著者
越野 裕太 石田 知也 石田 和宏
出版者
The Society of Japanese Manual Physical Therapy
雑誌
徒手理学療法 (ISSN:13469223)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.11-17, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
16

〔目的〕本論文の目的は,足関節・足部骨折症例に対する徒手療法が足関節背屈可動域に与える効果を,システマティックレビューおよびメタアナリシスによって明らかにすることとした。〔方法〕5つのデータベースを用いて2022年7月までの論文を検索およびスクリーニングを行い,足関節・足部骨折症例に対する徒手療法の介入が足関節背屈可動域に与える効果を研究した無作為化比較試験を特定した。背屈可動域への効果を徒手療法群と対照群で比較するためにメタアナリシスを実施した。〔結果〕3つの論文が採用され(計172名),介入内容は関節モビライゼーションが主だった。背屈可動域への効果に関して徒手療法群と対照群に有意差を認めなかった(標準化平均差 0.05; 95%信頼区間 -0.50, 0.60)。〔結論〕足関節・足部骨折症例に対する関節モビライゼーションは背屈可動域の有意な改善効果を認めなかった。今後質の高い研究が必要であると考えられた。
著者
伊藤 雄 松本 尚 ⼭⼝ 聖太 ⽯⽥ 知也 末永 直樹 ⼤泉 尚美
出版者
一般社団法人 日本運動器理学療法学会
雑誌
運動器理学療法学 (ISSN:24368075)
巻号頁・発行日
pp.202105, (Released:2022-07-08)
参考文献数
35

【⽬的】鏡視下腱板修復術(以下,ARCR)後に装具固定中に退院することが再断裂率,健側・患側肩関節機能に与える影響を調査すること。【⽅法】ARCR 術後の65 歳以上の⼥性91 名を装着固定中に⾃宅退院した退院群48 名,装具除去まで⼊院を継続した⼊院群43 名に分類し,術前および術後各時期における肩関節可動域,等尺性筋⼒,肩機能スコア,再断裂率を健側,患側共に⽐較検討した。【結果】再断裂率および術後3 ヵ⽉の他動屈曲,外転,2nd 外旋可動域を除いた肩関節可動域において術前,術後各時期で両群間に有意差を認めず,術後6,12 ヵ⽉時の肩・肘関節筋⼒,肩機能スコアにおいて退院群で有意に良好であった。【結論】安全なADL,セルフエクササイズ実施⽅法を指導して装具固定中に退院することは,再断裂,関節可動域制限のリスクを増加することなく,良好な肩関節機能を得ることができる可能性が⽰された。
著者
越野 裕太 山中 正紀 石田 知也 武田 直樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Cb1149, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 最も一般的なスポーツ損傷である足関節内反捻挫が生じる一因として接地時の不適切な足部肢位が考えられている.また,足関節内反捻挫の後遺症である慢性的な足関節不安定性(Chronic ankle instability:CAI)を有する者では着地動作中の接地時に足関節運動が変化していることが報告されている.この変化した足関節の肢位をもたらす一因として変化した神経筋制御の存在が示唆されているが,接地前における足関節周囲筋の前活動が足関節の肢位に影響を与えるか否かは不明である.よって,本研究の目的は健常者における着地動作中の接地前における足関節周囲筋活動と足関節運動との関係性を調査することとした.【方法】 下肢に骨折・手術歴および足関節内反捻挫の既往がない健常成人9名18脚(男4女5)を対象とした.動作課題は,30cm台上で非計測肢で片脚立位をとり,そこから前下方に位置する床反力計(Kistler社製, 1200Hz)へ,計測肢で着地する片脚着地動作とした.赤外線カメラ6台(Motion Analysis社製,200Hz)を用いて,骨盤・下肢に貼付した反射マーカー25個の着地動作中の三次元座標を記録した.筋電計(日本光電社製,1200Hz)を用いて,着地動作中の長腓骨筋(PL),前脛骨筋(TA),腓腹筋内側頭(GM)の筋活動を導出し,各脚成功3施行を記録した.初期接地は垂直床反力が初めて10N以上となった瞬間とし,初期接地前100msec間における各筋の筋電積分値を算出し,それぞれ最大等尺性収縮中の筋活動によって標準化した.さらにPL積分値に対するTA積分値の割合をTA/PL比,GM積分値に対するTA積分値の割合をTA/GM比として接地前100msec間における筋活動比を算出した.解析ソフトSIMM(MusculoGraphics社製)を用いて,足関節背屈・内反角度を算出した(背屈・内反を正とした).Pearsonの積率相関係数を用いて接地前の各筋電積分値,各筋活動比と接地時の足関節角度との関係性を評価した(P<0.05).【倫理的配慮、説明と同意】 被験者には口頭と紙面により説明し、理解を得たうえで本研究への参加に当たり同意書に署名して頂いた.また本研究は,本学院倫理委員会の承認を得ている.【結果】 初期接地時の肢位は平均して足関節底屈・軽度外反位であった.接地前100msec間のTA積分値は足関節内反角度と有意な正の相関を認めた(R=0.475,P=0.046).またGM積分値は足関節背屈角度と有意な正の相関を認めた(R=0.583,P=0.011).TA/PL比とTA/GM比は足関節内反角度とそれぞれ有意な正の相関を認めた(それぞれR=0.561,P=0.016,R=0.588,P=0.010). 【考察】 着地動作中の接地前における足関節周囲筋活動は接地時の足関節肢位に関連することが示唆された.TAは足関節を背屈させる他に内反させる機能を有するため,接地前のTAの筋活動が大きいほど接地時の足関節内反角度が大きかったと考えられ,TAの過剰な活動は足関節内反捻挫にとって脆弱な肢位を導き得ると考えられる.さらにTA/PL比とTA/GM比が大きいほど接地時の足関節内反角度が大きかった.この結果は接地前の筋活動バランスが接地時の足関節の肢位に影響を与えることを示唆しており,PLおよびGMの筋活動は足関節内反角度の制御にとって重要な役割を担っている可能性が考えられる.GMの足関節前額面運動に対しての機能に関しては一致した見解が得られていないが,足関節を外反させる機能を有するPLの接地前筋活動は足関節内反捻挫を予防するために不可欠であると考えられている.本研究の結果はこの考えを支持するものである.また,GMは二関節筋であり,足関節を底屈させる他に膝関節を屈曲させる機能を有する.足関節の背屈に連動して膝関節の屈曲が生じるため,GMの接地前筋活動が大きいほど接地時の足関節底屈角度が小さいという関係性を認めたのかもしれない.先行研究はCAIを有する者では着地動作中の接地前後において足関節運動が変化していることを明らかにしたが,足関節運動がなぜ変化しているのかについては未だ不明である.本研究は健常者を対象としたが,CAIにおける接地前後の変化した足関節肢位の一因として接地前筋活動が関連している可能性がある.足関節内反捻挫の予防において,特に足関節不安定性を有する者では,足関節周囲の筋バランスを考慮してアプローチすることが,着地動作時の変化した足関節肢位を修正する上で重要であると考える.【理学療法学研究としての意義】 着地動作において急速かつ過度な足関節回外により生じる足関節内反捻挫を予防するためには接地前の筋活動が不可欠であると考えられている.本研究は足関節内反捻挫の予防的介入において,さらにはCAIにおける変化した動態のさらなる解明において有用な情報を提供すると考える.