著者
矢部 直人 埴淵 知哉 永田 彰平 中谷 友樹
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p>新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の日本における広まりを受けて,日本政府や新型コロナウイルス感染症対策専門家会議,自治体は2月中旬頃より,さまざまな要請を行った。2月下旬から3月上旬にかけて,密閉された空間,人が高密度に集まる空間,人と密接に接触する機会といった,3密を避けることが要請された。3月下旬には,東京都知事が自宅での就業や,不要不急の外出を控えるように要請。さらに4月7日に日本政府は7都府県を対象として緊急事態宣言を行い,人と人との接触を最低で7割から8割減らすことを目標として外出自粛を要請した。4月16日には,緊急事態宣言の対象が全国に拡大された。ただし,西ヨーロッパや北米と比較すると,日本における外出自粛要請は罰則がないことなど,ゆるやかな外出制限にとどまっている。</p><p></p><p>外出自粛に当たっては,オンライン会議システムを用いた在宅勤務など,インターネットの利用により外出行動を代替することが注目を集めた。インターネットの利用による外出の代替については,Andreev et al. (2010)が既存研究をレビューしており,在宅勤務は外出を代替する効果が明らかなこと,オンラインショッピングでは代替よりも補完の効果が優勢なこと,ネットの余暇・娯楽利用については研究が少なく効果が定かではないことが示されている。</p><p></p><p>本研究では,5月に外出行動の把握を目的としたインターネット調査を行い,外出行動やネットの利用などについてのデータを収集した。回答数は1,200名である。</p><p></p><p>最初に,ネット利用と行くことを控えている外出先の関係をみるため,コレスポンデンス分析を行った。その結果,仕事でのネット利用と職場への外出を控えることとの関係,余暇・娯楽でのネット利用と飲食店やショッピングモールへの外出を控えることとの関係,などの対応が明らかになった。</p><p></p><p>次に,2月中旬から5月中旬にかけての外出時間の推移とネット利用の関係について,マルチレベルモデルを使って分析した。その結果,ネット利用に関しては日常の買い物,社交,運動,余暇・娯楽といった利用が有意な変数となり,いずれも外出時間の減少率を大きくする方向に影響していた。一方,職場がネットを使った勤務に対応していないことは,外出時間の減少がゆるやかになる方向に影響していた。特に従来の研究が少ない,ネットの社交,運動,余暇・娯楽利用について外出を代替する関係が目立つ。一方,日常の買い物でのネット利用は,上記の社交などでのネット利用に比べると,外出を代替する関係は弱いことが分かった。</p><p></p><p>Andreev, P., Salomon, I. and Pliskin, N. 2010. Review: State of teleactivities. <i>Transportation Research Part C: Emerging Technologies</i> 18: 3-20.</p><p></p><p>本研究はJSPS科研費(17H00947)の助成を受けたものです。</p>

言及状況

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CiNii 論文 -  緊急事態宣言前後の外出行動とインターネット利用の関係 https://t.co/iic8qw6qxf #CiNii "仕事でのネット利⽤と職場への外出を控えることとの関係, 余暇・娯楽でのネット利⽤と飲⾷店やショッピングモール への外出を控えることとの関係,などの対応が明らかに"

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