著者
三木 登
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.264-268, 1981
被引用文献数
1 10

高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるトマト製品中のアスコルビン酸(AsA)の定量法を設定した。<BR>Fine SIL C<SUB>18</SUB>-10を充填したステンレスカラム(4.6×250mm)を用い,移動相(1%リン酸液)を1.0ml/minの流速で送液し,検出にはUV検出器(254 nm)を使用した。試料は40%メタリン酸液で稀釈し,ミクロフィルター(0.45μ)で濾過し,その濾液3μlを液体クロマトグラフに注入した。<BR>AsAの保持時間は4分20秒で,1試料の分析時間は14分以内であった。この方法におけるAsAの回収率は平均98.6%であった。トマト製品中のAsAをHPLCとインドフェノール法(AOAC法)で分析したところ,HPLCに比較してインドフェノール法の分析値が,トマトジュースでは平均7.9%,ベジタブルジュースでは14.4%それぞれ多かった。これはAsA以外のレダクトンによるためと考えられた。<BR>加熱あるいは空気酸化したトマトジュースを両分析法で分析し,HPLCがAsA以外のレダクトンの影響を受けずに,正確にAsAを分析できることを明らかにした。製造工程中または製品貯蔵中におけるAsAの減少量を,正確かつ迅速に知る上でHPLCによる分析はきわめて有効と判断した。
著者
三木 登
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.119-125, 1975

トマト中に存在する天然の抗酸化物質を分離,同定し,リコピンの酸化に対するそれらの抗酸化能について調べた。<BR>(1) トマトジュースのメタノール抽出液中からFlori-silカラムクロマトグラフィーおよび薄層クロマトグラフィー(TLC)により抗酸化物質を分離した。<BR>(2) 主たる抗酸化物質は,TLC,紫外線および赤外線吸収スペクトルなどにより,α-およびγ-トコフェロールと同定した。<BR>(3) トマトジュース中のトコフェロール総量は約0.7から1.1mg%であった。平均組成はα-, γ-およびδ-トコフェロールがそれぞれ85%,15%および2%であった。<BR>(4) トマト中に存在するトコフェロールでトマト中のリコピンの酸化を十分に防止できるものと推定した。<BR>(5) リコピンの酸化に対する抗酸化能はα->γ->δ-トコフェロールの順であった。合成酸化防止剤(ブチルハイドロオキシアニソール,ブチルハイドロオキシトルエン)およびフラボノイドのリコピンの酸化に対する抗酸化能はトコフェロールにははるかにおよぼなかった。
著者
三木 登 赤津 一衛
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.18, no.7, pp.303-308, 1971
被引用文献数
4

市販トマト製品中のトマトパルプの状態と粒度分布を調べ,次にホモジナイザー,ミキサーおよび超音波を使いトマトパルプを破壊し粒度分布を変えて,粒度分布の違いが色に及ぼす影響について調べた。その結果,<BR>(1) 市販のトマトケチャップ,トマトジュース中のトマトパルプの粒度分布に著しい差を認めた。粒度の大きいものではトマト細胞が残っており,lycopeneは顆粒状に存在していたが,粒度の細かいものではトマト細胞が破壊されlycopeneは細胞外に細かく分散していた。<BR>(2) パルプ量が0.5%~1.0%のトマトジュースにおいてはパルプ量と色との関係は定量的であった。<BR>(3) 漿液の色はトマト製品の色にあまり影響を与えておらず,パルプの色の影響が強かった。<BR>(4) 粒度が細かくなると色は肉眼的にも測色値においても悪くなつた。すなわちつやのある赤色から白っぽい赤色へと変わった。その原因はパルプの破砕とlycopeneの分散の結果反射条件が異なったためと考察した。<BR>(5) 細胞内外にあるlycopeneの安全性について考察を試みた。