著者
上出 貴士 高橋 芳明 山内 信 井関 和夫
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.061-072, 2013-03-20 (Released:2015-03-23)
参考文献数
62

田辺湾の潮間帯の砂泥域でコアマモ群落の底質環境とベントス群集の関係を明らかにした。底質環境では,コアマモ群落の AVS が裸地よりも高く,群落内での嫌気分解の卓越が示唆された。コアマモ群落のベントス群集は,裸地との類似度が高いものの,種数や個体数,現存量が高く,コアマモ群落の生育場所に応じて多様であった。また,優占種の上位10種のうち,7~8 種が埋在性の堆積物食者および懸濁物食者であった。以上のことから,コアマモ群落は埋在性種を中心としたベントス群集の好適な生息場所になっていると考えられ,コアマモ群落は多様な動物群集を支える沿岸生態系の基盤種として重要であり,コアマモ自身の保全が重要な意義を持つと考えられた。また,コアマモ群落は生息場所に応じた多様なベントス類に好適な生息・餌料環境を提供していると考えられたことから,保全すべき沿岸生態系としてのコアマモ群落の意義は極めて高いことが示唆された。
著者
町田 益己 藤富 正毅 長谷川 健一 工藤 孝浩 甲斐 正信 小林 智彦 上出 貴士
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.755-756, 1999-07-15
参考文献数
5
被引用文献数
6 15

1997年に発生した渦鞭毛藻, Ceratium furcaの赤潮は, 和歌山県から茨城県にかけての太平洋沿岸において極めて広い範囲で認められ, その発生期間は3月下旬から7月下旬までの約4ヶ月間に及んだ。特に, 遠州灘から駿河湾にかけての海域に赤潮が約2ヶ月間継続し, 水産業に多大な影響を与えた。赤潮被害は伊豆半島東部の静岡県網代地区で5月23∿24日に強い低気圧の通過にともなう北東風によって本種細胞が集積し, 養殖していたブリ, マダイ, カンパチ等が斃死する事故が発生した。斃死の原因は細胞の集積とその後の死滅にともなう低酸素化現象と考えられた。本赤潮は発生範囲の規模と持続期間を考えれば, 過去に例のない大規模で特異的な現象であった。