著者
中嶋 匡 西村 裕之 西原 賢太郎 浮田 透 辻 雅夫 三宅 裕治 大村 武久 立花 久大
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.577-582, 2008 (Released:2008-10-08)
参考文献数
13

症例は68歳女性.2006年11月21日右手の動かしにくさを自覚し,以後徐々に症状増悪した.11月23日には構音障害と運動性失語が出現した.11月24日右上肢のけいれん後右片麻痺が出現し当院へ入院した.入院時,意識障害,全失語,軽度右片麻痺を認めた.入院当日の頭部MRIは,拡散強調画像およびFLAIR画像で左前頭葉皮質にリボン状に高信号を認めた.緩徐進行性の経過から,seizureを伴った血栓性脳梗塞と診断し,抗てんかん薬投与と抗血小板療法を行った.入院後物品呼称や名前を言うことが可能となり,右下肢麻痺は消失した.右上肢麻痺も徐々に改善し,失語症と共に26日には消失した.以上より本例をfocal inhibitory seizureと診断した.本症は従来考えられていたよりも稀な病態でなく,抗てんかん薬で治療可能であることから,脳梗塞との鑑別上留意すべき病態であると考えられた.
著者
白根 礼造 林 俊哲 三宅 裕治 冨永 悌二
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.7, pp.510-517, 2010
参考文献数
21
被引用文献数
1

脳神経外科医にとって最初の関門であるシャント手術ではあるが,専門医取得後には真剣に向き合う機会は少ないと考える.昨今のシャントシステムの発展は驚嘆に値し,小さなシステムの中にさまざまな機能を含んでいて,経験を積まなければそのすべてを理解するのは困難であろう.しかし,個々の症例に対し適切なシステムを選択し,バルブ固有の特性に関して必要十分な説明を行うことは医療者側の責任である.本論文では,患者背景による水頭症病態の差異,髄液シャントの歴史的背景,現在普及しているシャントバルブの基本理念および特性,シャント手術に際しての注意点に関して解説した.