著者
杉 直樹 清水 昭彦 上山 剛 吉賀 康裕 沢 映良 鈴木 慎介 大野 誠 大宮 俊秀 吉田 雅昭 松崎 益徳
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Supplement4, pp.34-40, 2008-11-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
4

症例は32歳,男性.主訴は動悸.心電図で左脚ブロック型のwide QRS tachycardiaを指摘された.電気生理学的検査ではHRAからの期外刺激法にてnarrow QRS tachycardiaが誘発され,心房最早期興奮部位は僧帽弁輪後壁で,心房早期捕捉現象がみられることからAVRTと診断した.RVAからの期外刺激法では臨床的に認められたwide QRS tachycardiaが誘発された.同頻拍はすぐにnarrow QRStachycardiaへと変化し,AH間隔およびVA間隔の延長により頻拍周期は延長した.最終的に副伝導路への2回の通電によりwide QRS tachycardiaおよびnarrow QRS tachycardiaはともに誘発不能となった.一般にAVRT中に副伝導路と同側の脚ブロックとなった場合頻拍周期は延長を認めるが(Coumel現象),本症例では房室伝導路および副伝導路の特性のために脚ブロックにより逆に頻拍周期は短縮したと考えられた.
著者
上山 剛 吉賀 康裕 土居 正浩 吉田 雅昭 平塚 淳史 福田 昌和 加藤 孝佳 文本 朋子 松崎 益徳 清水 昭彦
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SUPPL.3, pp.S3_88-S3_95, 2012 (Released:2013-09-25)
参考文献数
5

症例は54歳,女性.発作性上室性頻拍に対して心臓電気生理学的検査を施行した.逆伝導の最早期心房興奮部位は左側後壁であり,減衰特性は認めなかった.再現的な頻拍の誘発・停止が可能であり,正方向性房室回帰性頻拍と診断した.経大動脈的逆行アプローチにて施行したアブレーションでは離断に難渋し再伝導を繰り返した.14回目のアブレーションにより副伝導路は通電開始直後に離断され,以後の再伝導は認めなかった.イソプロテレノール負荷による再伝導も認めず,最終離断から60分以上経過した時点でATPによる評価を行った.ATP10mg急速静注により房室結節を介する逆伝導のブロック後に副伝導路を介する室房伝導の一過性出現を認めた.副伝導路の出現はATP投与時のみに認めるため,アブレーション困難と判断し,追加通電は施行せずに初回セッションを終了した.逆行性副伝導路は約1カ月後にインセサント型頻拍となって再発した.再セッションは経中隔弁上アプローチで行い副伝導路の恒久離断に成功した.
著者
清水 昭彦 山縣 俊彦 上山 剛 早野 智子 立野 博也 江里 正弘 大村 昌人 田村 健司 松崎 益徳
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.195-202, 1998
被引用文献数
1

心房細動の発生機序を検討するために, 右房に期外刺激法と洞調律時の心房内マッピング, P波同期加算平均心電図を行い, 発作性心房細動例 (paf) の心房筋の電気生理学的特性を検討した.高位右房期外刺激で反復性心房応答 (RAF) と最大伝導遅延を求めると, RAF誘発例の83%の有効不応期 (ERP) は250ms以下でかつ最大伝導遅延は40ms以上であった.ジソピラマイドは有意にERPを延長させ, 逆に, イソプロテレノールは有意にERPを短縮させた.両薬剤ともに最大伝導遅延を短縮させて, RAFの誘発は抑制された.心房内マッピングとP波同期加算平均心電図を行った症例では, paf群は対照と比較して有意に異常心房電位数が多く, フィルター化P波持続時間は延長し, P波初期および終末期ベクトルマグニチュードは低値であった.<BR>心房細動の発生には, 心房細動の基質, 心房筋ERPの短縮と伝導遅延が重要である.<BR>心房細動の発生機序に関しては, 今世紀の前半よリリエントリーと自動能亢進の問で長く論争が行なわれている.最近でも, fooal atrial fibrillationの報告が行なわれているし, 心房細動の一部の機序に撃発活動も考えられている.リエントリーとしては, Moeらの唱えたmultiple wavelet説が有力であり, 解剖学的欠損を持たずにリエントリーの中心に向かう興奮波によって作られた機能的ブロックの形成によって興奮波が回旋する"leading circle" (図1) 説や興奮が螺旋状に回旋してその中心の核が移動するSplral wave説がある.以上, 心房細動の発生機序は種々考えられているが, 現在の臨床レベルでこれらの電気生理学的現象を直接証明することは不可能であり, 通常は心房細動例と対照例の心房内マツピングやP波同期加算平均心電図あるいは心房期外刺激による心房筋の反応を検討することで, 心房細動の心房筋の電気生理学的特性が検討され, 間接的に心房細動が起こる基質の存在が調べられている.