著者
三木 章江 後藤 月江 渡邊 幾子 植田 和美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】我々は、徳島県海陽町鞆浦漁業協同組合との共同研究に取り組んでおり、鞆浦漁協の名物である大敷網漁(定置網)で水揚げされる未利用魚の有効活用を検討してきた。本研究では、鞆浦漁協における大敷網漁で水揚げされたシイラ・クロサギの調理および加工適性から活用方法を検討し、未利用資源の有効な活用を図ることを目的とした。<br />【方法】シイラとクロサギを試料とし、調理・加工特性を考慮して活用方法の検討を行った。シイラは様々な形態や味付けで活用可能であるというこれまでの結果をベースに、すり身としてアイスクリーム、ほぐし身にしてパイ、切り身を使った料理、そして無塩干物のバーガーへの活用を検討した。また、クロサギは魚臭さの軽減を目的として、ドーナツ、フィッシュカツ風フライ、ボーロへの活用を検討した。各試作品については、本学および鞆浦漁協で開催された「とれとれ市」において官能評価を実施し、総合的な品質評価とした。<br />【結果】官能評価の結果より、シイラは淡泊な味であるため「さかなパイ」、「おさかなアイス」の菓子にも活用が可能であることが示唆された。シイラの切り身を利用した料理では「ロールキャベツ」の評価が高く、シイラの無塩干物を使用した「フィッシュバーガー」も好評であった。また、クロサギの活用では、牛乳に浸漬することで風味や食感が向上し「ドーナツ」への活用の可能性が示唆された。「おさかなボーロ」においては、香りの強いラム酒を添加することで魚臭さが軽減され、高評価に繋がった。「フィッシュカツ風フライ」ではカレー粉の使用が風味の改善に寄与していた。未利用資源を有効活用するためには、検討したシイラ・クロサギの活用方法を広く発信することが重要であると考える。
著者
後藤 月江 三木 章江 川端 紗也花 高橋 啓子 坂井 真奈美 松下 純子 長尾 久美子 近藤 美樹 金丸 芳
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】伝統的な郷土料理は、生活に喜びを与え、家族や地域社会の絆を深めてきた。しかし近年、輸入食品の増加、食の外部化、核家族化により、郷土の料理を家庭で作る機会が減り、伝統的な地域の食文化が親から子へ伝承されにくい傾向にある。本研究では聞き取り調査により徳島県の日常または伝統的な行事で作られていた「おやつ」について報告する。<br />【方法】徳島県を県中央部、県西部、県南山間部、県南沿岸部、吉野川北岸の5地区に分け、聞き取り調査を実施した。今回は徳島県の家庭料理における各地域の「おやつ」について検討を行った。<br />【結果】全地域で食べられているのは「おへぎ・あられ」と「ういろ」、「干し芋」、「柏餅」であった。「おへぎ・あられ」は餅を搗いたときにおへぎ・あられ用に色粉やヨモギ、キビ粉などと砂糖を入れて作り、よく乾燥させて保存し食べられている。「ういろ」は米粉と餡を合わせて練り蒸して作る。4月3日の桃の節句(旧暦)の遊山箱には欠かせないおやつであった。「干し芋」は茹でて干したものと生の輪切りを干したものがあり、そのまま食べたり、小豆と一緒に煮た「いとこ煮」にして食べる。サルトリイバラの葉で挟んだ「柏餅」は、米粉の生地で餡を包んだ白い柏餅と餡を生地に練り込んだ柏餅がある。また、吉野川北岸や県中央部では小麦粉の生地で餡を包み、サルトリイバラの葉の上に乗せて蒸した団子が柏餅として食べられていて、その餡にはそら豆を用いていることが特徴的であった。また県南山間部では、「はんごろし」と呼ばれるおはぎ(蒸したもち米の粒が半分潰れるくらい搗くことに由来する)が親しまれており、餡はササゲのこし餡である。
著者
金丸 芳 高橋 啓子 後藤 月江 三木 章江 長尾 久美子 近藤 美樹 松下 純子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】特別研究として次世代へ伝え継ぐ家庭料理について徳島県の聞き取り調査を実施してきた。2014年は寿司、餅菓子について報告した。今回は日常食としての家庭料理のうち<u>おかず</u>について報告する。 <br>【方法】聞き取り調査の地域区分は6地区(県南沿岸部、県南山間部、県中央部、県北部、吉野川北岸、県西部)とした。出現した料理からおかずに分類される料理について地域の特徴を明らかにした。 <br> 【結果】昭和30~40年頃のおかずは自家製の野菜やその地域で生産された食材を使用した料理が多く、各地域でよく出現した料理はれんぶ(でんぶ)、ならえ、干し芋の煮物であった。「れんぶ(でんぶ)」は金時豆や大豆と根菜類との煮物(地域によっては梅干しも)であり、昔は正月のお節料理であったが、近年では日常食として作られている。「ならえ」は精進料理の一品として作られたもので、根菜類や油揚げ、シイタケなどを煮て酢の物にした煮なますである。干し芋には生芋を干したものと茹で芋を薄く切って干した「ゆで干し」があり、どちらもよく食されていた。干し芋の煮物である「かんばの炊いたん」や「干し芋と小豆の煮物(いとこ煮)」は甘めの味付けで、おやつとしても食されていた。また、酢の物、煮物が多く出現し、お浸し、和え物も出現した。南部山間部では芋茎(ハスやズキガシ)の酢の物、たんぽぽのお浸し、クサギとジャガイモの炊き物も挙った。南部沿岸地域ではイタドリと生節や天ぷらとの煮物、サツマイモとネギの煮物があり、ハスと太刀魚の酢の物や鰯のぬたなど魚を使った料理も多い。吉野川北岸地域ではワラビやゼンマイなど山菜の煮物も見られた。この時代は野菜、芋を主材料とし、豆・豆加工品、魚を少々加えた料理が主であった。