- 著者
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大富 あき子
大富 潤
- 出版者
- 一般社団法人 日本家政学会
- 雑誌
- 一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.70, pp.180, 2018
目的<br>日本列島の最南端に位置する鹿児島県は温暖な気候に恵まれ、一年を通じて様々な作物が収穫でき、多彩な郷土料理が伝承されている。指宿市山川地区に古くから伝わる郷土料理で鹿児島県ふるさと認証食品の一つでもある山川漬は、かめ壺で発酵させた大根の漬物で、たくあんのルーツであるが、近年生産者の数が激減している。そこで本研究は、山川漬の伝承と生産の現状を明らかにすることを目的とした。<br>方法<br>認証基準に合致した製法で山川漬を生産しているA漬物店(指宿市)を2018年1月に訪問した。現地では生産の現場を視察するとともに、代表者へのインタビューを行った。<br>結果<br>山川漬は古くは「唐漬(からづけ)」と呼ばれ、1592年の豊臣秀吉の朝鮮出兵に向けて兵をあげた島津義久の軍船に、山川港周辺の農家が生産した唐漬が兵糧として積み込まれている。「山川漬」と呼ばれるようになったのは江戸時代で、原料となる大根は練馬大根あるいは理想大根などの白首大根である。泥付きのまま2段に組んだ竿で約1カ月間干したものを、塩をふりながら木製の細長い臼において杵でたたく。かめ壺の底にすのこを敷き、大根を塩と交互に隙間なくつめ、密封して半年から1年間漬ける。できる限り水分を除去し塩だけで発酵させる山川漬は、温暖な南九州における理にかなった保存食である。以前は各家庭で作られていたが、今では4つの店舗でしか製造されておらず、原料からの製造は2店舗のみである。