- 著者
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朱 桂栄
砂川 有里子
- 出版者
- 公益社団法人 日本語教育学会
- 雑誌
- 日本語教育 (ISSN:03894037)
- 巻号頁・発行日
- vol.145, pp.25-36, 2010 (Released:2017-03-21)
- 参考文献数
- 13
砂川・朱(2008)は,学術的コミュニケーション能力の向上を目指して中国の大学院で実践したジグソー学習法による授業を通じ,大多数の学生に「独習型」から「協働型」へ,「受身型」から「自主型」への意識の芽生えが確認できたことを報告している。 本稿では,同じ学生に対して行ったインタビューデータを分析し,上記の意識変容が生じた要因を,活動間の有機的な連携という観点から考察する。分析の結果,以下の点が明らかとなった。①活動の過程で生じる情報差が学生の参加動機を強め,協力し合う環境作りに役立った。②活動間の有機的連携が個々の活動目的を明確にし,自主的な関わりの必要性を自覚させた。③活動中に生じた問題が次の活動の成果につながる要因として積極的な役割を果たした。すなわち,ジグソー学習法がもたらす活動間の有機的連携が,学生に自主的・協働的な研究態度の必要性を自覚させる要因となったことが判明した。