著者
三宅 康博 永谷 幸則 吉田 光宏 林崎 規託 荻津 透 大西 純一 鳥養 映子
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2017-05-31

透過ミュオン顕微鏡に用いる超低速ミュオンに厚い試料への透過能をもたせるための再加速装置である5MeVミュオンサイクロトロンが完成した。本年度、サイクロトロンの主磁石を作成するとともに、サーチコイルを用いた超精密(10(-5)精度)かつ高勾配(10%/cm)の磁場を計測可能な3次元磁場測定装置を開発し、これらを用いて精密磁場測定、磁場計算と磁極調整(シミング)をくりかえし、目標とする最大0.5T強度で10(-5)精度の等時性磁場の形成に成功した。磁場測定装置の開発では、低膨張ガラス立方体にコイルを巻き、超低ドリフトアンプ、24bitADC、14bitロータリーエンコーダー、FPGA処理装置を組み合わせ、必要な精度を得た。また、サイクロトロンに高安定な108MHzと324MHzの電磁波(RF)を供給する発振器、プリアンプ、パワーアンプ等も開発した。GPS原子時計に同期した源発信をPLLにより上記周波数に変換し、複素変調器、複素復調器、ADC、DACとFPGAを組み合わせたフルデジタルなRF制御系の開発も進めた。並行して、透過ミュオン顕微鏡に用いる超伝導対物レンズの超伝導コイルのヘリウム冷却・起動試験を実施し、目論見通りの磁場(最高4.2T)分布が得られる事を確認した。また、ミュオン回折実験のデーター解析も進めた。
著者
鳥養 映子 三宅 康博 門野 良典 岩崎 雅彦 西田 信彦 秋光 純 杉山 純 永嶺 謙忠 齋藤 直人
出版者
山梨大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

超低速ミュオン顕微鏡は、表面・界面が関与する物理、化学、生命の諸現象の解明から、ミュオン異常磁気能率の精密測定までの広い分野において、研究を飛躍的に発展させる突破口となる。研究期間前半で共通基盤装置を開発し、後半でこれを用いた新たな学術領域の開拓をめざした。加速器施設の事故等による長期ビーム供給停止にもかかわらず、ビーム再開直後の平成28年2月に初の超低速ミュオン発生に成功した。海外実験施設等による予備実験により、磁性、超伝導、半導体、電池材料に加えて、触媒化学や生命科学などこれまで未開拓の分野においても基礎データを蓄積できた。さまざまな分野において、新量子ビームへの期待が高まっている。