著者
藤田 保幸 砂川 有里子 田野村 忠温 松木 正恵 中畠 孝幸 山崎 誠 三井 正孝(三ツ井 正孝) 江口 正
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、研究代表者らがこれまでに『現代語複合辞用例集』などの形で積み上げてきた複合辞についての記述研究をふまえ、そうしたそれまでの成果を理論的にもまた個別形式の記述においても深めていくことを意図して企画したものであり、補助金の交付期間中にも、(1)複合辞についての従来の研究を見直して、問題点を明らかにするとともに、(2)複合辞各形式についての各論的記述を深める、という点を中心に研究が進められた。まず、第一点の従来の研究の見直しと問題点の明確化という点については、研究代表者藤田により、本研究の初年度に「複合辞の記述研究の展望と現在」と題する研究発表が行われ、現段階の問題点が総括されたほか、研究分担者松木により複合辞研究史についての一連の論文が発表され、学説史の総括が試みられた。第二点の各論的記述の深化については、研究期間内にかなりの成果を上げることができた。具体的に取り上げられた形式は、格助詞的複合辞(もしくは副助詞的複合辞)としては、「について」「において」「をめぐって」「に限って」「によって」(「によっては」との比較を中心に)、接続助詞的複合辞では「として」「からには」「ばかりか」「くせに」「につれて」「にしたがって」「うえで」「こともあって」「ことだし」、助動詞的複合辞としては、「どころではない」などで、それぞれについて各論的研究論文が公にされ、個々の形式の意味・用法に関する詳細な知見が得られた。そのほか、複合辞に関連して、複合辞と助詞「は」の関わりやコピュラ・形式名詞、韓国語・中国語との複合辞的形式の対照などについても研究が進められ、それぞれその成果は論文として公にされた(上記には、研究協力者による研究成果をも含む)。これまでの複合辞研究を記述的に一段深化させるという点で、本研究は相応の成果を上げることができたものと考える。