著者
兒嶋 昇 升 佑二郎 上村 孝司
出版者
法政大学スポーツ健康学部
雑誌
法政大学スポーツ健康学研究 = 法政大学スポーツ健康学研究 (ISSN:21853703)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.33-39, 2014-03-30

本研究では、日本トップレベルの大学バドミントン選手におけるスマッシュ、クリア及びドロップストローク時の上肢筋活動について検討した。その結果、各ストローク時のiEMGmaxは、橈側手根屈筋および尺側手根伸筋はスマッシュとドロップ、クリアとドロップ間に有意差が認められ(p<0.05)、棘下筋はスマッシュとドロップ間に有意差が認められ(p<0.05)、三角筋はスマッシュとドロップ、クリアとドロップ間に有意差が認められた(p<0.05)。これらのことから、スマッシュやクリアといった瞬間的に大きな力発揮を要するストロークでは前腕及び三角筋の活動が高くなり、大きな力発揮を必要としないドロップではこれらの筋活動が小さくなることが示された。また、クリアとドロップ間では棘下筋への負担に差はなく、それ程大きな負担が生じない場合もあるものの、より速いクリアショットを打ち放つ場合には、スマッシュと同程度の負担が生じる可能性があることが示された。
著者
兒嶋 昇 升 佑二郎 上村 孝司
出版者
法政大学スポーツ健康学部
雑誌
法政大学スポーツ健康学研究 (ISSN:21853703)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.33-39, 2014-03

本研究では、日本トップレベルの大学バドミントン選手におけるスマッシュ、クリア及びドロップストローク時の上肢筋活動について検討した。その結果、各ストローク時のiEMGmaxは、橈側手根屈筋および尺側手根伸筋はスマッシュとドロップ、クリアとドロップ間に有意差が認められ(p<0.05)、棘下筋はスマッシュとドロップ間に有意差が認められ(p<0.05)、三角筋はスマッシュとドロップ、クリアとドロップ間に有意差が認められた(p<0.05)。これらのことから、スマッシュやクリアといった瞬間的に大きな力発揮を要するストロークでは前腕及び三角筋の活動が高くなり、大きな力発揮を必要としないドロップではこれらの筋活動が小さくなることが示された。また、クリアとドロップ間では棘下筋への負担に差はなく、それ程大きな負担が生じない場合もあるものの、より速いクリアショットを打ち放つ場合には、スマッシュと同程度の負担が生じる可能性があることが示された。
著者
上村 孝司 村松 憲
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1789, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】普段行われているジャンプ動作など,反動を利用する動作を目的として筋収縮を行う際には,拮抗筋条件収縮(Antagonist Conditioning Contraction:ACC)が行われている。促通手技の一つでもあるACCは,主動作筋の収縮前に拮抗筋を収縮させるものであり,拮抗筋の収縮後に主動作筋出力が増強することが報告されている(Kamimura et al., 2009)。等尺性収縮によるACCでは,拮抗筋のゴルジ腱器官からのIb抑制により拮抗筋を抑制し,主動作筋を興奮させることで主動作筋の最大筋出力が向上する(Gabriel DA et al. 2001)。また,最大努力での等尺性または等速性による事前の拮抗筋収縮により,主動作筋活動が増加されることが報告されている(Kamimura and Takenaka, 2007)。等尺性収縮による拮抗筋条件収縮後の主動筋活性は,先行研究ではゴルジ腱器官のIb抑制の効果であると仮定されている(Kabat, 1952)。このような拮抗筋の条件付け活動は主動作筋に対して,脊髄からの興奮性の水準を高めるのに役立つ可能性があり,ACCを包含することにより筋力トレーニングの効果は増加する可能性がある。そこで本研究は,拮抗筋条件収縮における筋出力初期の増強を,特に神経的要因から検討することを目的とした。【方法】健常な被験者8名を対象に,足関節90度にて背屈および底屈の最大随意収縮(MVC)の測定した。その後,等尺性収縮による100%MVCでの背屈を1秒間行わせた後,直ちに最大努力での底屈を3秒間行わせた。筋活動電位(EMG)はヒラメ筋から導出した。底屈のみと拮抗筋条件収縮後の底屈時における25%MVCまでトルクが上昇した時点において,脛骨神経を電気刺激することによりヒラメ筋のH波を導出した。得られたデータから,最大トルク,筋電図積分値(iEMG),力の立ち上がり速度(RFD),EMGの発揮勾配(RED),H波の振幅を解析した。RFDは筋出力発揮を微分し,足関節底屈相での最初のピークとした。REDを算出するために区分周波数4Hzのガウシアンフィルターを用いて,筋電図信号を平滑化した。平滑化した信号を微分し,最初のピーク振幅をREDとした。測定値は平均値±標準誤差で示した。各測定条件における相関関係はピアソンの相関係数を用いて求めた。2群間の差の検定は対応のあるt検定を用いた。危険率はすべて5%とした。【結果】ACCの底屈のピークトルクは,底屈のみと比較して有意な差は認められなかったが,RFDおよびREDはACC条件においてに有意に高い値を示した。また,底屈のみのH波と比較してACC後の底屈時のH波は有意に高い値を示した。【考察】底屈のみとACC後の底屈時のピークトルクやiEMGにおいて,有意な差は認められなかった。しかし,ACC後のRFD及びRREは有意に高い値を示した。またACC後の主動筋収縮時のH波は,主動筋収縮のみのH波と比較し有意に上昇した。このことから主動筋収縮前にACCを行うことで,筋出力の初期に増強が起こることが明らかとなった。先行研究ではダイナミックなACC後の主動筋のRFDの増加は,筋腱複合体の弾性エネルギーによる可能性であることが示唆されている(Gabriel DA et al., 2001)。しかし,本研究では等尺性収縮を用いたことにより,弾性エネルギーの影響によるRFDの増加は考えにくい。拮抗筋条件収縮後のRFDが上昇した要因としては,神経系の活動が関与したと考えられる。それを支持するものとして,REDの増加が挙げられる。REDは神経的要因を反映しており,RFDと相関することが報告されている(上村ほか., 2011)。また,ACC後の主動作筋収縮時のH波の振幅が有意に増加していることから,底屈のみの際には動員されていなかったα運動ニューロンが新たに動員されていることが考えられた。このことから,RFD及びREDの有意な増加はREDの増加及びH波の増加から,神経的要因が深く関与していることを明らかにしている。先行研究において,等尺性収縮によるACC後の主動筋活動増強は,GTOのIb抑制の効果であると仮定されている(kabat, 1952)。Ib抑制は主動筋を抑制し,拮抗筋を興奮させる。先行研究ではIb抑制が最も大きくなるのは,収縮開始から1秒程度までであるという報告がある(Moore and Kukulka, 1991)。本研究では等尺性でACCを1秒間行っていることから,拮抗筋に対してIb抑制が働き,主動筋に対して興奮性のインパルスが伝達されていると考えられる。したがって,主動筋収縮前にACCを行うことで筋出力増加が得られるのではないかと考える。【理学療法学研究としての意義】今回明らかになったメカニズムを利用できるような訓練方法を考案することで,臨床場面における筋力増強訓練をより効果的に実施することができるようになるのではないかと考える。