- 著者
-
深沢 太香子
- 出版者
- 一般社団法人 日本家政学会
- 雑誌
- 一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.64, 2012
<b>目的</b> 温熱的快適性における性差を明らかにすることを目的とする.本研究では,ヒトの温熱的快適性と高い相関性のあることが確認されている皮膚濡れ率を用いて,実験的に検討することとした.<br><b>方法</b> 健康な日本人若年者を対象とした.本研究には,男子大学生7名(22.5 ± 1.2 歳)と女子大学生16名(22.1 ± 0.3 歳:卵胞期間中)の協力を得た.被験者は,実験用衣服を着用した後,気温 22 °C,絶対湿度 10 mmHg,気流 0.2 m/s の温熱環境条件に制御された実験室内に,計65 分間滞在した.室内では,実験開始から20分間安静椅座位を保ち,その後45分間,4.5 km/h の歩行運動を行った.実験中,鼓膜温,皮膚温8 部位,皮膚露点温度5部位を連続測定した.主観評価として,全身の温冷感,湿り感,温熱的快適感について,5 分ごとに申告させた.<br><b>結果と考察</b> 実験時間における全身からの潜熱放散は,男子の方が女子よりも有意に多かった(p< 0.001).その結果として,男子の平均皮膚温は,女子よりも低値を示した(p< 0.001).さらに,男子における全身の皮膚濡れ率は,若年女子よりも高値を示した(p< 0.001).この皮膚濡れ率を指標とした全身の温熱的快適感の閾値は,男子の場合はw= 0.39 ± 0.05 (-)であり,女子の場合はw= 0.21 ± 0.03 (-)であった.両者の閾値には,有意差が認められたことから(p< 0.001),男性よりも女性の方が温熱的不快感を覚えやすいことが実験的に示された.これは,体温調節反応における性差とともに,女性の温冷覚の閾値は男性よりも小さいことに起因するものと考えられた.