著者
永美 大志 西垣 良夫 矢島 伸樹 浅沼 信治 臼田 誠 広澤 三和子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.2, 2005

<はじめに><BR> 農薬中毒(障害)において、パラコート剤による中毒は、死亡率、死亡数の高さから重要な位置を占める。演者らは、本学会の農薬中毒臨床例特別研究班として、1998-2003年度の調査を担当し、調査の概要を報告してきた(西垣ら 2002、2005)。ここでは、自殺企図によるパラコート中毒について考察する。<BR><方法><BR> 本学会が行なってきた農薬中毒(障害)臨床例調査の1998-2003年度分の中で、自殺企図でパラコート製剤を服毒した症例71例について、製剤、性、年令階級、服毒量などと転帰との関係について検討した。<BR><結果><BR>1.製剤別の転帰<BR> パラコート製剤は、1960年代に販売され始めたが、その中毒による死亡の多さに鑑み、1986年に24%製剤(主な商品名;グラモキソン、以下「高濃度製剤」)の販売が自粛され、5%パラコート+7%ジクワット製剤(主な商品名;プリグロックスL、マイゼット、以下「低濃度製剤」)が販売されるようになった。高濃度製剤の販売自粛から10年以上経過した、1998-2003年の調査でも高濃度製剤を用いた自殺症例はあり、8例全てが死亡した。一方、低濃度製剤による症例は48例あり39例(81%)が死亡した。また、尿定性、血中濃度の測定などからパラコートの服毒であることは明らかであるが製剤名が不明であった15症例も全て死亡した。<BR>2.性別の転帰<BR> 性別では、症例数で、男31例、女39例であり、死亡数(率)は、男25例(81%)、女36例(92%)であった。<BR>3.年令階級別の転帰 症例を、20-49才、50-69才、70-89才の3群に分類したところ、死亡数/症例数(死亡率)はそれぞれ、17/21(81%)、23/27(85%)、22/23(96%)であり、比較的若い群でも死亡率が高かった。4.服毒量と転帰<BR> 高濃度製剤、製剤名不明の症例については、上記のとおり死亡例のみである。低濃度製剤については、20mL以下、50mL以下、50mLを超える量を服毒した群に分類したところ、死亡数/症例数(死亡率)はそれぞれ、4/9(44%)、2/4(50%)、22/23(96%)であり、数十mLの服毒であっても、半数近くが死亡し、50mLを超える群ではほとんどが死亡した。<BR>5.尿定性と転帰<BR> 尿定性の判定結果を、陰性、陽性、強陽性に分類したところ、死亡数/症例数(死亡率)はそれぞれ、1/2、12/17、24/27であり、陽性で71%が、強陽性では89%が死亡した。<BR>6.血清中パラコート濃度<BR> Proudfood(1979)が提案した、50%生存曲線との比較を行なったところ、おおむね、死亡例は曲線の上に、生存例は曲線の下に位置した。<BR><まとめ><BR> パラコート中毒の転帰を予測する因子としては、服毒量、服毒からの時間と血清中濃度などが考えられた。<BR><謝辞><BR> 本調査にご協力いただいた、全国の医療施設の方々に、深謝いたします。<BR><文献><BR>西垣良夫 他(2002).日農医誌 51:95-104 <BR>西垣良夫 他(2005).日農医誌 (投稿中) <BR>Proudfood AT et al.(1979) Lancet 1979;ii:330-332

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