著者
佐藤 未央子 サトウ ミオコ Satoh Mioko
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.80, pp.38-52, 2014-03

谷崎の映画テクストをもとに、明治四十四年から大正五年に谷崎が受容した映画の概要と評価を確認し、いかなる要素が作品に抽出されているか分析した。映画の倒錯性、非現実性を好んだ谷崎は、映画タイトルを用いた修辞によって作品世界に同様の性質を付与していた。また谷崎の映画テクストにおいて特徴的な要素である俳優に対するまなざしは、この時期既に萌芽していた。更に、谷崎の映画受容とその記録からは、第一次世界大戦前におけるヨーロッパ映画の隆盛を看取できた。
著者
佐藤 未央子 サトウ ミオコ Sato Mioko
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 (ISSN:03898717)
巻号頁・発行日
no.82, pp.89-103, 2015-03

大正中期における谷崎潤一郎の映画受容を分析するにあたり、本稿では「痴人の愛」(大正十三年~大正十四年)に焦点を当てた。ナオミが二重写しにされたさまざまな女優とその評価や位置付けについて、関連資料を用いて具体的に考察し、小説における当時の文脈を復元した。また映画観客としてのナオミの主体性や、「痴人の愛」が映画界に対して二重に同時代性を持つことを論じた。