著者
花澤 寿 ハナザワ ヒサシ Hanazawa Hisashi
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.269-273, 2010-03

現在までに提出されている摂食障害の進化論的仮説を概観し,進化心理学・進化精神医学による摂食障害の理解と治療の可能性について検討した。主要な仮説として,1. reproductive supression hypothesis 生殖抑制説 2. sexual competition hypothesis 同性間競争説 3. flee from famine hypothesis 飢餓環境からの移動のための適応説 4. Gatward による統合説をとりあげた。いずれの仮説も,現時点では実証困難であるが,摂食障害の不可解な特徴をある程度説明することに成功しており,停滞状態にある摂食障害の病態理解と治療法にあらたな展開をもたらす可能性が示唆された。
著者
花澤 寿 ハナザワ ヒサシ Hanazawa Hisashi
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.223-225, 2007-02

Anorexia nervosa の中心的心性とされてきた「成熟拒否」の心理の時代変遷を検討するために,古典的症例(Janetの症例Nadiaおよび下坂の症例)と,自験例を比較し考察した。その結果,古典例の成熟拒否が,性的存在としての大人の女性像への恐怖という心性を色濃く有していたのに対し,現代の症例は,成熟した女性という明確な未来像を恐怖するのではなく,今その時点での自分が変化しつつあること自体に恐怖を抱くという特徴が認められた。