著者
青木 佳代 石川 和彦 林 賢一 斉藤 守弘 小西 良子 渡辺 麻衣子 鎌田 洋一
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.28-32, 2013-03-31 (Released:2013-09-07)
参考文献数
15
被引用文献数
4 13

A case of the suspected food poisoning related to deer meat occurred in December, 2011 in Shiga prefecture in Japan. Four of 18 people showed transient diarrhea, abdominal pain, nausea, and vomiting within 5 to 16 hr after eating. No typical food poisonous bacteria and viruses were detected in the food samples. Parasitological tests were performed on the deer meat, and the Ministry of Health, Labour and Welfare of Japan for horsemeat food poisoning were officially notified. A 1,100-bp DNA fragment was amplified by PCR from three slices of the deer meat, suggesting the presence of Sarcocystis sp. Cysts and bradyzoites were detected in the specimens of the deer meat. Immunohistochemical staining of the cysts detected in the deer meat with an antibody against the toxic 15 kDa protein of S. fayeri showed a positive reaction. This indicated that a similar toxic protein originating from Sarcocystis cysts was present in the deer meat. This suggested that the deer meat containing Sarcocystis cysts was the causative food in these cases of food poisoning.
著者
小西 良子
出版者
Osaka Urban Living and Health Association
雑誌
生活衛生 (ISSN:05824176)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.285-297, 2010-10-30 (Released:2010-11-10)
参考文献数
37
被引用文献数
1

Mycotoxins are secondary metabolites of fungi which present a hazard to humans and animals. Recently, a risk assessment of the main mycotoxins has been initiated by international committees through which an international standard in the form of a maximum residue level has been established as part of the Codex Alimentarius. In Japan, the Ministry of Health, Labour and Welfare, the Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries, and the Food Safety Committee carry out surveillance, reduction and risk assessment of mycotoxins. The present article reviews recent information from mycotoxin studies relating to food contamination and worldwide regulation.
著者
大仲 賢二 小林 直樹 内山 陽介 本田 三緒子 三宅 司郎 小西 良子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.148-156, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
43

漬物に使用される伝統的な4種類の生野菜(キュウリ,白菜,大根,ナス)から分離した乳酸菌(LAB)によるアフラトキシン(AFs)に対する暴露低減効果を調査した.最初に,AFM1との結合能を調べ,各野菜から最も結合率が高いLABを1株ずつ計4株選んだ.選んだ4菌株とAFB1,AFB2,AFG1,AFG2およびAFM1との結合率は,キュウリ由来LABで57.5%~87.9%,白菜由来LABで18.9%~43.9%,大根由来LABで26.4%~41.7%,ナス由来LABで15.0%~42.6%であった.また,キュウリ,白菜,大根およびナスから分離されたLABは,それぞれLactococcus lactis subsp. lactis,Weissella cibaria,Leuconostoc mesenteroides,Leu. mesenteroidesと同定された.さらに胃の中を模した酸性条件下で4菌株とAFM1との結合能を測定したところLABの生菌数は減少したが結合能はいくつかの菌株で増加し,これらの菌株はAFsとの結合能を保持していた.動物実験においてキュウリ由来L. lactis subsp. lactisが血清へのAFB1の吸収を有意に阻害することが明らかになった.以上の結果から漬物(浅漬けとぬか漬け)に使用される野菜に生息するLABがAFsと結合能を持ち,AFsに対する暴露低減効果を有すことが示唆された.
著者
大西 貴弘 小原 徹也 新井 沙倉 吉成 知也 小西 良子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.24-29, 2018-02-25 (Released:2018-05-08)
参考文献数
14
被引用文献数
7 13

カンパチの生食に伴う有症苦情29事例の喫食残品中に含まれるUnicapsula seriolaeの定量を行った.定量リアルタイムPCR(qRT-PCR)を用いて検体中のU. seriolae 18S rDNAを検出したところ,26検体で陽性となった.U. seriolae DNAが検出された事例の潜伏時間は1~12時間付近に集中(77%)していた.事例の発生に明瞭な季節性は認められなかった.患者の主な症状は下痢,嘔吐であった.U. seriolae DNAが検出された事例残品中の胞子数を測定したところ1グラム当たり1.9×105個から1.7×107個だった.しかし,市場で購入したカンパチから定量限界値以上の胞子は検出されなかったことから,事例の発生にU. seriolaeが関与している可能性が示唆された.胞子数とDNAコピー数の相関性は低かったが,胞子を計数できた事例のDNAコピー数は1グラム当たり107コピー以上だった.喫食量が判明している11事例について摂取胞子数を推定したところ,最小で3.8×106個であった.
著者
小西 良子 窪崎 敦隆
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.105-115, 2006 (Released:2006-10-23)
参考文献数
15

食品中に汚染するマイコトキシンは、大量に摂取した場合にあらわれる急性毒性よりも長期暴露による慢性的な健康被害が懸念されている。このような自然毒は食品汚染を完全に防御することが不可能であることから、各国で健康被害が懸念される食品を対象に基準値を設定している。しかし、各国での基準値の違いによる貿易摩擦を防止するために、国際的にもコーデックス規格を設けている。これらの基準値案は、FAO/WHOにおいての科学者の国際的集まりであるJECFAなどによって、問題となっているマイコトキシンを対象に毒性評価が行われている。本稿では、いままでJECFAで評価されたマイコトキシンを中心に実験動物を用いた毒性評価を紹介するものである。
著者
長沢 寛弥 國吉 杏子 谷川 敏明 小林 直樹 小西 良子 朝倉 宏 大城 直雅
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.157-161, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
32
被引用文献数
2

小笠原群島(聟島列島,父島列島および母島列島)におけるシガテラの実態を調査するために,周辺海域で漁獲されたバラハタVariola louti 65個体の筋肉を試料としてLC-MS/MSによるシガトキシン類(CTXs)分析を実施した.すべての試料からCTX1Bに近接するピークが検出されたが,CTX1Bの前駆体である52-epi-54-deoxyCTX1B,54-deoxyCTX1Bや,他のCTX類縁体は検出されなかった.バラハタ試料では通常,この3物質が同時に検出されることから夾雑物による影響を考え分析カラムを変更して分析した結果,全試料においてCTX1Bとは保持時間が異なったため夾雑物由来であると判断した.本研究に供したバラハタは体重2,170~7,000 gと大型の個体であったにも関わらず,65個体のいずれからもCTXsは検出されなかった.そのため,小笠原群島周辺海域のバラハタによるシガテラのリスクは低く,CTXs産生性渦鞭毛藻の分布密度は沖縄・奄美海域に比較して極めて低いことが示唆された.
著者
大八木 伸 盛田 隆行 小西 良子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.79-84, 2021-06-25 (Released:2021-07-02)
参考文献数
21

ゆでめん類は水分含量が多く,水分活性が高いために腐敗しやすい食品の1つとなっている.そのため製めん業ではHACCPマニュアルを参考とした衛生管理を行うことが推奨されている.しかし,中小企業のゆでめん工場で包装後の製品から一般生菌数が自主基準より高く出る事例が数例あった.その微生物汚染源を特定するために, PDCAサイクルを基本として検討を行った.その結果,汚染原因は環境由来菌であり,殺菌後の冷却工程で二次汚染されたこと,水洗冷却工程の強い水流により環境浮遊菌および酸素が水洗冷却槽に取り込まれ冷却水中の微生物の増殖を招き,最終製品を汚染することが示唆された.このような現象が起こることは,HACCPマニュアルでは提示されておらず新しい知見であり,本知見が今後のHACCPプラン構築に貢献することが期待できる.
著者
石﨑 直人 鎌田 洋一 古畑 勝則 小西 良子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.132-137, 2020-08-25 (Released:2020-10-02)
参考文献数
34

ブドウ球菌食中毒(SFP)は黄色ブドウ球菌(SA)が産生する嘔吐毒であるブドウ球菌エンテロトキシン(SEs)により引き起こされる.SEsには古典型と新型が存在するが,近年食品から両方の型を有するSAが多く検出されている.なかでもブドウ球菌エンテロトキシンQ (SEQ)はSFPにつながる潜在的なリスクが高いと考えられている新型SEsである.そこで,食品中におけるSAの菌数と古典型SEAおよびSEQの産生量との相関性を,スクランブルエッグをモデルとして条件をpH 6.0,7.0および8.0,塩分濃度0.5および1.0%,静置温度25℃に設定し検討した.SAの菌数はすべての条件で24時間後では107/10 g以上,48時間後では109/10 gとなった.SEAの産生はすべての条件で24時間後に確認された.SEQは,NaCl 1.0%加スクランブルエッグではいずれのpHにおいても24時間後に検出されたが,NaCl 0.5%下でのpH7.0と8.0では24時間では検出されなかった.SEQの産生量はSEA量より少なかったが,SEQは比較的低いpHおよび水分活性のスクランブルエッグにおいては産生されやすく,SFPの発症に関与する可能性があることが示唆された.
著者
大西 貴弘 古 沢 博子 佐古 浩 乙竹 充 福田 穣 吉成 知也 山崎 朗子 鎌田 洋一 小西 良子
出版者
日本食品微生物学会
雑誌
日本食品微生物学会雑誌 (ISSN:13408267)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.125-131, 2013-06-30 (Released:2014-01-29)
参考文献数
4
被引用文献数
2 6

Our surveillance indicated the food-borne disease associated with Kudoa septempunctata has occurred on summer season. To elucidate the reasons of that, we investigated the temperature effect of food-borne disease associated with K. septempunctata. We continually purchased olive flounders in the same lot from the fish farm that was infected with K. septempunctata partly and determined the number of spores in olive flounder muscle. Both the positive ratio of K. septempunctata in olive flounder and the number of spores did not show the seasonal change from January to August. We discovered that the temperature of seawater in summer season was over 20℃. However, the positive ratio of K. septempunctata, the number of spores and the toxicity of K. septempunctata were not affected by high temperature of seawater. These results demonstrated that the temperature rise of sea water was not a reason why the frequency of the food-borne disease increases in summer season.
著者
小西 良子
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.31-36, 2007 (Released:2007-04-12)
参考文献数
4
被引用文献数
1

オクラトキシンAは、Penicillium 属および Aspergillus属が産生するカビ毒である。ヒトにおいては腎毒性があることが疑われており、実験動物では腎毒性、腎臓がんを起こすことが実証されている。ヨーロッパでは、オクラトキシンAの実態調査が精力的に行われ、それを基に基準値の設定がなされている。コーデックス委員会でも、その基準値の策定が秒読み段階に来ている。しかし、わが国ではいまだ基準値設定が行われていない。そこで、本稿では国際的動向、オクラトキシンAの毒性、わが国での汚染実態、その分析法を紹介し、なぜオクラトキシンAは食品衛生上問題となるのか、今後基準値設定に向けてどのようにわが国は対処していくのかを述べる。
著者
原田 誠也 古川 真斗 徳岡 英亮 松本 一俊 八尋 俊輔 宮坂 次郎 斉藤 守弘 鎌田 洋一 渡辺 麻衣子 入倉 大祐 松本 博 小西 良子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.198-203, 2013-06-25 (Released:2013-07-18)
参考文献数
9
被引用文献数
3 15

熊本県では,馬刺しを共通食とする原因不明の一過性嘔吐下痢症事例が最近3年間で毎年27件以上発生していた.同事例の原因はSarcocystis fayeri住肉胞子虫で,本研究では一定時間の冷凍処理で住肉胞子虫のシストがペプシンにより消化されその毒性を失うことを見いだした.同胞子虫シストを含んだ馬肉を-20℃で48時間以上冷凍したところ,シスト由来の毒性タンパク質の消失も確認された.本研究で確立した冷凍条件を用いての冷凍処理の普及により,平成23年10月以降,馬刺しが原因と考えられる食中毒の発生報告はなく,この冷凍処理基準が,馬刺しによる食中毒防止対策として有効であることが示唆された.
著者
熊谷 進 小西 良子 作田 庄平 高鳥 浩介 PRAPEUK Tangmunkhong AMNART Poapolathep
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

カビ毒高濃度汚染地域であるタイにおいて、カビ毒を代謝し解毒する微生物や動物組織を探索するために、タイのカセサート大学と共同で収集したカッサバ栽培農地を中心とした土壌から分離した細菌と真菌のカビ毒代謝活性を調べた。カビ毒としてアフラトキシン(AF)、オクラトキシンA(OA)、ゼアラレノン(ZEA)を各試料に添加し培養した後に培養物を分析に供した。その結果、一部の菌によってAFB1とOAが代謝変換されることが認められた。また、タイ中央部において飼育されているウマ・ヒツジ・ブタの糞便および糞便に由来する嫌気性菌による上記カビ毒の代謝も合わせ調べたが、明瞭な代謝変換は認められなかった。動物組織に関しては、ブタやニワトリ等の家畜ならびにマウス等の実験動物の肝臓組織によるAFB2の代謝およびヤギ組織におけるゼアラレノンの代謝を検討したところ、各種動物の肝臓分画によるAFB2からAFB1への代謝の可能性が示唆され、ヤギの諸臓器におけるゼアラレノンからゼアラレノールへの代謝が認められた。