著者
和泉 徹彦 イズミ テツヒコ
雑誌
嘉悦大学研究論集 = KAETSU UNIVERSITY RESEARCH REVIEW
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.23-41, 2015-03-19

保育所の待機児童解消は、安倍政権における経済成長戦略の中で女性の活躍する社会づくりの前提とされ、いわば国策として全国市区町村が待機児童ゼロを目標とするように迫られている。特に都市部では、待機児童を解消するために保育所整備を精力的に進めているが、保育所の新設が周辺住民の潜在的な保育サービス需要を掘り起こしてしまい、定員は増えているのに待機児童が減らない状況が起こっている。今回、政令指定都市を対象に調査を実施し、待機児童、隠れ待機児童、保育所入所率などを確認した。調査からは、公表している待機児童から除外されている隠れ待機児童が多い実態が明らかになった。待機児童ゼロを宣言している政令指定都市のうち、新潟市は就学前児童に対する保育所入所児が過半数を超えており、潜在的需要を掘り尽くした結果であることが分かった。一方で、隠れ待機児童が多く保育サービス需要の存在を隠している自治体もあった。この調査結果を受けて、保育所整備を続けて待機児童や潜在的需要を解消するためにはどれくらいの財政支出が必要なのかを試算した。100人定員の保育所を新たに建設する場合、当初2年間に1億9千万円の補助金が投入され、3年目以降は毎年1億3千万円の運営費がかかり、待機児童は最大で40人解消できる。待機児童や潜在的需要に対してこの条件を各市に当てはめて試算している。
著者
和泉 徹彦 イズミ テツヒコ Tetsuhiko Izumi
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.15-39, 2010-03-18

2009 年に世界で大流行した新型インフルエンザは豚インフルエンザ由来のH1N1 ウイルスであった。事後的に季節性インフルエンザと比較して毒性が高くなかったことが判明したものの、致死性の高い新型インフルエンザを想定して策定された即応計画に基づいた対応がとられた。即応計画は市民の生命安全と社会経済活動の継続を目的として策定されていた。時間の経過とともに社会経済活動に大きな影響を与える措置が見送られた。日本では当初、地域全体の集団感染防止を目的とした休校措置等がとられたが、その後は学校単位での学級閉鎖・学年閉鎖といった対応に改められた。イギリスではかかりつけ医(GP)制度があるため、抗インフルエンザ薬投与が有効な48 時間以内の受診が困難である。そのため、「国家新型インフルエンザサービス」を稼働させて医療機関の受診無く抗インフルエンザ薬を入手可能なルートが開設された。ワクチン接種開始は想定通り約6 ヶ月を要しており、それまでに非薬物的な手段での感染防止が重要である。つまり、新型インフルエンザが認知されてからワクチン接種まで感染のピークを遅らせるような対策が求められる。
著者
和泉 徹彦 イズミ テツヒコ Tetsuhiko Izumi
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.19-34, 2011-10-26

大学改革の文脈に沿ったキャンパス内通貨を構想するとき、それは国民通貨に対して「弱いお金」である地域通貨と同類の目標設定や課題克服を迫られることになる。学生個人がコミュニケーション力やキャリア形成につながる能力開発を支援する役割が期待されるが、流通形態・手段の設計次第で何度も繰り返し使われる複数回流通が可能にもなるし、大学から学生への一方通行にもなる。大学における3つの先行事例を研究することで、その得失を明らかにする。嘉悦大学において正課活動及び正課外活動を支援するためのキャンパス内通貨を導入する試案を検討する。様々な条件を考慮した上で、学生証に内蔵されたICカードをカギとするサーバ型の流通手段が望ましい。地域通貨が死蔵・退蔵されるのでは導入する意味が失われてしまうので、複数回流通させ流通速度を高める設計が重要である。学生個人がポイントをためるだけではなく学生団体・プロジェクトに寄付して活動に参加する、さらには地域商店街とも連携してスケールを拡大していくという将来を描く。大学内では既に予算化されている学生アルバイトや報奨金制度、そして学友会予算等を組み替えることでキャンパス内通貨の原資は確保可能である。
著者
"遠山 緑生 白鳥 成彦 大久保 成 木幡 敬史 和泉 徹彦 田尻 慎太郎" "トオヤマ ノリオ シラトリ ナルヒコ オオクボ ナル コワタ タカシ イズミ テツヒコ タジリ シンタロウ" Norio "Toyama Naruhiko Shiratori Naru Okubo Takashi Kowata Tetsuhiko Izumi Shintaro" Tajiri
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.67-88, 2012-03-20

嘉悦大学では、デジタルネイティブ世代へのICT リテラシー教育内容を再検討し、2010 年度からの新カリキュラムの主要科目としてICT スキルズ・ICT ツールズ・ICT メディア・ICTコモンズの4 科目を開講した。この4 科目は「デジタルネイティブ世代を意識した、コンピュータ<で>教えるICT 教育」をコンセプトとする。4 科目全体の目標は、いわゆる初年次教育の一環として、PC やネットの利用をきっかけとしつつ、広く知的生産において必要とされるリテラシーの育成と、知的生産を通じたコミュニケーションの経験を積んでもらうことにある。ICT を活用した情報の<入力-編集-出力>という一連のプロセスを標準形とし、これを4 科目それぞれの特色を持つ様々な形のプロジェクト課題として実践する。本論文ではこれらの科目に関して、その概要と目標を述べるとともに、現在の科目編成に至る過程で行われた議論をまとめ、紹介する。