著者
田野村 忠温
出版者
関西大学大学院東アジア文化研究科
雑誌
東アジア文化交渉研究 = Journal of East Asian cultural interaction studies (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.61-79, 2020-03-31

The country name '独逸', which reads 'doitsu' and denotes Germany, is an exceptional instance among the large inventory of Kanji transliterated foreign names and terms in Japanese. It is partly because '独逸', unlike many of the other Kanji transliterated place names, was not borrowed from China, but created in Japan, and partly because dozens of different Kanji transliterations were attempted before '独逸' was finally selected as the standard. This article will analyze and clarify the background and process of the establishment of '独逸'. The exceptional nature of '独逸' will be argued to result from the historical social condition of Japan, which was under self-imposed national isolation since the seventeenth century, as well as from the peculiarity of Kanji transliterations in Japanese in general as compared with those in Chinese.
著者
田野村 忠温
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.18, pp.p194-216, 1990-03

数詞と助数詞がどのような場合にどのような形で表現されるかということは,日本語教育にたずさわる者が心得ておかなければならない基本的な知識の一つであろう.それだけに,この問題についてはすでに日本語教育の様々な現場で分析が行われているものと思われるが,詳しい記述はあまり公表されていないようである.そこで,ここでは,現代日本語の数詞と助数詞の形態論について筆者が整理してみたところを述べることにする.日本人学生に対する概説のために用意した資料に加筆を施したもので,遺漏もあることと思われるが,上述の事情を考えればあながち無意味でもなかろうと判断し,このような形で発表する次第である.なお,数詞と助数詞の使用の実態には,世代,方言,個人などによるゆれが少なくない.ゆれのある言い方については,大学生・短大生を対象に調査を行い,その結果を語形決定の参考資料とした.
著者
田野村 忠温 Tadaharu TANOMURA
出版者
国立国語研究所
雑誌
日本語科学
巻号頁・発行日
no.9, pp.9-32, 2001-04

現代語におけるサ変動詞の活用のゆれについては,古くは湯沢(1944)などに記述が見られ,サ変から五段または上一段への活用型の移行としてゆれを捉え得ることが指摘されている。しかし,その活用型の移行の程度は動詞や活用形によるばらつきが大きく,湯沢以後の研究においてもサ変動詞の活用のゆれは予測不能の無秩序な現象と見なされてきた。この小論では,『朝日新聞』6年分の電子テキストに見られるサ変動詞の形態のゆれを調査・分析し,サ変から五段への変化については,動詞による五段化の遅速はかなりの範囲にわたって音韻的な考慮によって説明が付くこと,そして,そうした観点で説明できない現象の側面の一部についても他の要因が複合的に作用した結果として解釈できることを明らかにする。これに対して,サ変から上一段への変化については,動詞によるばらつきを明確に説明する原理は残念ながら見出しがたいことを述べる。また,サ変動詞の活用のタイプの網羅的な記述を意図し,従来あまり取り上げられることのなかった「欲する」「なくする」「進ずる」「魅する」などの例外的な性格を有する動詞をも考察の対象とし,サ変動詞全体におけるそれらの位置付けを明らかにする。
著者
田野村 忠温 Tadaharu TANOMURA
出版者
国書刊行会
雑誌
日本語科学
巻号頁・発行日
vol.25, pp.91-103, 2009-04
被引用文献数
1

大阪大学この数年来,コーパスに基づく日本語研究を取り巻く環境は急速な進展を見せている。利用可能な電子資料の面で言えば,広義コーパス・狭義コーパスともに選択の幅が広がりつつある。この小論では,最近利用可能になった2種類の大規模な電子資料-国会会議録のデータと,筆者の試作した巨大なWebコーパス-を用いて一字漢語複合サ変動詞の活用のゆれの問題の主要部分を調査・分析する。この問題については過去の拙論で朝日新聞6年分の記事データに基づく分析を行ったことがあるが,そのときには確かめようのなかった活用のゆれの通時変化の様相を観察することができるとともに,筆者が「属する」類と呼んだ一群の動詞については五段活用化の進行の程度に基づく下位分類をさらに精密化することができることを示す。
著者
田野村 忠温
出版者
関西大学大学院東アジア文化研究科
雑誌
東アジア文化交渉研究 = Journal of East Asian cultural interaction studies (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
no.11, pp.3-26, 2018-03

文部科学省グローバルCOEプログラム 関西大学文化交渉学教育研究拠点[東アジアの言語と表象]
著者
田野村 忠温 Tanomura Tadaharu
出版者
大阪大学大学院文学研究科日本語学講座
雑誌
阪大日本語研究 (ISSN:09162135)
巻号頁・発行日
no.32, pp.25-35, 2020-02

福沢諭吉編訳『増訂華英通語』(1860(万延1)年)の語彙集にカレーの項目が含まれ、curry の発音が「コルリ」と記されているという事実が多くの人の短絡的判断を招き、福沢が「カレー」の語を日本に初めて伝えたとする説が─さらには、福沢がカレーを日本に伝えたとか、カレーの調理法を伝えたといった話まで─広く流布している。しかし、『増訂華英通語』の理解を前提として言えば、それらの説はすべて誤っている。ここでは、『増訂華英通語』の「コルリ」の本性を明らかにし─その過程で、同書にカレーが「加兀」と書かれているという話の誤りも明らかになる─、併せて関連するいくつかの問題に考察を加える。
著者
田野村 忠温
出版者
関西大学大学院東アジア文化研究科
雑誌
東アジア文化交渉研究 = Journal of East Asian cultural interaction studies (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.3-26, 2018-03-31

The etymology and history of the Japanese/Chinese name Eigo/Yingyu for the English language has remained barely examined. This article will demonstrate that Eigo/Yingyu became the conventional name for English as late as in the second half of the nineteenth century, and that thitherto there were various names for English both in Japanese and in Chinese. It will also be discussed whether or not one of the two languages exerted influence on the other with respect to the creation and/or spread of Eigo/Yingyu.
著者
田野村 忠温
出版者
関西大学大学院東アジア文化研究科
雑誌
東アジア文化交渉研究 = Journal of East Asian cultural interaction studies (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
no.13, pp.61-79, 2020-03-31

The country name '独逸', which reads 'doitsu' and denotes Germany, is an exceptional instance among the large inventory of Kanji transliterated foreign names and terms in Japanese. It is partly because '独逸', unlike many of the other Kanji transliterated place names, was not borrowed from China, but created in Japan, and partly because dozens of different Kanji transliterations were attempted before '独逸' was finally selected as the standard. This article will analyze and clarify the background and process of the establishment of '独逸'. The exceptional nature of '独逸' will be argued to result from the historical social condition of Japan, which was under self-imposed national isolation since the seventeenth century, as well as from the peculiarity of Kanji transliterations in Japanese in general as compared with those in Chinese.中谷伸生教授古稀記念号
著者
田野村 忠温 Tanomura Tadaharu タノムラ タダハル
出版者
大阪大学大学院文学研究科日本語学講座
雑誌
阪大日本語研究 (ISSN:09162135)
巻号頁・発行日
no.33, pp.33-60, 2021-02

コーヒーの名称の漢字表記「珈琲」は日本で作られたと多くの言語研究者が言う。そして、その考案者を蘭学者の宇田川榕庵として特定する説まであり、通俗書やインターネットを通じて広く流布している。しかし、そうした通説、俗説はすべて正当な根拠を欠く想像に過ぎない。言語の歴史を想像に頼って論じることはできない。ここでは、資料の調査と分析に基づいて、「珈琲」という表記の現在確かめ得る最初期相を明らかにするとともに、それがその後日中両国でたどった歴史を跡付ける。
著者
田野村 忠温 Tanomura Tadaharu タノムラ タダハル
出版者
大阪大学大学院文学研究科 日本語学講座 現代日本語学研究室
雑誌
現代日本語研究
巻号頁・発行日
no.12, pp.18-37, 2020-12

動詞-名詞という形をした日本語の漢語複合名詞には,"N をV"などの動詞句に相当する意味と"V したN"などの連体修飾句に相当する意味の両方を表すものがある。しかし,前者の意味しか表さないものもあれば,後者の意味しか表さないものもある。複合名詞の事例ごとに事情が異なり,全体としてきわめて複雑な様相を呈しているが,その中にも一定の原理があるのではないかという見込みに基づき,動詞-名詞型漢語複合名詞の意味のあり方を統一的に説明するための観点を仮説として提示する。ここで論じる問題を大きく支配しているのは,中国語を範とした語形成と日本語の感覚による再解釈という2つの要素である。現代日本語の共時的な分析では見えてこない現象の論理を,通時的な要素を加えた考察を通じて探ってみたい。
著者
前川 喜久雄 山崎 誠 松本 裕治 傳 康晴 田野村 忠温 砂川 有里子 田中 牧郎 荻野 綱男 奥村 学 斎藤 博昭 柴崎 秀子 新納 浩幸 仁科 喜久子 宇津呂 武仁 関 洋平 小原 京子 木戸 冬子
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

当初の予定どおりに、5000万語規模の現代日本語書籍均衡コーパスを構築して2011年に公開した。同時に構築途上のコーパスを利用しながら、コーパス日本語学の確立にむけた研究を多方面で推進し、若手研究所の育成にも努めた。現在、約200名規模の研究コミュニティーが成立しており、本領域終了後も定期的にワークショップを開催するなど活発に活動を続けている。
著者
田野村 忠温
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.152, pp.123-109,69, 1988
著者
藤田 保幸 砂川 有里子 田野村 忠温 松木 正恵 中畠 孝幸 山崎 誠 三井 正孝(三ツ井 正孝) 江口 正
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、研究代表者らがこれまでに『現代語複合辞用例集』などの形で積み上げてきた複合辞についての記述研究をふまえ、そうしたそれまでの成果を理論的にもまた個別形式の記述においても深めていくことを意図して企画したものであり、補助金の交付期間中にも、(1)複合辞についての従来の研究を見直して、問題点を明らかにするとともに、(2)複合辞各形式についての各論的記述を深める、という点を中心に研究が進められた。まず、第一点の従来の研究の見直しと問題点の明確化という点については、研究代表者藤田により、本研究の初年度に「複合辞の記述研究の展望と現在」と題する研究発表が行われ、現段階の問題点が総括されたほか、研究分担者松木により複合辞研究史についての一連の論文が発表され、学説史の総括が試みられた。第二点の各論的記述の深化については、研究期間内にかなりの成果を上げることができた。具体的に取り上げられた形式は、格助詞的複合辞(もしくは副助詞的複合辞)としては、「について」「において」「をめぐって」「に限って」「によって」(「によっては」との比較を中心に)、接続助詞的複合辞では「として」「からには」「ばかりか」「くせに」「につれて」「にしたがって」「うえで」「こともあって」「ことだし」、助動詞的複合辞としては、「どころではない」などで、それぞれについて各論的研究論文が公にされ、個々の形式の意味・用法に関する詳細な知見が得られた。そのほか、複合辞に関連して、複合辞と助詞「は」の関わりやコピュラ・形式名詞、韓国語・中国語との複合辞的形式の対照などについても研究が進められ、それぞれその成果は論文として公にされた(上記には、研究協力者による研究成果をも含む)。これまでの複合辞研究を記述的に一段深化させるという点で、本研究は相応の成果を上げることができたものと考える。