著者
一政 祐輔
出版者
社団法人 プラズマ・核融合学会
雑誌
核融合研究 (ISSN:04512375)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.461-481, 1990-12-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
88

Recent topics in the following studies of biological effects of tritium are reviewed: 1) tritium level in the environment, 2) mechanism of biological conversion of environmental molecular tritium, 3) tritium content of Japanese bodies and foods, 4) uptake and metabolism of molecular tritium in mammals, 5) absorption rate of tritiated water in mammals, 6) metabolism of organically bound tritium in animals, 7) enhanced excretion of tritium from body, 8) RBE of tritium.
著者
一政 祐輔 岡田 重文 東郷 正美 上野 陽里 松原 純子 石田 政弘
出版者
茨城大学
雑誌
エネルギー特別研究(核融合)
巻号頁・発行日
1986

本年度の研究成果を以下に述べる。1.トリチウムガス・トリチウム水の生体内代謝・排泄促進の解明研究では、(1)トリチウムガスのラットへの取り込みは、雰囲気の水蒸気濃度や軽水素濃度には殆んど影響されない。(2)トリチウムガスの酸化はラット腸内の嫌気性菌によるところが多いので、サルおよびヒトの糞便でも調べたところ、サルおよびヒトの糞便もトリチウムガスをラットと同程度に酸化することを見出した。(3)トリチウムガスをラットに投与する前に、嫌気性菌に作用スペクトラムを持つ抗菌剤や抗生物質を前もってラットに投与しておくと、トリチウムガスの体内酸化が顕著に抑制されることを見出した。(4)体内に取り込まれたトリチウムを排出促進するには、リンゲル液,グルコース液,KN補液の静脈内投与、およびリンゲル液と利尿剤の同時投与が効果的であり、組織結合型トリチウム濃度を著しく低下させることを明らかにした(以上、一政・秋田)。2.食物連鎖によるトリチウムの体内取り込み研究では、(1)トリチウムで標識したアミノ酸をラットに投与して組織の細胞核内および核外の蛋白質当りのトリチウムの比放射能を測定すると、両者とも略1に近い値である。(2)経口投与実験で確認する必要があるが、食品中のトリチウムで標識されたアミノ酸成分に関する限り、体内に取り込まれたトリチウムによる細胞内の線量は組織の平均トリチウム濃度に略比例することを明らかにした(以上、石田・斉藤)。3.ヒトのトリチウム代謝研究では、(1)人体および動物の組織を200〜300g焼却し組織中のトリチウム濃度を測定し得る前処理装置が完成した。(2)40献体の脳,肺,肝,腎,脾臓がサンプリングされ、その内の20献体の臓器の平均トリチウム濃度は76.6±78.9pC/l,2.83±2.92Bq/lであることを明らかにした(以上、上野)。飲料水のトリチウム濃度の測定用に約300サンプルが準備された(東郷)。
著者
一政 祐輔 岡田 重文 東郷 正美 上野 陽里 松原 純子 石田 政弘
出版者
茨城大学
雑誌
核融合特別研究
巻号頁・発行日
1987

本研究は核融合実用炉が運転される際にヒトがトリチウムの放料線によって受ける被曝線量を最小限に低減させる方法を確立することを目的とした. 成果の概要を以下に述べる.1.トリチウムガス(HT),トリチウム水(HTD)からのトリチウム(T)の体内取り込み及びその阻止法の解明に関する研究では, (1)ラットがHTに暴露された時, 血中T濃度は暴露後2時間で最高値に達し, その後2.9日の生物学的半減期で減少するが, クリンダマイシンを投与することによってこの半減期は1.7日になることを明らかにした. (2)ラット, ヒトの糞便から分離した微生物の中からHT酸化活性を持つ菌について抗生物質に対する抗菌性を調べたところ, クリンダマイシンが強く, 他にリンコマイシン, エリスロマイシン等であることをみいだした. (3)HTOを投与したラットに断続的にリンゲル液, グルコース液を点滴してラットのT濃度の変化を調べた. リンゲル液やグルコース液の点滴は尿中のTの減少を促進し, 25日目では対照区の濃度の10%までに低下させることが出来た. 75日目の組織中T濃度及び組織結合型のT濃度も減少がみられた(一政・秋田).2.農水畜産物の食品のTの許容濃度を試算する為の研究では(1)マウスの実験データに基づきモデル計算式を作った. これによりTによる線量の推定が可能になった. このモデルの正当性を検証するにはさらに種々のR値をもつ食品を長期間投与する研究が必要であるとの結論に達した(石田・斉藤). また尿中T濃度をTのリスク評価に於ける指標とするのは適当であることを追証し(松原), 組織結合型T濃度の指標には体毛中T濃度で推定し得ることを示した(武田). 日本人のTのリスクを評価する際には日本人のバックグラウンド値が必要になるが組織結合型Tは肝で750pCi/l,筋では600pCi/lであること(上野), 東京の飲水T濃度はほぼ0.47〜80.3pCi/lの範囲であった(東郷). 以上のように本年度の研究計画は一応達成された.