著者
井上 芳保
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.44-53, 2018-01-31 (Released:2019-02-26)
参考文献数
17

HPVワクチン接種被害事件では、それまで健康そのものだった女性に必要性が疑わしく、副反応の危険性の高いワクチンが打たれた結果、重篤な被害に見舞われた女性たちの苦しみが続いている。国が公認して接種を進めていったことの責任が問われなければならない。このワクチンは、国会の議を経て2013年4月に定期接種化されたが、2カ月後に中断された。しかし日本産婦人科学会をはじめ医学系の多くの学会が定期接種再開を求めている。膠着状態の続く中、2016年7月には被害者たちによる、国と製薬会社を相手どっての集団訴訟も開始された。本稿はそのような経緯を踏まえつつ、このワクチンの接種が強行されてしまったことの背景にあるものを探ってみる。「病」が医療側の都合でつくられている現実がある。先制医療に対して無防備になってしまう我々の中にある、「正常」への過剰な志向性、すなわち「正常病」の兆候、そして予防幻想が視野に入ってくる。この問題は何も医療だけに限らない広がりを有している。
著者
井上 芳保
出版者
札幌学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

新自由主義的な経済政策の下で健康不安意識が煽られており、過剰な医療行為が多々発生していることが確認された。日本では医師をはじめとする医療の専門家集団の中からこの構造を批判する声はなかなか出てこない。というのは専門家集団自体が一つのムラ社会となっているからである。この構造を変えていかねばならない。不要な検査、薬の出し過ぎなどを吟味し、批判できるよう、普通の市民の医療に関するリテラシーを高める必要がある。
著者
井上 芳保
出版者
札幌学院大学
雑誌
社会情報 (ISSN:0917673X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.53-56, 2003-03

第16回社会情報調査の方法に関する研究会は「ローカル・メディア」を共通テーマとして2002年3月2日に開催された.例によって,社会情報学部の教員のみではなく,他大学の研究者など学内外から関心をお持ちの方が多く参加し,熱心な議論が重ねられ有意義な場となった.今回はマスコミ関係の仕事に就いておられる方も見えていた.この研究会は中澤秀雄教員と私の二人が責任者となって企画されたものだが,以下では,責任者の一人としてこの研究会の様子を簡単に紹介しておく.それと共に,この場をお借りして今回の企画に関連する若干の私見を述べさせていただくこととしたい.