著者
中川 一夫 池内 真理 次田 陽子
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.425-427, 1986-08-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
7
被引用文献数
8 6

植物性食品材料54種中のグルタチオン含有量を酵素サイクリング法を用いて定量したところ, 0.07~28.7mg/100gの範囲にあった. これらの食品材料のなかでは, ホウレンソウ, キャベツ, シロナ, パセリ, キュウリ, カボチャ, トマト, サヤエンドウ, ソラマメ, エノキタケには相対的に高いグルタチオン含有量が認められたが, 動物肝グルタチオン量に比べると低く, およそ10分の1以下にすぎない.
著者
鍋師 裕美 堤 智昭 植草 義徳 蜂須賀 暁子 松田 りえ子 手島 玲子
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.133-143, 2015-08-25 (Released:2015-09-03)
参考文献数
12
被引用文献数
13 19

平成23年3月に発生した福島第一原子力発電所事故(以下,原発事故)によって環境中に放出された放射性核種の1つである放射性ストロンチウム(90Sr)の食品中濃度の実態を調査した.その結果,セシウム(Cs)134および137がともに検出され,原発事故の影響を受けているとされた放射性Cs陽性試料(主に福島第一原子力発電所から50 ~250 km離れた地域で採取)では,40試料中25試料で90Srが検出された.一方,134Csが検出下限値未満であり,原発事故の影響を受けていないとされる放射性Cs陰性試料においても,13試料中8試料で90Srが検出された.今回の調査における放射性Cs陽性試料の90Sr濃度は,放射性Cs陰性試料の90Sr濃度や原発事故前に実施されていた環境放射能調査で示されている90Sr濃度範囲を大きく超えることはなかった.本研究の結果からは,放射性Cs陽性試料の90Sr濃度は過去のフォールアウトなどの影響と明確に区別ができない濃度であり,原発事故に伴う放射性Cs陽性試料の90Sr濃度の明らかな上昇は確認できなかった.
著者
新藤 哲也 牛山 博文 観 公子 安田 和男
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.29-35_1, 1999-02-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
19
被引用文献数
3 3

市販及び野生キノコ合計54種85検体のシアン含有量を調査した結果, 18種44検体からシアンが検出された. 市販キノコではニオウシメジが最も多く86~283μg/g (n=11) のシアンが検出された. 次いでマイタケで1.8~46μg/g (n=6) 及びシロアワビタケで1.1~26μg/g (n=7) と高い値であった. 採取した野生のキノコでは1.0μg/g以上のシアンを検出したものはみられなかった. また, キノコ中のシアンは遊離型で存在していると推察した. ニオウシメジを網焼きした場合, やや焼きすぎの6分間加熱でも加熱前の65%のシアンが残存した. また, 水煮した場合でも, キノコ中に27%が残存し, 煮汁に19%が溶出した.
著者
田村 行弘 真木 俊夫 嶋村 保洋 西垣 進 直井 家壽太
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.173-180, 1979-06-05 (Released:2010-03-01)
参考文献数
22
被引用文献数
9 9

In 1977, there was an outbreak of photosensitivity dermatitis by among persons who had ingested a certain brand of chlorella tablets. At least 23 patients were identified in and around the Tokyo metropolitan area.The unconsumed chlorella tablets collected from these patients invariably induced photosensitivity dermatitis in mice. These chlorella tablets contained large amounts of pheophorbide and its ester, which are well-known phototoxic pigments derived from chlorophyll, while chlorella tablets from another maker, which contained less than a tenth as much pheophorbide induced no photosensitivity lesion in mice.Furthermore, a linear dose response relationship was observed between the severity of photosensitivity dermatitis in experimental animals and the content of pheophorbide in chlorella administered. However, the reaction induced by pheophorbide extracted from the suspect chlorella was weaker than that induced by the original chlorella sample.It was confimed that ethanol, used in forming granules of chlorella before pelleting, activates chlorophyllase, which in turn hydrolyzes chlorophyll naturally contained in chlorella into pheophorbide and its ester.We concluded that the photosensitivity dermatitis was caused by the chlorella tablets, which had been treated with ethanol. We believe that pheophorbide and its ester found in large amount in these tablets, have played a major role in inducing the photosensitivity dermatitis.
著者
最所 和宏 豊田 正武 高木 加代子 佐竹 元吉 高橋 悟 山本 裕昭 葛西 健 橋本 勢津 斎藤 行生
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.46-50_1, 1994-02-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
10
被引用文献数
5 8 2

平成4年4月岩手県岩泉町の山林において野生ミツバチのはちみつによる神経毒症状を呈する中毒事故が発生した. この食中毒の原因物質を検索するため. 中毒はちみつ中の花粉の鏡検を行ったところ, Aconitum 属植物の花粉と形状のよく一致する花粉の存在が確認され, その出現率は68.3%であった. また, このはちみつをラットに投与すると神経毒症状を呈した. はちみつ抽出物のTLCによりアコニチンと同一のRf値を示す物質の存在か認められ, GC/MSのフラグメントイオンによりアコニチンと確認した. そこで牛薬中のアコニチン系アルカロイドの迅速抽出精製法に準拠して, 中毒はちみつ中のアコニチと系アルカロイドを抽出し, HPLCにより定性・定量を行った. 中毒はちみつ中のアコニチンレベルは10.7ppmであり, この濃度はヒメダカ致死試験による推足値と一致した. 以上より. はちみつによる本食中毒の病因物質はアコニチンと推定した.
著者
河村 葉子 辻 郁子 杉田 たき子 山田 隆
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.170-177_1, 1997-06-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
11
被引用文献数
2 4

ステンレス製器具及び食器からの鉄, クロム, ニッケル, 鉛及びカドミウムの溶出について検討を行った. 溶出した鉄, クロム, ニッケルにおいては, 溶出溶媒では水<4%酢酸<0.5%クエン酸, 溶出条件では室温24時間<60℃30分間<95℃30分間<沸騰2時間の順に, 溶出量が多くなった. 市販及び使用中の器具及び食器について, 4%酢酸で60℃又は95℃30分間の溶出試験を行ったところ, 新品では鉄50~1,110ppb, クロム5~28ppbの溶出が認められたが, 使用中の製品では検出頻度, 検出値ともに低く, 繰り返しの使用により溶出量が低下するものと考えられた. また, 鉛は使用中の製品1検体から検出されたが, 25ppbと微量であった. 一方, カドミウム及びニッケルはいずれの製品からも検出されなかった.
著者
一言 広 諸角 聖 和宇慶 朝昭 坂井 千三 牛尾 房雄 道口 正雄 辺野 喜正夫
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.273-281_1, 1978-06-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
16

「紅茶キノコ」と呼ばれる嗜好飲料の安全性の解明を目的として微生物学的ならびに有機酸組成の検討を行った.「紅茶キノコ」液から検出した微生物は Acetobacter xylinum, Saccharomyces cereviciae, S. inconspicus, Candida tropicalis, Debaryomyces hansenii などであった. これらの菌の凝塊形成至適温度は26~27°で, 菌の発育により紅茶液のpHは最終的に3.1以下となった. また, 本液に各種病原細菌を接種し生存性を検討した結果, いずれも48時間以内に死滅したことから, これらの菌により汚染される危険はほぼないものと考えた. 一方,「紅茶キノコ」液中に存在した有機酸の95%以上は酢酸で, 他に微量の乳酸およびギ酸が認められた.
著者
神谷 智恵子 小川 美江子 大川 博徳
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.291-300_1, 1991-08-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
17
被引用文献数
3 3

シュウ酸カルシウムによる尿路結石症の発病予防の観点から, 愛知県及び京都府の茶道教授の飲茶量をアンケートにより調査すると共に, 茶のシュウ酸及びカルシウム含量を分析し, 両者のバランスを検討した. その結果, 1杯の飲茶によるシュウ酸摂取量に対するカルシウムの不足量はそれぞれ平均, 抹茶10.23mg, 紅茶5.26mg, 玉露2.21mg, 煎茶1.87mg, 番茶0.81mgであり, 飲茶によるこのカルシウムの不足量は計算上コップ1杯の牛乳に相当する.
著者
高鳥 浩介 高橋 恵子 鈴木 敏正 宇田川 俊一 倉田 浩
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.307-312_1, 1975-10-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
15

市販カビ醗酵型, 自然醗酵型サラミソーセージ31試料について菌類分布を調査し, 主要菌としてカビ醗酵型より P. cyclopium, P. viridicatum など Penicillum を,自然醗酵型より Cephalosporium sp., Mucor mucedo, M. racemosus, Aspergillus versicolor, P. cyclopium などを分離した. カビ醗酵型の Penicillum は主として加工上のスターターと考えられるが, 分離株の penicillic acid 産生能は認められず, カビ醗酵型ソーセージなどは食品衛生上一応支障ないものと考えられる.
著者
貝瀬 利一 大屋-太田 幸子 越智 崇文 大久保 徹 花岡 研一 Kurt J. IRGOLIC 櫻井 照明 松原 チヨ
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.135-141_1, 1996-06-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
40
被引用文献数
22 32

海藻中に含まれる有機ヒ素化合物アルセノ糖の毒性学的評価を培養細胞を用いて行った. 被験ヒ素化合物は有機化学的に合成し, 細胞増殖阻止試験, 染色体異常誘発性試験及び姉妹染色分体交換誘発試験について検討を行った. アルセノ糖の50%細胞増殖阻止濃度 (ID50) は2mg/mlで, 亜ヒ酸ナトリウムの毒性の1/2800, ヒ酸ナトリウムの1/300であった. 染色体異常は5mg/mlの濃度においても15%の頻度でしか誘発されず, また姉妹染色分体交換 (SCE) を起こさないことから, 細胞毒性の低いヒ素化合物であることが推定された.

7 0 0 0 OA 変敗油の毒性

著者
金田 尚志
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.11, no.5, pp.321-333, 1970-10-05 (Released:2010-02-22)
参考文献数
66
被引用文献数
2
著者
若林 茂 里内 美津子 植田 由香 大隈 一裕
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.557-562_1, 1992-12-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
13
被引用文献数
10 15

馬鈴薯デンプンを加熱, 酵素処理して調製した水溶性食物繊維 (一般名: 難消化性デキストリン, 商品名: パインファイバーC, 以下PF-C) について機能性食品素材として開発を進めるに当たり急性毒性及び変異原性試験を実施した. さらにラットを用いて便通に及ぼす影響を検討した. (1) マウスを用いた急性毒性試験においてPF-C摂取による死亡例は最大投与可能量の20g/kgにおいても見られなかった. (2) 細菌を用いた変異原性試験において, PF-Cは代謝活性化の有無に関わらず復帰変異コロニー数を増加させなかった. (3) ラットを用いた単回投与試験においてPF-Cのふん便への排泄率は約36%であった. (4) PF-C連続投与により盲腸重量は増加し, さらに盲腸内容物のpHの低下が観察された. また, PF-Cは14.29g/kg wt. (1g/70g wt.) において下痢を誘起しなかった. (5) PF-Cの連続投与により食餌の消化管通過時間は非投与群に比して有意に短縮された.
著者
高橋 邦彦 星野 庸二 徳丸 雅一
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.619-622_1, 1992-12-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
5

オレンジを摂取した乳児の顔や首筋が赤くなったという消費者からの苦情があり, 検査したところ苦情品から約0.5%のエタノールが検出された. そこで, 果実中のエタノール含有量の実態調査を行った. 11種の果実の117検体のエタノール含有量を調査したところ, 9種97検体から検出された. 検出量はオレンジを除き, 他の果実はほとんど0.15%以下であった. オレンジは27検体調査したが, 最小0.01%, 最大0.71%, 平均で0.13%であり, なかには高い濃度 (0.21, 0.31, 0.71%) が検出されたものがあった.
著者
小沢 千重子
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.258-262_1, 1983-06-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
9
被引用文献数
7 6

石川県の特産品であるフグ卵巣ぬか漬けの製造方法の改善を目的とした一連の研究を開始するにあたり, 2, 3の予備的実験を行った. まず, フグ毒の抽出法を比較したところ0.1%酢酸及び酢酸酸性メタノール抽出法より熱水抽出法の方が効率がよいことがわかった. ぬか漬け卵巣の毒力を測定すると長期のぬか漬けを経たものにもかなりの毒力が認められた. 一方, マウスに腹腔内投与するテトロドトキシン溶液中の食塩濃度が増すとマウスの致死時間がかなり遅延することがわかった. また, フグ卵巣抽出液が腐敗すると毒力がすみやかに低下するという報告について検討したが, 腐敗と毒力との間に明確な関係は認められなかった.
著者
小沢 千重子
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.263-267_1, 1983-06-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
5
被引用文献数
2 2

フグ毒がアルカリ性で不安定な性質を応用してフグ卵巣ぬか漬けの毒力を低下させる方法を検討した. 各種アルカリ剤を含む食塩水中に卵巣を浸しその毒力とpHの経時変化を調べたところ, 炭酸水素ナトリウムが最も有効であることがわかった. そこで実験室及びぬか漬け工場で食品添加用炭酸水素ナトリウムを加えて塩漬け実験を行った結果, 特に実験室において毒力低下が著しかった. また, いずれの場合もpHの上昇が細菌の増殖を顕著に促すという事実は認められなかった.