著者
時友 裕紀子 山西 貞
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.347-353, 1993-05-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

タマネギ中の遊離糖含量と香気成分の加熱による変化を明らかにすることにより, 加熱タマネギの甘いフレーバーに寄与する因子について検討を行った.以前より加熱タマネギの甘味成分とされていたプロパンチオール (プロピルメルカプタン) は, その標準物質の水溶液の官能評価により甘味を呈さないこと, タマネギの加熱により減少すること, が明らかとなり, 加熱タマネギの甘味成分ではないことが明確となった.生タマネギ中に6%程度存在する遊離糖 (グルコース, フラクトース, シュークロース) の含量は加熱により変化しないか, あるいは, 減少する傾向にあり, 新たな遊離糖の生成はないことがわかった.そして, 水分の蒸発による糖濃度の上昇, 加熱による組織の破壊や軟化により甘味を強く感じるものと考えられた.焼きタマネギの香気成分の分析により, 35成分を同定, 推定した.加熱により, 生タマネギ香気の主成分である含硫化合物量は減少し, 糖の加熱分解により甘い香気成分が生成, 存在しており, 加熱タマネギの甘いフレーバーの一因と考えられた.
著者
松本 美鈴 阿部 芳子 坂口 奈央 柘植 光代 時友 裕紀子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】山梨県の郷土料理ほうとうは、塩を加えずに麺を作り、野菜などの副材料と一緒に汁の中で煮込んでつくる麺料理である。文献調査、聞き書調査およびアンケート調査により、ほうとうが時代とともにどのように変遷してきたかを明らかにするとともに、アンケート調査によりほうとうが現代の食生活に受け継がれてきた要因を考察する。<br>【方法】文献調査は、社団法人農山漁村文化協会刊行『日本の食生活全集』聞き書山梨の食事を主要資料とし、大正末期から昭和初期にほうとうがどのように食べられていたかを捉えた。聞き書調査は、日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ家庭料理」のガイドラインに沿い、山梨県の生活環境と家庭料理について平成25~27年に実施した。アンケート調査は、山梨県在住の家事担当者および中学校・高等学校の生徒を対象とし、ほうとうに関する質問用紙を地域の協力者に郵送した。930部が回収された。<br>【結果】文献調査の結果、大正末期から昭和初期、地粉で打った自家製麺と手近にある野菜、いも、きのこ等の複数の食材を一緒に汁の中で煮込んでほうとうを作っていた。ほうとうは山梨県の日常の夕食として一年を通して食べられていた。聞き書調査から、昭和30年代もほうとうは日常の夕食として食べられていたが、副材料には、油揚げ・豚肉・鶏肉を用いる地域が出現したことが分かった。アンケート調査から、現在のほうとうは、秋から春の寒い時季の日常の夕食として食べられていること、ほうとうに入れる副材料は野菜・いも・きのこに加えて豚肉や鶏肉などの動物性食品が多用されていることが分かった。山梨県の郷土料理ほうとうが受け継がれてきた要因として、市販麺の利用など調理の簡便性が示唆された。
著者
時友 裕紀子 山西 貞
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.347-353, 1993

タマネギ中の遊離糖含量と香気成分の加熱による変化を明らかにすることにより, 加熱タマネギの甘いフレーバーに寄与する因子について検討を行った.<BR>以前より加熱タマネギの甘味成分とされていたプロパンチオール (プロピルメルカプタン) は, その標準物質の水溶液の官能評価により甘味を呈さないこと, タマネギの加熱により減少すること, が明らかとなり, 加熱タマネギの甘味成分ではないことが明確となった.<BR>生タマネギ中に6%程度存在する遊離糖 (グルコース, フラクトース, シュークロース) の含量は加熱により変化しないか, あるいは, 減少する傾向にあり, 新たな遊離糖の生成はないことがわかった.そして, 水分の蒸発による糖濃度の上昇, 加熱による組織の破壊や軟化により甘味を強く感じるものと考えられた.<BR>焼きタマネギの香気成分の分析により, 35成分を同定, 推定した.加熱により, 生タマネギ香気の主成分である含硫化合物量は減少し, 糖の加熱分解により甘い香気成分が生成, 存在しており, 加熱タマネギの甘いフレーバーの一因と考えられた.
著者
柘植 光代 時友 裕紀子 阿部 芳子 松本 美鈴 坂口 奈央
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】山梨県で食べられてきたおやつ/間食を主材料(小麦粉、米粉、もち米、とうもろこし粉、いも類、その他)で分類し、地域による特徴をまとめた。<br />【方法】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ家庭料理」のガイドラインに沿い、山梨県の生活環境と家庭料理について平成25~27年に聞き書き調査を行った。峡北(北杜市)、峡中(甲斐市)、峡西(南アルプス市)、峡東(山梨市)、峡南(南部町)、東部(上野原市)、富士五湖・富士山麓(山中湖村)を調査対象地とした。<br />【結果】間食の名称にはナカイレ、オチャ、オヤツ、オコジュウ、ヨウジャなどがあり、地域により違いがみられた。<br /> 主材料が小麦粉のおやつには薄焼き、ねじり菓子や酒まんじゅう、米粉のおやつには砕米を利用した薄焼きや、上新粉を利用したまんじゅう、かしわもち、草もちなどがあった。もち米を蒸して搗き、きな粉と黒蜜をかけた「あべ川もち」は盆の時期に食べられ、節分の豆とひなあられを使う「おしゃかこごり」は灌仏会で用いられるなど、もち米を使ったおやつは行事食の場合が多い傾向にあった。とうもろこし粉を用いた料理は北杜市や上野原市でもみられたが、特に山中湖村ではとうもろこし粉の料理が昔から常食されており、もろこし団子やもろこしまんじゅうがおやつとしても食べられていた。<br /> さつまいもやじゃがいもを用いたおやつも多く、「いものこ」(南部町)はさつまいもを輪切りにし、ゆで、中心部に開けた穴にわらを通して乾燥させた保存食品である。食べる際に水で戻して砂糖で煮る方法は特徴的な調理方法と考えられる。じゃがいもの小いもを揚げたり煮たりするおやつも各地でみられた。桃のシロップ煮やしょうが糖など、生産地特有のおやつもあった。
著者
時友 裕紀子 阿部 芳子 柘植 光代 松本 美鈴 坂口 奈央
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】山梨県の家庭で食べられてきた主菜について、魚料理を中心に、地域による特徴をまとめた。<br>【方法】「次世代に伝え継ぐ家庭料理」のガイドラインに沿い、山梨県の生活環境と家庭料理について平成25~27年に行った聞き書き調査を中心にまとめた。峡北(北杜市)、峡中(甲斐市)、峡西(南アルプス市)、峡東(山梨市)、峡南(南部町)、東部(上野原市)、富士五湖・富士山麓(山中湖村)を調査対象地とした。<br>【結果】山梨県では、富士川水系(笛吹川、荒川、塩川、早川など)や相模川水系(桂川、笹子川など)、多摩川水系、富士山の裾野の山中湖、河口湖、西湖、精進湖、本栖湖(富士五湖)などの河川、湖沼、および水田や用水路から得られた淡水魚介類が食べられてきた。あゆ、やまめ、にじます、ひめます、うなぎ、こい、ふな、どじょう、わかさぎ、たにしなどが挙げられる。<br> 山中湖ではわかさぎ漁が盛んであり、わかさぎの素揚げの甘酢漬け、佃煮、てんぷら、から揚げ、塩焼きなど多様な料理があった。南アルプス市の甲西町ではふなやこいの甘露煮、どじょうの卵とじを食べた。富士川流域の南部町では、富士川とその支流で漁獲されたうなぎの蒲焼、やまめやあゆの塩焼き、もくずがにの塩ゆでまたはみそ汁が食べられていた。<br> 海産魚介類はいわし、さんま、身欠きにしん、するめなどを主な食材としてきた。米の収穫が終わった頃に、新米にさんまとしょうゆ、酒を入れて炊く「さんま飯」は、主食ではあるが、峡北地域の特徴的な魚料理である。山梨市の家庭ではほっけ、ますの焼き魚が日常の料理であった。現在甲府市で購入量の多いまぐろは昭和30年代から食べられていて、上野原市の市街地では生まぐろのブツ切りをよく食べていた。
著者
時友 裕紀子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.279-287, 1995-04-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
28
被引用文献数
7 11

スライスタマネギと球のままのタマネギを各種調理条件下で加熱し,それらのSDE法によるにおい抽出物とヘッドスペースガス成分についてGCおよびGC-MS分析し,比較検討した.スライス加熱タマネギのにおい成分として特徴的なジプロピルトリスルフィドは,球のまま加熱タマネギではわずかであった.一方,プロペニル基を有するスルフィド類は存在していた.甘いにおいの強い焼きタマネギにはフルフラールを始めとするフラン類が多く存在し,加熱タマネギの甘いフレーバーには糖由来の加熱香気成分が寄与していると考えられた.
著者
時友 裕紀子 小林 彰夫
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.17-22, 1988
被引用文献数
1 3

(1) アズキを煮熟した際感じられる独特の甘く香ばしいにおいについて検討する目的で,北海道十勝産のアズキのにおい濃縮物を連続水蒸気蒸留抽出法にて得,シリカゲルカラムクロマトグラフィー, GLCおよびGC-MS分析により,各種におい成分を検討した.<br> (2) におい濃縮物は甘く香ばしいアズキらしいにおいを有しており, 0.8~0.9mg%の収率であった.音更シュウズ,ハヤテショウズの2品種のにおい成分を比較したが,においの構成成分およびその量比に顕著な違いは認められなかった. 2品種のにおい濃縮物,および音更ショウズのにおい濃縮物のシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって得られた各画分を分析した結果,あわせて70化合物を同定および推定した.それらは,炭化水素14種,アルコール22種,カルボニル化合物15種,カルボン酸2種,フェノール7種,フラン5種,ラクトン2種,含窒素化合物3種であった.<br> (3) 上記のにおい物質のうち,豆臭を有する1-hexanol, 3-methyl-1-butanolなどのアルカノール,甘いにおいに寄与すると考えられる芳香族アルコール,フラン,ラクトン,甘い香気を増強すると考えられるフェノール化合物,および,含有量が多くカラメル様芳香を有するmaltolが,アズキの煮熟臭成分として重要であると考えられた.とくに,アズキの特徴的な甘いにおいには,maltolが大きく関与していることが明らかとなった.