著者
吉田 文久
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

現在英国の17箇所の町、村に残存する民俗フットボールのうち、14箇所のゲームの実態をできる限り正確に記録し、それらのゲームを類似性、多様性の視点から整理した。また、それらが近代化せず、存続した意味について考察した。ゲームが残存する根底には、それを近代スポーツの発展史上に位置づけるのではない、固有の意味、つまり強い伝統維持の意識、地域のアイデンティティー形成のための有効的手段という意味があった。特に儀式化されているゲームは地元の名士や長老、かつての勝者をメンバーとする独自の委員会によって組織的に運営されている。民俗フットボールは、近代スポーツからそぎ落とされていったスポーツ本来の楽しみ方を教えてくれる。
著者
吉田 文久
出版者
日本福祉大学福祉社会開発研究所
雑誌
現代と文化 : 日本福祉大学研究紀要 = Journal of Culture in our Time (ISSN:13451758)
巻号頁・発行日
vol.135, pp.23-40, 2017-03-31

本研究は,イングランドに残存する民俗フットボールの特徴,さらにそれらの変容について明らかにすることを目的とする. 筆者はこれまで,現地での調査をもとに,英国スコットランドに残存する民俗フットボールの特徴をその多様性と類似性の視点から整理し,公表してきた.そして,イングランドに残存する10 箇所のゲームを調査し終えたことから,本研究では,スコットランドのゲームの整理と同様の視点,手続きを用いて,イングランドに残存するゲームの多様性・類似性,そして,それらの変容について考察した. その結果,①イングランドに残存する民俗フットボールには,いくつかのゲーム間に類似部分はあるものの,スコットランドのような共通性は乏しく,その町や村に独自の形で存続している②メディアにも取り上げられ,プレイヤーも数百人に及ぶゲームがある一方で,セレモニーだけを残すという形骸化したゲーム,そして消滅の可能性を予期させるゲームがあり,存続のために担い手の確保が課題となり,そのための策に苦慮している ③スコットランド同様に,イングランドに残存するゲームは,過去のゲーム様式を存続させることに固執することなく,近代化に順応しながらゲームを変容させることで,生き残りを図っている ④ただし,ゲームは変容しながらも,従来の伝統的な様式を守り続けるゲームから近代的要素を多く取り入れたゲームまで存在することから,イングランドに残存する民俗フットボールは現在多様な姿で存続しているということが明らかになった.