著者
小林 直樹
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.332-351, 2020 (Released:2020-11-10)
参考文献数
25
被引用文献数
3 4

本稿では,昆虫食習慣のある地域として長野県伊那市を取り上げ,地域の食文化とされる昆虫食について,食用昆虫の採集および流通,消費実態を明らかにし,昆虫食の成立,継続する要件を考察した.アンケート調査の結果,当地域では現在でも多くの住民が昆虫を食べており,昆虫を地域の食材,食文化として認識していた.一方,喫食頻度は低下傾向にあり,食用昆虫の流通構造などにも変化がみられる.伊那市の昆虫食は食用とされる昆虫の種類ごとに異なる特徴をもっており,流通構造などの変化の仕方や変化度合いも昆虫ごとに違いがみられた.今後当地域の昆虫食文化の存続を考えるためには,昆虫を食べない者の多い若い世代の増加による昆虫製品の需要の減少や,域外の原料に頼るかたちとなっている食用昆虫の流通の面に内在するリスクについて,さらに詳しい調査が必要である.
著者
千葉 雅尋 重松 明男 山川 知宏 高橋 正二郎 高畑 むつみ 小林 直樹 太田 秀一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.2154-2160, 2019-10-10 (Released:2020-10-10)
参考文献数
7

65歳,男性.倦怠感で当院を受診した.血液検査にて汎血球減少,LD高値ならびにハプトグロビン低値であり,末梢血に破砕赤血球が認められた.血栓性血小板減少性紫斑病に特有の症状である腎機能障害,動揺する神経症状等はなかったが,血栓性血小板減少性紫斑病を想定して,血漿交換を開始した.後日vitamin B12低値が判明し,vitamin B12の補充を行い,溶血所見及び汎血球減少の改善が認められた.破砕赤血球を伴う巨赤芽球性貧血では血栓性血小板減少性紫斑病と類似した検査所見が認められることが報告されており,pseudo-TTPと呼ばれる.
著者
塚田 武志 小林 直樹
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.31-47, 2011-03-25

言語の包含判定問題とは,与えられた言語 L1 と L2 について L1 ⊆ L2 が成立するか否かを判定する問題であり,理論的な興味の対象であるだけでなく,プログラム検証などへの広い応用を持つ重要な問題である.この問題に関する既知の最も強い結果の 1 つが文脈自由言語と超決定性言語の包含判定の決定可能性である.このオリジナルの証明は,Greibach と Friedman によって与えられている.我々はこの問題に対して,小林らによって提案されている型に基づく言語の包含判定の手法を適用し,決定可能性に対する別証明を与えた.この手法は以下のような利点を持つ.(1) 部分型関係やポンプの補題などのよく知られた概念で理論が展開できる.(2) 型推論を効率的に行う方法は多数提案されており,それらを利用することができる.また,提案する証明は小林らのアイデアを正規言語よりも広いクラスに適用したはじめての例であり,その他の非正規言語クラスへの応用も期待される.
著者
岩間 太 小林 直樹
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.58-64, 2002-03-15

プログラミング言語Javaの仮想機械では,実行前にコードの検証を行い,不正なコードを排除している.しかし,現在の検証器では,並行スレッドによるロックの獲得・解放の整合性に関する検証は行っていない.この問題を解決するため,本研究では,AbadiとStataによるバイトコード検証のため型システムを改良する.新しい型システムでは,各オブジェクトのロックが獲得・解放される順序の情報をオブジェクトの型に付加することにより,ロックの正しい使用を保証する.
著者
小林 直樹
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本年度はまず、すでに我々が提案していた線形論理に基づく並列計算の枠組であるACLを高階に拡張したHACLを提案し、その意味論・型システム等を与え、静的に型づけされた(HACLで書かれた)並列プログラムが実行時に型エラーを起こさない等の基本的な性質を証明した。また、それに基づいたインタプリタの処理系を作成して、HACLの特徴の一つである(多相型をもった)高階プロセスが非常に有効であることをプログラミングを通して確認した。さらに、HACLの上に、インヘリタンスをはじめとする種々の機能を備えた並列オブジェクト指向言語を実現でき、かつそのようにして実現された並列オブジェクト指向言語で書かれたプログラムがHACLの型システムをとおして型推論・型チェックが行なえることを示した。その副産物として、型推論をとおして並列オブジェクトのメソッドのディスパッチが定数コストで行なえるようにコンパイルできることも示した。これらの結果に基づいて実際に、並列オブジェクト指向言語のプログラムからHACLへのトランスレータのプロトタイプも作成した。また、HACLを含めた非同期通信に基づく並列言語の効率のよい実現のために、エフェクト解析の手法を応用した並列プログラムの通信に関する解析を行なう方法を提案し、HACLを通した定式化・基本的な性質の証明・解析システムのプロトタイプの実装を行なった。将来的にはこの静的解析システムをコンパイラに組み込み、並列プログラムの最適化コンパイルに役立てる予定である。上記理論的側面の研究と並行してHACLに基づいた処理系の実装を進めており、現在シングルCPUのワークステーション用のコンパイラのプロトタイプがほぼ完成した状況である。
著者
大仲 賢二 小林 直樹 内山 陽介 本田 三緒子 三宅 司郎 小西 良子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.148-156, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
43

漬物に使用される伝統的な4種類の生野菜(キュウリ,白菜,大根,ナス)から分離した乳酸菌(LAB)によるアフラトキシン(AFs)に対する暴露低減効果を調査した.最初に,AFM1との結合能を調べ,各野菜から最も結合率が高いLABを1株ずつ計4株選んだ.選んだ4菌株とAFB1,AFB2,AFG1,AFG2およびAFM1との結合率は,キュウリ由来LABで57.5%~87.9%,白菜由来LABで18.9%~43.9%,大根由来LABで26.4%~41.7%,ナス由来LABで15.0%~42.6%であった.また,キュウリ,白菜,大根およびナスから分離されたLABは,それぞれLactococcus lactis subsp. lactis,Weissella cibaria,Leuconostoc mesenteroides,Leu. mesenteroidesと同定された.さらに胃の中を模した酸性条件下で4菌株とAFM1との結合能を測定したところLABの生菌数は減少したが結合能はいくつかの菌株で増加し,これらの菌株はAFsとの結合能を保持していた.動物実験においてキュウリ由来L. lactis subsp. lactisが血清へのAFB1の吸収を有意に阻害することが明らかになった.以上の結果から漬物(浅漬けとぬか漬け)に使用される野菜に生息するLABがAFsと結合能を持ち,AFsに対する暴露低減効果を有すことが示唆された.
著者
長尾 大道 小林 直樹 深尾 良夫 冨澤 一郎 樋口 知之
出版者
日本学術会議 「機械工学委員会・土木工学・建築学委員会合同IUTAM分科会」
雑誌
理論応用力学講演会 講演論文集 第61回理論応用力学講演会
巻号頁・発行日
pp.47, 2012 (Released:2012-03-28)

大地震が起こった際には、それによって励起された波動が電離層内を伝搬していくことが、観測的に示されている。著者はこれまでに、固体地球‐大気結合系1次元モデルのノーマルモードを利用した数値シミュレーションにより、2008年に起こった岩手・宮城内陸地震によって励起された気圧変動を説明することに成功した。本研究では同じ手法を用いることにより、やはり同地震の際に菅平のHFドップラー観測で捉えられた電離層の上下変動を、中性大気を伝搬する音波波動として理解できることを示した。講演においては、他の地震の場合に得られたさらに多くの観測点で得られたHFドップラーデータを総合的に解析することにより、大地震によって励起される大気変動の時空間構造を包括的に理解することを目指す。
著者
小林 直樹 五十嵐 淳 田浦 健次朗 渡部 卓雄
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は,本研究代表者が提唱した疑似線形型システムに基づく新しいメモリ管理方式の実現により,プログラミング言語処理系のメモリ管理の信頼性および効率を改善することであった.主要な成果は以下のとおり.・擬似線形型システムに基づく型推論によるメモリの獲得・解放命令の挿入…擬似線形型システムに基づき,プログラム中で用いられる各データが最後に使用される箇所を特定し,その部分にメモリの解放命令を挿入するための方法を確立し,関数型言語MLを対象としてプロトタイプシステムを構築した.・擬似線形型システムに基づくメモリ管理のためのバイトコード言語の設計と実装…上で述べたメモリの獲得・解放命令を挿入したプログラムを実際に実行するためのバイトコード言語を設計し,実装を行った.・通常のメモリ管理の改良と本メモリ管理方式との融合…擬似線形型システムのみでは自動的に管理できないメモリが存在するため,既存のメモリ管理方式であるGCを改良して融合する方法について研究した.主な課題はGC自体の性能,特に並列計算機上のGCの性能をあげること,および疑似線形型に基づくメモリ管理によるダングリングポインタの問題の解決であった.後者については型情報を実行時まで保存し,GC時にこれを用いることによってこの問題を解決した.・線形型解析の資源使用解析への一般化…疑似線形型を拡張し,ファイルやネットワークなど一般の計算資源の使用方法の解析を行うための型システムを構築した.これにより(i)割り当てられたメモリはいずれ解放され,解放後はアクセスされない,(ii)オープンされたファイルはいずれクローズされ,クローズ後は読み書きされない,といった性質が満たされているかを統一的に検証することができる.
著者
柴田 昇 神田 和重 久田 俊記 磯部 克明 佐藤 学 清水 有威 清水 孝洋 杉本 貴宏 小林 智浩 犬塚 和子 金川 直晃 梶谷 泰之 小川 武志 中井 潤 岩佐 清明 小島 正嗣 鈴木 俊宏 鈴木 裕也 境 新太郎 藤村 朋史 宇都宮 裕子 橋本 寿文 御明 誠 小林 直樹 稲垣 泉貴 松本 勇輝 井上 諭 鈴木 良尚 何 東 本多 泰彦 武者 淳二 中川 道雄 本間 充祥 安彦 尚文 小柳 勝 吉原 正浩 井納 和美 野口 充宏 亀井 輝彦 加藤 洋介 財津 真吾 那須 弘明 有木 卓弥 Chibvongodze Hardwell 渡邉 光恭 丁 虹 大熊 直樹 山下 竜二 Liang Guirong Hemink Gertjan Moogat Farookh Trinh Cuong 東谷 政昭 Pham Tuan 金澤 一久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICD, 集積回路 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.15, pp.1-5, 2012-04-16

世界最小の19nmのデザインルールを用いて64Gb多値(2bit/cell)NANDフラッシュメモリを開発した。片側All-bit-Line S/A構成、1plane構成によりチップサイズは112.8mm^2。ビット線バイアスアクセラレーション及び"BC"State-First書込みアルゴリズムにより、書き込みパフォーマンスは15MB/sを実現。プログラムサスペンド機能とイレーズサスペンド機能により、リードレイテンシー時間は大幅に短縮。400Mb/s/pin 1.8Vの高速Toggle mode InterfaceをNANDフラッシュメモリとしては初めて搭載した。
著者
白石 浩章 山田 竜平 石原 吉明 小林 直樹 鈴木 宏二郎 田中 智
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.283-288, 2012-09-25
参考文献数
15

多点ネットワークを構成して火星表層環境および内部構造を観測するペネトレータミッションを提案する.現在の火星内部で生じているダイナミクスを反映する地震活動度と熱的状態を調査するとともに,地球型惑星の分化過程を反映する地殻-上部マントル構造と固体内部から表層および大気層への物質輸送過程に関する知見を得ることを目的とする.ペネトレータモジュールは突入速度300m/secで火星表層下2〜3mに潜り込むプローブ本体に,耐熱シールドと空力減速機構の役割をする膜面展開型柔構造エアロシェルを統合することで小型軽量なシステムを構成する.周回衛星から分離された4機のペネトレータは,火成活動の可能性が指摘されるElysium地域に最大300km間隔のネットワークを構成して地震観測や熱流量観測を行う.一方,柔構造エアロシェルには圧力計,温度計,磁力計,カメラを搭載して大気突入時のモニタリングを行う.
著者
小林 直樹
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会誌 (ISSN:13405551)
巻号頁・発行日
vol.143, no.11, pp.722, 2023-11-01 (Released:2023-11-01)
参考文献数
3

みなさんは「パルスオキシメータ」という医療機器をご存じだろうか。救急車による病院への搬送,内視鏡検査,入院などの経験がある方は,指先にクリップ状またはテープ状のセンサを付けて何か測定してもらったはずだ。これが「パルスオキシメータ」である(図1)。指先にセンサ
著者
小林 直樹 佐藤 亮介 五十嵐 淳 塚田 武志 吉仲 亮 海野 広志 関山 太朗 佐藤 一誠
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2020-08-31

プログラム検証とは、プログラムが正しく振る舞うかどうかを実行前に網羅的に検証する技術であり、ソフトウェアの信頼性向上のために欠かせないものである。本研究課題では、近年の機械学習技術の台頭とそれに伴うコンピュータによって制御されたシステムの社会への普及を踏まえ、(1)代表者らがこれまで研究を進めてきた高階モデル検査などの自動プログラム検証技術や理論をさらに発展させるとともに、(2)プログラム検証技術のさらなる飛躍のために機械学習技術を活用し、さらに(3)機械学習技術の台頭に伴うソフトウェアの質と量の変化に対応するための、新たなプログラム検証技術の確立を目指す。
著者
長沢 寛弥 國吉 杏子 谷川 敏明 小林 直樹 小西 良子 朝倉 宏 大城 直雅
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.157-161, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
32
被引用文献数
2

小笠原群島(聟島列島,父島列島および母島列島)におけるシガテラの実態を調査するために,周辺海域で漁獲されたバラハタVariola louti 65個体の筋肉を試料としてLC-MS/MSによるシガトキシン類(CTXs)分析を実施した.すべての試料からCTX1Bに近接するピークが検出されたが,CTX1Bの前駆体である52-epi-54-deoxyCTX1B,54-deoxyCTX1Bや,他のCTX類縁体は検出されなかった.バラハタ試料では通常,この3物質が同時に検出されることから夾雑物による影響を考え分析カラムを変更して分析した結果,全試料においてCTX1Bとは保持時間が異なったため夾雑物由来であると判断した.本研究に供したバラハタは体重2,170~7,000 gと大型の個体であったにも関わらず,65個体のいずれからもCTXsは検出されなかった.そのため,小笠原群島周辺海域のバラハタによるシガテラのリスクは低く,CTXs産生性渦鞭毛藻の分布密度は沖縄・奄美海域に比較して極めて低いことが示唆された.