著者
平岩 馨邦 三宅 貞祥 南 学
出版者
九州大学
雑誌
九州大學農學部學藝雜誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.455-459, 1954-03

Northern Kyushu was caught in heavy rains, rivers around overflowed and their catchment areas met unparalleled flood in the end of June, 1953. In August we went to Onga Village, Hinashiro Village and Zend6ji Town, in which the damages were most tremendous, along the Onga and Chikugo rivers in Fukuoka Prefecture, and investigated the effects of the flood on the habitations of the domestic rats, Norway rat Rattus norvegicus, and house rat Rattus rattus, in those areas. Norway rats were captured in Togo Town of unflooded area and in the higher and dried part of Nakabaru Village of flooded area but in the above mentioned villages and town in which water came over several metres, only house rats were got, Norway rats being never met. Therefore it seems that in the flooded areas the Norway rats decreased exceedingly in number, having been drifted or drowned, as the water invaded their dwelling places of ground level, though the house rats survived, escaping to the higher places in the house such as rafters of the ceiling. The peasants observed that abundant individuals of rats were drifted and arrived, being alive or dead, to the foot of the hill situated down the Onga river. Most of them are considered to be Norway rats. Hinashiro Village and. Zendoji Town along the Chikugo river are used to be flooded almost annually in summer, so the Norway rats, living in ground level, are thought to be very few in number or to be lacking absolutely, because they can not dwell habitually in such area.昭和28年6月25日より数日間降り続いた豪雨の為, 北九州特に福岡・熊本両県下に於ける遠賀川・筑後川・矢部川・菊池川・白川の諸河川は氾濫し, その流域地方は未曾有の大洪水に襲われ各方面に甚大な災害を蒙つた. その直後九州大学に於いてはその災害の綜合調査を企画し, 学内の関係諸教室は夫々の専門分野の調査研究に従つた. われわれは動物に関係する部門を分担し, 8月の初旬及び中旬に福岡県下の主として遠賀川・筑後川の流域に於ける水害現場に赴いて調査を行つたが, その内洪水の住家性鼠類に及ぼした影響に関するものをここに報告する.
著者
三宅 貞祥 松下 愛子
出版者
福岡女子大学
雑誌
生活科學 (ISSN:05593042)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.97-104, 1954-04-30

1)福岡市においては8〜9月交尾せしめるときは,まもなくcement si andの発育がおこり,およそ1ヵ月後にぱ最盛期に達し,その後1ヵ月以内に産卵する。2) cement eland の発育程度を肉眼的に観察するには,尾脚にあらわれる斑紋に注目してその発育の程度を知ることができる。その発育期間をA, B, C期の3期に区別して実験結果を確かめる目標とした。3)尾脚にみられる斑紋は交尾後数日にして出現するため,野外から採集した雌の交尾の有無を識別して,諸種の実験に供する便宜がある。4)本実験の結果では交尾後sinus glandがcement glandの発育を抑制する働きについては明らかな効果が認められなかつた。5)交尾後眼柄を切除する時期によつてsinus glandの脱皮作用及び産卵を抑制する働きに時期的なずれのあることが認められた。即ち交尾後cement glandの分泌開始期(A期及びB期)までに限柄を切除するときは脱皮作用が促進され,その分泌の最盛期(C期)後に眼柄を切除するときは産卵が予定よりも旱期におこることが認められた。
著者
武田 正倫 三宅 貞祥
出版者
一般社団法人 日本甲殻類学会
雑誌
甲殻類の研究
巻号頁・発行日
vol.4, pp.157-163, 1971

ヤワラガニ科の多くの種は河口の汽水域にみられるが,現在まで純淡水産の4種が知られている。それらはニュージーランドおよびオーストラリア産のHalicarcinus lacustris(Chilton),フィリッピン産のH.wolterecki Balss,中国中部産のNeorhynchoplax introversus(Kemp)およびイラク産のN.kempi(Chopra et Das)である。ここに報告する種も淡水産で,パラオ諸島,バベルダオブ島のガルドック湖付近の川で採集されたものである。本極は第3顎脚が口部を不完全に閉ざしていること,および雄の腹部が4節からなっていることによりNeorhynchoplax Sakai,1938に含まれる。この属のカニでは額角は通常3歯よりなるが,N.rostrata(Haswell),N.nasalis(Kemp)および本種においては1歯である。本種では額角が短い三角形の突起にすぎないが,他の2種では顕著である。他の特徴も著しく異なっているため上記既知種から容易に区別される。本種の模式標本は九州大学農学部動物学教室に保管されている。種の特徴の概略は下記のとおりである。Neorhynchoplax inermis sp. nov. 完模式標本においては,甲幅3.6mm,側壁を除いた背面の最大幅3.0mmである。甲は丸みのある三角形で,背面はほとんど平滑である。各域を分割する明瞭な溝が発達し,また背面の周縁にわずかな縁どりが認められる。前側縁はわん曲するが,側縁は互いにほぼ平行である。側線に近く側壁が突出し,甲の最大幅を形成する。眼窩外歯は認められず,また前側縁,側壁も歯ないし棘を欠く。額角はきわめて短い三角形の突起で,短毛で縁どられている。鋏脚の長節下縁に1小突起が認められるが,他の節は歯または棘を有しない。不動指および可動指は先端近くで内側にわん曲し,それぞれ3ないし4個の互いにかみ合う歯を備える。歩脚の長節の前縁末端は突出せず,また指節後縁も辣を有しない。指節は前節とほぼ等長である。追記-最近オランダのホルサイス博士により淡水産ヤワラガニに関する論文が公表され,ニューギニア,パプァ区産の1種Halicarcinus angelicusが追加された。ホルサイス博士はニューカレドニア産のH.pilosus(A. Milne Edwards)も加えて合計6種を数えている。H.pilosusは汽水域にもみられるので"淡水産"としてはやや疑問があるが,同属の淡水産3種と共通の特徴をもつ。したがって,H.pilosusおよびここに報告したNeorhynchoplax inermisを含めると,ヤワラガニ科の淡水産の種は2属7種となる。