 律子
出版者
和歌山大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

同一素材肌着を夜間睡眠時に4週間着用することによって、皮脂腺活動に違いが認められるかについて検討した。供試肌着は、綿およびポリエステルフライスの長袖・長ズボンの肌着とした。研究協力者は、健康な男子大学生17名であり、綿肌着着用者(C群)9名、ポリエステル肌着着用者(PET群)は8名であった。実験実施時期は10〜11月とし、4週間の実験前後に研究協力者の背中肩甲骨上部から皮脂をカップ法によって有機溶媒を用いて採取した。皮脂成分の分析には、薄層クロマトグラフ法を用い、スクワレン(SQ)、トリグリセリド(TG)、ワックスエステル(WE)、遊離脂肪酸(FFA)コレステロールエステル(CE)、コレステロール(Cho)、セラミド(Cer)の7種類に分離するよう展開した。展開後の薄層プレートは、デンシトメーターによって各波長ピークから濃度を算出した。各皮脂成分のうち皮脂腺由来成分であるWEおよびTGは、PET群では8例中7例においてそれぞれの濃度が4週間経過後に低下したが、C群では9例中5例においてその濃度が上昇またはほぼ変化なしという結果であった。SQに関しては、C群もPET群も4週間経過後に低下する例がほとんどであった。以上のことより、肌着の水分特性の差が皮脂活性に何らかの影響を与えることがわかった。皮脂の分泌はホルモンによって調節を受けることは広く知られている。特にアンドロゲンは、脂腺の成長と皮脂の合成を促進するといわれている。一方、ストレスが増すとアンドロゲンの分泌が減少するともいわれている。疎水性のポリエステル肌着を長期間着用することが何らかのストレスとなり、皮脂腺活動が抑制されたと考えられるが、今後ホルモン測定もふまえて検討する必要がある。
著者
今村 律子 赤松 純子 山田 由佳子 潮田 ひとみ 與倉 弘子 深沢 太香子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, 2014

<b>1</b><b>.目的<br></b> 家庭科衣生活内容において、「衣服の手入れ」は、どの校種においても大きな位置を占めている。小学校学習指導要領解説家庭編の「洗濯ができる」は、手洗いを中心とした洗濯の基本について学習する、を意味するが、手洗いという表現は、「洗濯機で洗える物を手で洗う」と洗濯の絵表示にある「洗濯機で洗えない物を手で洗う」の2種類の解釈が可能である。そのため、児童・生徒だけでなく大学生にもこの2種類の手洗いを混同している者が多いようである。本研究では、取り扱い絵表示の方法が、JISからISOの規格に変更されるこの時期に、被服学を専門とする立場から、洗濯学習に関する授業ポイント(内容)を整理し、小学校で重点的に取り上げる必要のある内容を含んだ洗濯学習の教材化について提案したい。<br><b>2</b><b>.方法<br></b><b> </b>現行の小学校家庭科教科書(2社)における衣生活内容「洗濯」を省察し、学習内容(ポイント)を被服管理学の視点から整理した。次に、関西6府県の附属小学校及び県庁所在地の市立小学校を対象に、洗濯の学習内容及び実習の実態についてアンケート調査したが、ここでは和歌山県の結果の一部を記す。<br><b>3</b><b>.結果及び考察<br></b>(1)洗濯学習に関する授業ポイント(内容)と調査項目<br> 小学校において学習すべき内容を6分類:A.準備、B.「洗う・絞る・干す」に関すること、C.洗剤、D.汚れ、E.後片付け、F.手入れの必要性、に整理することができた。 A.準備は、衣服の点検、表示の確認及び洗濯物・洗剤液の準備に細分できる。B.では、洗濯の工程、原理(水・洗剤・力)、洗い方・絞り方・干し方、C.は洗剤の種類・使い方・量、D.は、汚れの種類・性質、E.は、用具の片付け方とアイロン、F.は、着心地であり、43項目の内容に整理できた。<br>(2)和歌山市(54校中26校、回収率48%)における調査結果<br> 1)学習内容の実態<br> 整理した43項目中、学習させている項目は、平均24項目であった。9割以上の小学校で取り上げている項目は、絵表示で洗い方を確認すること、洗濯の工程は、「洗う&rarr;絞る&rarr;すすぐ・絞る・干す」であること、干す時に洗濯物の形を整えてしわを伸ばすこと、洗剤の量は必要以上使うと環境に良くないこと、の4項目であった。逆に学習実態が2割未満であったのは、洗濯機を使った時は洗濯機の中や周囲を拭くこと、泥などの固形汚れは乾燥させてブラシなどで落とすこと、汚れによって洗剤液と固形石けんを使い分けること、汚れのひどい部分には固形石けんを使うと良いこと、石けんは冷水に溶けにくいことの5項目であった。石けんに関わる内容があまり扱われていないことがわかった。<br>&nbsp;2)洗濯実習の実態<br> 学校現場で洗濯実習を実施している小学校は84%と多く、2時間で実習している学校が多かった。靴下やハンカチを洗っている場合が最も多かったが、学校行事で使用されている鉢巻きやたすきを利用している学校もあった。使用洗剤の形状と種類を混合した設問で複数回答を求めた結果、粉末洗剤にのみ○を付けた回答が多く見られた。教師が合成洗剤と石けんの区別をあまり意識していないことがわかった。洗い方は、もみ洗いとつまみ洗いの両方を教えている学校が60%と半数を超えていた。<br>(3)手洗い教材への提案<br> 実生活では、洗濯機による洗濯がほとんどである。小学校における手洗い洗濯では、洗濯の工程及び原理を取り上げることにより、将来の効率的な洗濯機利用につなげたい。アンケート調査では、粉末タイプの合成洗剤を実習に用いている学校が多かったが、もみ洗いに加えて手洗いの利点である部分洗い(つまみ洗い)を効果的に指導するために、固形石けんによる手洗いを提案したい。小学校家庭科教科書には、洗剤液の水量が10~20倍であることが記載されているが、浴比が物理的な力に関連することは洗濯機による洗浄で取り扱うことなので、固形石けんを用いることによって取り上げる必要がなくなると考える。このことは、少量の水による手洗い学習となり、防災時の洗濯などにも応用することができると考える。
著者
今村 律子 乾 眞寛 徳島 了 花沢 明俊 坂元 瑞貴 山本 勝昭 磯貝 浩久
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.105-116, 2014-04-25 (Released:2017-09-02)

本研究では,サッカー選手を対象とし,有効視野の範囲110°と生理的視野180°の広範囲で視覚刺激が呈示された場合に,視覚情報の獲得がどのように行われているのかを注視点距離から検討することを目的とした.対象者から3mの半円上にモニターを設置し,正面,有効視野110°位置,生理的視野180°の3つの視覚刺激条件において,指押し課題と全身反応課題の2つの反応形態の測定を実施した.その結果,呈示条件における注視点距離に差は見られなかった.しかし,反応時間と注視点距離の関係を検討した結果,反応形態において,全身反応課題では,注視点が長いと反応時間が速いという関連が見られた.また,指導者によるサッカー選手としてのパフォーマンス評価の順位は,全身反応課題においてすべての条件に注視点距離と有意な相関が見られたため,注視点距離が長い選手は「周りが良く見えている選手」として評価されている可能性があることが示唆された.
著者
今村 律子 西岡 真弓 赤松 純子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的</b> 「アイロンかけ」を体験するだけの授業を、中学校家庭科のねらいである「実践的・体験的な学習活動を通して」科学的に学ばせる授業へと転換することで、生活の中で応用し生かしていける力をつける授業づくりを目指した。<br><b>方法</b> 題材名「アイロンを極めよう」(2時間)で「繊維や布の特徴を理解したアイロンかけができる」ことをねらいとする授業実践を和歌山県内の中学校3校の1・2年生対象(285名)に実施した。しわが伸びる三要素(熱・水分・圧力)を押さえ、種々の衣生活内容と関連付ける授業内容と効果的な指導方法を研究した。また、生徒の授業前後のアンケートなどにより授業の効果を確認した。<br><b>結果 </b>1.「アイロンかけ」実習授業(2時間)に衣生活の総合的な視点を取り入れ、1時間目は【基礎編】、2時間目は【応用編】として内容を整理した授業が実践できた。<br>2.「しわが伸びる原理を示す模式図」や「カッターシャツ解体見本」、「アイロンかけビデオ」などの視覚的教材を活用した指導の工夫ができた。<br>3.「アイロンかけ」実習は、1枚のカッターシャツを分担し相互評価をさせるグループ学習により、時間を有効に使いながら相互に学び合う効果的な学習ができた。<br>4.1時間目実習時に生徒が気づいた「しわを整えるとかけやすそうだ」などの意見を生かし、かけ方のコツについて科学的に考えを深める問題解決学習ができた。<br> 本研究の一部は、基盤研究(B)26282011による。
著者
西岡 真弓 今村 律子 赤松 純子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2017

<strong>目的</strong> <br /> 家庭科の製作実習はこれまで,実習体験だけで終わりがちだった。しかし,現行の中学校学習指導要領においては「生活を豊かにしようと工夫する能力と態度を育てること」が求められ,さらに次期学習指導要領では,「何ができるようになるか」,「何を学ぶか」,「どのように学ぶか」が今まで以上に重要となった。本研究は,「アイロンかけ」実習を科学的知識に基づいた授業と位置づけ,生徒に3つの力(生活に生かせる知識・技能,工夫して実践する思考力,将来にわたって学びを生かそうとする意識)をつけさせる主体的・対話的で深い学びであるアクティブ・ラーニング型授業を具現化することをねらいとし,提案・実践・評価・分析する。<br /><strong>方法 </strong><br /> 「アイロンかけ」実習授業で学べる科学的知識を整理し構想図にまとめ,授業を立案した。授業展開については,アイロンかけの科学性すなわち,しわが伸びる3要素(熱・水分・圧力)および繊維の性質(霧吹き・スチーム)の理解に重点を置くことと,アクティブ・ラーニング型授業の特徴である主体的・対話的で深い学びに導く指導方法を確立することを重視した。指導の工夫は,①視聴覚教材の開発,②実感で納得させる体験,③グループ学習による学びあいのしかけ,④思考を深め授業を振り返る相互評価と自己評価の4点とした。それに基づいた授業をW県内3中学校9クラスで実施し,「生活に生かせる知識・技能」,「工夫して実践する思考力」,「将来にわたって学びを生かそうとする意識」の3点について授業効果を確認した。<br /><strong>結果</strong> <br /><strong>1.授業立案</strong> 「アイロンかけ」で学べる内容を整理し,科学的知識に基づく「アイロンかけ」実習をアクティブ・ラーニング型授業として立案,試行実践の後,基礎編(アイロンでしわが伸びる原理の理解と基本的なかけ方の習得)と応用編(繊維の水分特性と衣服の構成を理解したかけ方の習得)各1時間の授業提案ができた。<br /><strong>2.アクティブ・ラーニング型授業</strong> 基礎編では「繊維分子の紙芝居・かけ方ビデオの活用」および「アイロンのしわ伸ばし体験」を,応用編では「綿と毛の吸水実験」および「ワイシャツの解体見本提示」を行い,原理やかけ方の意味を考えさせた。また,グループで1枚のワイシャツを分担して実習する学習形態をとった。これらの指導の工夫により,「アイロンかけ」実習をアクティブ・ラーニング型授業として提案することができた。<br /><strong>3.3</strong><strong>点の授業効果</strong><br /><strong>(1)</strong><strong>「生活に生かせる知識・技能」</strong> 3要素の理解と霧吹き・スチームの使い分けは自己評価で9割以上が「わかった」と回答した。これは,視聴覚教材と体験を取り入れたアクティブ・ラーニング型授業の効果であると思われる。「アイロンかけ」技能の習得レベルは約9割がきれいに仕上げることが「できた」と回答しており,基礎的な技能はおおむね習得させることができたと思われる。<br /><strong>(2)</strong><strong>「工夫して実践する思考力」</strong> これまで各自で行うことの多かった「アイロンかけ」実習を,互いのかけ方を見て双方向に学びあう協働学習で行った結果,相互評価で「しわを整えるとかけやすそうだ」などの生徒の記述から,思考力の深化が認められた。<br /><strong>(3)</strong><strong>「将来にわたって学びを生かそうとする意識」</strong> 授業前後の意識変化調査から,今後のアイロンかけ意欲が8割以上の生徒にみられた。教師からの一方向的な指導ではなく生徒主体で考えさせる学習ができたこと,協働学習により友だちからよい刺激を受けたこと,自己評価により授業の振り返りと自己の到達度確認ができたことなどが,次の意欲へとつながったと思われる。このことは主体的で対話的な学びであるアクティブ・ラーニング型の授業展開に取り組んだ本研究の大きな成果といえる。
著者
川面 剛 八板 昭仁 大山 泰史 青柳 領 今村 律子
出版者
九州共立大学
雑誌
九州共立大学研究紀要 (ISSN:21860483)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.31-47, 2014

In basketball, fast-break and early-offense are called "progressive plays" because the ball iscontinuously advanced from the back-court through the front-court to the basket. In a progressive play,the preceding play and situation are related to the subsequent play and situation. The plays are notnecessarily chosen freely due to the former play or situation. The plays and situations that are related to each other and are frequently performed in sequence are referred to as nagare in Japanese. This studyinvestigated the relationship between the preceding and subsequent play and condition in the nagare ofa progressive play in basketball.We observed and evaluated 658 plays considered either fast-break or early-offense plays. Theseplays took place during 12 games between the RF team and 6 other teams in the same bj League (JapaneseProfessional Basketball League) held in 2009 and 2010. A total of 17 items, such as "How the opponent's ball was taken away," "The number of defensive players putting pressure on the ball man whentaking the ball," and "Distance (length) from the end line to the place where the ball was taken away,"were assessed. As categorical and continuous scales were mixed in the data, we used the t-test for acorrelation coefficient for two continuous variables, the chi-test for two discrete variables, and analysisof variance for continuous and discrete variables. Considering significant relationships among variables,we found the following 3 nagare:When we paid attention to the ball-taking-away method, we found a nagare that was started fromthe ball-taking-away by a steal/intercept, through conveying the ball on the center lane by two playersmainly using dribbling and finishing with a lay-up shot under the goal.When we paid attention to the play just after the ball was taken away, we found a nagare in whichunder-goal lay-up shooting was allowed under the conditions that many defensive players put pressureon the ball man, the distance from the end line to the ball-taking-away place was farther, and the ballcould be conveyed through only the middle lane.When we noted the duration time from taking the ball to shooting the ball and the ball-conveyedlane, the following three nagare were detected: In the case of the short ball-conveying time from theball-taking-away to the center line and the ball-conveying lanes through only the middle lane, small outnumberedsituations (e.g., 2 to 1 and 3 to 2) appeared and a short duration from center line to shootingallowed the use of a lay-up shot under the goal; the middle-to-middle ball-conveying allowed for 2-pointshooting by an early offense using the trailers (e.g., 4 to 3 and 5 to 4); and long ball-conveying durationtime from the ball-taking to the center line and ball-conveying middle to middle lines allowed for 3-pointshooting because of loose matching, even though players were not out-numbered (e.g., 4 to 4 or 5 to 5). 本研究では,ファストブレイクやアーリーオフェンスなどのボールを絶えず前へ進める「前進型プレイ」において,時系列にプレイした状況が次の状況を発生させる「プレイの流れ」があることに着目し,各状況間の相関を手がかりにそれらを構成するプレイや状況を明らかにすることであった.そして,2009年および2010年度のbjリーグ所属するRFチームを対象とし,12試合でファストブレイクやアーリーオフェンスを試みたと見なされる658プレイを調査し,得られたデータの尺度水準に応じて積率相関係数,一元配置の分散分析,クロス表の調整残差を検討した結果,以下のような関連や「流れ」が認められた. 1)ボール獲得方法に着目すると,スティールやインターセプトによるボール獲得からは,ドリブルによってミドルレーンでボールを前進させながら,2人のプレイヤーによって攻撃し,ゴール下でシュートするという「流れ」が認められた. 2)ボール獲得後の最初のプレイに着目すると「ボール獲得時のボールDF数が多い」「ボール獲得エリアがエンドラインから遠い」「ミドルレーンを進めることができる」という状況下では,ドリブルを使える状況であればゴール下までボールを進めてショットできるという傾向が認められた. 3)ボールの運び局面における「ボール獲得からショットまでの時間」および「ボールを進めたレーン」に着目すると,ボール獲得からCLまでを短時間にミドルからミドルでボールを進めた場合は,2対1や3対2のような少人数のアウトナンバーになる傾向があり,CLを越えてからシュートまでの時間が短ければゴール下でシュートするという「流れ」が認められた.そして,ミドルからサイドでボールを進めた場合は,4対3や5対4のようなトレーラーを使ったアーリーオフェンスによって2点エリアでシュートするという「流れ」が認められた.また,ボール獲得からCLまでボールを進める時間が他のプレイよりも長く,「サイドからサイド」でボールを進めた場合は,4対4や5対5といったOFとDFの人数が同じであってもしっかりとした対峙の状態ではないことによって3点エリアでシュートするという「流れ」が認められた.
著者
今村 律子 赤松 純子 山本 奈美 川嶋 径代 北又 寿美
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

小・中学校家庭科教科書における衣生活の「安全・安心」表記は実験・実習に関わる機器や用具の使い方が中心であり、高等学校も含め、食・住と比較して表記が少なかった。しかし、「安全」という表記がない文章や図中にも種々の視点のリスクが含まれており、授業者が「安全」を意識した授業展開が出来るよう配慮すべきであることがわかった。そこで、着衣着火事故から衣服の手入れや繊維の性質を学習する授業提案をおこなった。さらに、住生活をも関連させた授業展開が可能となった。
著者
今村 律子 矢野 勝 綿貫 茂喜
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

健康な男子学生28名に研究協力を依頼し、10月〜11月にかけての4週間の間、夜間睡眠時に同一素材の肌着をパジャマとして毎晩着用してもらい、その間の皮脂成分の変化を測定した。皮脂の採取法は、有機溶媒を用いたカップによる抽出法とし、背部肩甲骨上部から皮膚表面皮脂を実験前、実験開始1,2,3,4週間後に採取した。供試肌着は、綿100%(吸湿率7.75%)、ポリエステル100%(同0.63%)および綿・ポリエステル・キュプラ混(同6.46%)のそれぞれ水分率の異なる3種類のものとした。肌着の洗濯は験者が条件を統一しておこなった。皮脂分析は、薄層クロマトグラフ法を用いた。皮脂は、スクワレン(SQ)、トリグリセリド(TG)、ワックスエステル(WE)、遊離脂肪酸、コレステロールエステル、コレステロールおよびセラミドの7種類に展開分離させた。展開後の薄層プレートは、デンシトメータ(島津、CS-9300PC)で読み取り、定量化した。皮脂は、皮脂腺由来成分と表皮由来成分に分けることが出来る。本研究では、皮脂の約9割を占める皮脂腺由来成分であるSQ、TG、WEに注目して解析をおこなった。グループ間のWE、TG、SQを平均値で、また着用前の値からの変化量で分析したところ、WEは、綿肌着着用群において、着用3週間目まで上昇し続け、平均162%となった。TGは、綿着用群は、1週間着用後132%まで上昇し実験終了時まで130%の値を維持した。ポリエステル着用群では、WEは、着用2週目まで一旦上昇したがその後低下し、実験終了時には78%であった。TGは、1週目にピーク値を取り、その後低下して最終的には80%であった。混紡肌着は、両者の中間になった。SQは、3種類の肌着間に一定の変化は認められなかった。