- 著者
-
時友 裕紀子
阿部 芳子
柘植 光代
松本 美鈴
坂口 奈央
- 出版者
- 日本調理科学会
- 雑誌
- 日本調理科学会大会研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.30, 2018
【目的】山梨県の家庭で食べられてきた主菜について、魚料理を中心に、地域による特徴をまとめた。<br>【方法】「次世代に伝え継ぐ家庭料理」のガイドラインに沿い、山梨県の生活環境と家庭料理について平成25~27年に行った聞き書き調査を中心にまとめた。峡北(北杜市)、峡中(甲斐市)、峡西(南アルプス市)、峡東(山梨市)、峡南(南部町)、東部(上野原市)、富士五湖・富士山麓(山中湖村)を調査対象地とした。<br>【結果】山梨県では、富士川水系(笛吹川、荒川、塩川、早川など)や相模川水系(桂川、笹子川など)、多摩川水系、富士山の裾野の山中湖、河口湖、西湖、精進湖、本栖湖(富士五湖)などの河川、湖沼、および水田や用水路から得られた淡水魚介類が食べられてきた。あゆ、やまめ、にじます、ひめます、うなぎ、こい、ふな、どじょう、わかさぎ、たにしなどが挙げられる。<br> 山中湖ではわかさぎ漁が盛んであり、わかさぎの素揚げの甘酢漬け、佃煮、てんぷら、から揚げ、塩焼きなど多様な料理があった。南アルプス市の甲西町ではふなやこいの甘露煮、どじょうの卵とじを食べた。富士川流域の南部町では、富士川とその支流で漁獲されたうなぎの蒲焼、やまめやあゆの塩焼き、もくずがにの塩ゆでまたはみそ汁が食べられていた。<br> 海産魚介類はいわし、さんま、身欠きにしん、するめなどを主な食材としてきた。米の収穫が終わった頃に、新米にさんまとしょうゆ、酒を入れて炊く「さんま飯」は、主食ではあるが、峡北地域の特徴的な魚料理である。山梨市の家庭ではほっけ、ますの焼き魚が日常の料理であった。現在甲府市で購入量の多いまぐろは昭和30年代から食べられていて、上野原市の市街地では生まぐろのブツ切りをよく食べていた。