著者
伴埜 行則 並河 幹夫 三輪 真理子 伴 創一郎 折戸 太一 瀬村 俊亮 川上 雅弘 土井 直也 三宅 司郎 石川 和弘
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.178-187, 2013-06-25 (Released:2013-07-18)
参考文献数
29
被引用文献数
1 3

チェルノブイリ原子力発電所事故以後,京都市内に流通する食品中の放射性ヨウ素(131I)および放射性セシウム(137Csおよび134Cs)のモニタリングを実施してきたが,2011年3月の福島原子力発電所の事故は,調査の重要性を改めて認識させることとなった.福島原子力発電所事故前後において検出した核種と検出率,および濃度について検討した.検査にはゲルマニウム半導体検出器を用いた.福島原発事故以前は,輸入品,国産品をモニタリングの対象とした.核種としては137Csのみが検出された.魚介類からの検出頻度は約70%であり,濃度は最高でも1.7 Bq/kgであった.乾燥キノコを除くキノコ類からの検出頻度は,83%と高く,濃度の最高値は7.5 Bq/kgであった.野菜類は,207検体のうち2件のみ(根菜を除く)で検出したが濃度も明らかに低かった.福島原発事故以降は,東北・関東地方産の流通食品を検査した.3月23日に中央卸売市場から採取したミズ菜から3,400 Bq/kgの131I,280 Bq/kgの134Cs,および280 Bq/kgの137Csを検出したのをはじめ,3月と4月に検査したすべての葉菜類でこれらの放射性物質を検出した.しかし,11月以降はすべてが不検出となった.魚介類から検出された137Csは,平均で7.9 Bq/kgだった.肉類では,トレーサビリティーによって汚染稲わらを与えられたことが判明したウシの肉からのみ暫定規制値を超える137Csが検出された.また,甲状腺に対するリスクが懸念される131Iは,5月以降すべての試料で不検出となった.基準値を超える食品が京都市内を流通する恐れは,すでにほとんどないと考えられた.
著者
大仲 賢二 小林 直樹 内山 陽介 本田 三緒子 三宅 司郎 小西 良子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.148-156, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
43

漬物に使用される伝統的な4種類の生野菜(キュウリ,白菜,大根,ナス)から分離した乳酸菌(LAB)によるアフラトキシン(AFs)に対する暴露低減効果を調査した.最初に,AFM1との結合能を調べ,各野菜から最も結合率が高いLABを1株ずつ計4株選んだ.選んだ4菌株とAFB1,AFB2,AFG1,AFG2およびAFM1との結合率は,キュウリ由来LABで57.5%~87.9%,白菜由来LABで18.9%~43.9%,大根由来LABで26.4%~41.7%,ナス由来LABで15.0%~42.6%であった.また,キュウリ,白菜,大根およびナスから分離されたLABは,それぞれLactococcus lactis subsp. lactis,Weissella cibaria,Leuconostoc mesenteroides,Leu. mesenteroidesと同定された.さらに胃の中を模した酸性条件下で4菌株とAFM1との結合能を測定したところLABの生菌数は減少したが結合能はいくつかの菌株で増加し,これらの菌株はAFsとの結合能を保持していた.動物実験においてキュウリ由来L. lactis subsp. lactisが血清へのAFB1の吸収を有意に阻害することが明らかになった.以上の結果から漬物(浅漬けとぬか漬け)に使用される野菜に生息するLABがAFsと結合能を持ち,AFsに対する暴露低減効果を有すことが示唆された.
著者
山﨑 朋美 三宅 司郎 佐藤 夏岐 平川 由紀 岩佐 精二 成田 宏史 渡辺 卓穂
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.200-205, 2018-10-25 (Released:2018-11-14)
参考文献数
30
被引用文献数
5

アフラトキシンB1, B2, G1, G2(AFB1, AFB2, AFG1, AFG2)汚染の総量を測定するための直接競合ELISAを開発した.開発に当たっては,これらの各AFに同等に近い反応性を示すマウスモノクローナル抗体を用いた.開発した直接競合ELISAの測定範囲は,AFB1が50~230 pg/mL,AFB2が50~270 pg/mL,AFG1が60~390 pg/mL,AFG2が65~700 pg/mLだった.ローストピーナッツを用いて行った総AF添加回収試験の結果,直接競合ELISAは98%の回収率を示した.さらにAFB1, AFB2, AFG1, AFG2のすべてのAFが汚染している4種類の実試料を用いて測定を試みた結果,その認証値と高い相関関係が示唆された.開発した直接競合ELISAは,日本の規制値周辺の総AF濃度を測定するために好適と考えられた.