- 著者
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上川 紀道
- 出版者
- 一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
- 雑誌
- 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.2, pp.183-185, 2020-12-25 (Released:2020-12-25)
- 参考文献数
- 10
随意的な咳嗽力の指標には,咳のピークフロー(CPF)がある.CPFは,肺気量,呼吸筋力に影響を受け,臥位で低値を示す.一方,症状悪化により長期的に背臥位を強いられると,褥瘡予防目的でエアマットレス導入が推奨される.よって,背臥位におけるエアマットレスの硬さがCPFに与える影響を検討することは重要である.以上のことから,健常若年男性を対象として検討した結果,硬さが「ソフト」の場合,CPF,努力性肺活量(FVC),最大吸気口腔内圧(PImax),最大呼気口腔内圧(PEmax)が有意に低下した.さらに,嚥下障害を有する高齢者を対象として検討した結果,硬さが「ソフト」の場合,CPF,FVC,PImaxが有意に低下した.姿勢に関しては上前腸骨棘の沈み込みが大きく,骨盤が後傾し,腰部接触面積が増加した.本研究の結果は,骨盤後傾を伴う腰部の沈み込み,脊柱の弯曲による姿勢の変化が,嚥下障害を有する高齢者のCPFなど咳に関連した因子に影響することを示唆している.